子供が幼い頃、救われた本2冊

 学生を卒業し、社会人になってからも、あれこれと読んで楽しんだけれど、その後の私の読書ブームは、子供ができてからでした。読書ブームというか、子供が生まれてから、あっという間に子育てに行き詰まったので読まずにはいられなかったのだ。


 我が子は、育児書や雑誌に書いてある反抗期とやらが、1歳半くらいで来てしまったようで、「早いですね」と保育士さんに笑われていた。そんなものの成長が早くても嬉しくはない。

 2歳代はそれはそれは泣くわ喚くわ、外でもウチの中でも、一日少なくとも2回は30分以上号泣するのであった。何か決まりでもあるのかと思うくらい、儀式のように毎日それは繰り返された。
 よく言われる「自分でする」「いややっぱりしない」みたいなやり取りをしていると、もちろんかんしゃくを起こす。それも早い段階で大泣きが始まる。「自分でする!」と言った瞬間にはもう泣いているようなもので。「ああそう」と見ていると「やっぱりやって!」と泣き喚いている。「ええ……そうなの?」と手伝おうとすると手を振り払ってひっくり返り、号泣。

 もうどうしたら良いのか。
 途方に暮れた。

 スーパーのカートでもそんな調子。カートに乗せようとすると、おろせ、抱っこせよとせがむ。もう泣き始めている。抱っこする。やっぱりおろせとジタバタしながら泣く。おろすと違う、抱っこしろ!と泣く。抱っこする。イヤイヤ!!と号泣を始める。やっぱりカートに乗りたいのではと思うとちがうー!!と号泣は続く。最初から自分で選びたかったのかもしれない。もう何をやっても大号泣は止まらない。皆の視線が刺さる。

 今となっては、その視線は心配だったり、励ましだったり、応援だったりのこともあったかもしれないと想像するけど、当時は泣き止ませられない自分を責めている視線に思えてしまった。私も涙と怒号でグシャグシャになりながら運転して帰ったこともあった。でも息子はずっと泣き喚いていて、私の声なんか私自身でもよく聞こえないくらいだった。荒れた車内でした。


 この子は何を考えているのか。どうしてほしいのか。本当の気持ちの奥底にあるもの、要求、伝えたいことは何なのだ、私の至らないところはなんだ、何でこんなに泣き止ませられないのか、と本をむさぼるように読みあさりました。泣き止ませられない自分が情けなくて、言い訳がほしかったというところもあると思います。今なら「幼児 泣きやませる方法」みたいので検索するだろうか。当時もパソコンで色々調べたと思うけど、それぞれに書いていることは違うし、母親を責める内容に関してだと、元々自分で自分を責めているところに辛すぎた。

 そして、様々に本を読んでいくうちに、著者の皆が言いたいことに共通点を見出した。

 「無理に泣き止ませなくても良い」

 でした。目からウロコがボロボロと落ちた。落ちたウロコをかき集めたらちょっとした山ができたのではないだろうか。

 泣くこと自体が悪いわけではないということ。それはその子供の生きるエネルギーなのだと知った。かんしゃくが強くても、何かしら理由があって泣いている。やみくもに泣いているように見えても、その時その子の気持ちは必ずある。「泣き止ませる」ことに意味はないのだと。気が済むまで泣いたら、自分の泣きたい気持ちを受け入れられたことで、その子はスッキリするだろうということ。ケガとか危険なこととか人を傷つけるとかでない限り、その子の感情を抑えることは、好奇心の芽を摘むであろうことも。悲しいとか苦しいとか辛いとか、負の感情を受け止めてもらえないと、自分でも受け止めきれなくなり、楽しいとか嬉しいとか肯定的な感情さえも自分で疑うようになってくる場合もあるということ。


 泣き止ませなくてもかまわないという、カウンセラーや心理学者たちの言葉は、私の気持ちをうんとラクにした。特に家でだったら存分に泣いたら良い。外で周りの人にうるさいと気になるのなら、その場から連れ出せば良い。泣き止ませることだけが目的になると、その子にとっては泣きたい気持ちが悪いことになってしまう。もし親にとって許せない、譲れない部分があるのなら、それだけは毅然とした態度で言うことを聞いてもらえば良い。その際に必要なのは、言葉をわかっているかどうか関係なく、理由をきちんと説明するという誠実な態度を見せることと、言うことを聞いてもらうのだから泣いても喚いても聞いてもらうということ。それは親にとっても大変なことだし、子供にとっても厳しいこと。そんな時は、泣くことくらいは許してあげようよ、ということだった。

 色々な本があるので迷ったけど、大河原 美以さんの『ちゃんと泣ける子に育てよう』がおススメです。その子供の人格や感情を受け入れて認めてあげることは、感情を表現する言葉を引き出すのに一番の良い方法ではないかと思う。

 だからと言って、その後の息子が泣くことは減るわけでもなく、泣くなと言わなかったおかげなのか、そのせいなのか、小学校3年生の途中くらいまでほぼ毎日、自分で何かしら見つけては泣いていた。

 でも段々泣かなくなった。「泣いたって良いんだよ」と伝えていたが、息子はある日、「泣いてグズグズするストレスの方が、泣くのを我慢するよりしんどいの。泣くのを我慢した方がラクだと、最近思うようになったんだよ」と言った。息子が自分で気づいた発見だった。ちょっと感動的だった。

 それから4年生の間は、違った反抗期のようなものがあったけど、5年生以降の息子はほとんど泣かなくなり、グズグズもしなくなった。びっくりするくらいやりやすくなり、中学生の不機嫌な時期を経て、今はまた素直で喋りやすくなっている。自分の気持ちを言葉にするのも豊かで、どのように感じるか、自分の意見はどうのようであるかを具体的に話して表現している。いつでも自分からということはないし、何を考えているかすべてを知るわけはないけれど、こちらが意見を求めると、いつの間にか成長していることに驚く。


 もう一冊、成長に関して紹介して終わりにする。
 白石正久さんの『発達とは、矛盾をのりこえること』。

 手に取ったのは息子が幼かった頃。この中の「子供の成長は、らせん階段」という言葉がとても響いて、何度も言い聞かせた覚えがある。まっすぐに成長する子供なんてなかなかいないだろう。あれ?また前の状態に戻っていると親が残念に思ったり、心が折れそうになったりするけど、子供はちゃんと頑張ってのぼっているのだ。戻っているようで、日々の積み重ねで上がる。それはまるでらせん階段のよう。以前とまったく同じではない。
 私にとって子育てしている上で、とても励みになった本だった。


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