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親から子供へ直接伝えよう~ある高校生の悩みから、我が子の成長も知る~

 息子の友人に何かしら悩み事があると、息子から聞いた。


 その友人、ウチに遊びに来たことがあるのだが、驚くほど行儀が良かった覚えがある。一緒にテレビを観ていても、背筋を伸ばして観ている。その子は、自分の背中とソファの背の間に息子が横になって伸びてテレビを観ていることに気付き、驚いて戸惑っていた。

 息子のあまりのくつろぎっぷりと、その子の行儀の良さにこっちが戸惑う。

 他にも色々驚かされたけれど、その後、二人でテレビを観たり、遊んだりした後、彼は半ば放心状態で「楽しかった~」と言って帰っていった。こんな子なら私もしつけをしやすかっただろうなあと思うのだが、その頃から何年か経ち、どうやらその子の悩み方が深刻なようだと知った。


 成績も良いし、成績だけじゃない頭も良いし、お行儀も良いし、きちんと自分の意見も持っているようだし、運動部で、早寝早起きを守り、いったい何の悩みがあるのかと思うのだが、どうやら本人、生きづらいようだ。

 「お母さんもそんな悩み方をした頃があったなあ。ブルーハーツとか長渕剛でも聴けば良いのに!」
 と言うと
 「そういうのも良いだろうけど、今の時代にもきっとそういう曲はあるはずなんだよ」
 と息子が返す。だけど音楽を勧めるのも方法の一つじゃないだろうか。おススメの映画や本、漫画もある。色々言っていると、

 「わかるけど、彼は自分で見つけなくちゃいけないんだと思うんだよ。僕は、僕の好きなものを自分で見つけて、自分の世界を持つことができている。自分で見つけて自分で選んだものだから、心から納得できるんだよ。自分たちの世代で分かち合えることを持つのは、自信や気持ちの安定にもつながるんだよ。彼にはそういうものがない」


 と言われて、ああなるほどと納得した。彼には大人の監視の目が常にあり、自分の世界を持つ時間も場所もないのだと。
 例えば学校で居心地が悪い時、家で居場所を見つける場合もある。家でも居心地が悪かったら、外で見つける場合もある。でもこの辺りは田舎で、彼は部活からすぐ帰宅。サボることもしない真面目な子だ。成績も常に良くて、少しは怠けるなりして成績を落とすこともしない。彼には余白のようなものがないようだ。

 もしかしたら今の彼にとっては今の生活が窮屈なのかもしれない。

 それでいて、親の愛情が他の兄弟に向いていることを感じてもいるようで、自分の世界とともに自信も持てずにいて、自己肯定感が低くなっているらしい。


 彼のお母さんと、一度だけほんの少し会話を交わしたことがあるのだけど、私から見れば何の問題もないように見える彼の学習面に対しても、謙遜ではなさそうに心配していた。又、私の息子と同じくらい弱い体質も、心配していた。でも今回、それを思い出しながらふと思った。その心配が愛情として、彼に伝わっているだろうか。


 心配と愛情は似ていて違うものであるけど、子供にとって親からの愛情の確認の場は、心配であることもあるだろう。大人がいくら心配していても、その子の心に伝わってなければ、愛情が足りていないことになってしまう。


 息子の、別の友人のことも思い出した。そのお母さんも、自分の子のことをとても心配していたけど、その子には伝わっていなかった。その心配を心配として、さらに愛情があることを、私でなく、彼に直接伝えたら良いのにと思ったことがあった。「それ、本人に言えば良いよ」と笑いながら言える程度には親しかったけれど、そこの家庭のやり方があるだろうから、それ以上は立ち入れなかった。それを子供に伝えたら、ずいぶんその子は嬉しいだろう。


 息子が今回話してくれた友人のお母さんとは、連絡を取り合うこともなくて、手段もない。親しいわけではないので、何も伝えられないことがもどかしい。

 自分が子供の頃のことも思い出す。親が「言葉にしなくてもいつかは伝わる」と言っていたことを、「でも言葉にしてほしい」と思い続けていた。どうにも確証が持てず不安で自信がなかった。自分が子供を持つようになってからその思いはもっと強くなり、それで母と言い合ったこともある。私は自分の元々の性格以上に、帰国子女の影響もあり、愛情はいちいち口に出す。うっとうしがられていることもあるだろうけど、うっとうしがられて当たり前だ。そんなのかまわない。親側がうっとうしがられ拒否されることでほんの少し受ける傷より、子供に気持ちが伝わる方が大事だ。口に出す勇気が、照れを超えていると自覚している。

 そんなの言わなくても伝わる子と、伝わりきらない自信のない子がいる。子供それぞれの気持ちや感じ方は、一つ一つ、親のそれとは違うものだ。

 親のそういう態度で、もしかしたら、彼の悩みの一端でも聞くことができるかもしれない。友達とのこと、勉強のこと、将来のこと、部活のこと、学校のこと、どれか一つでも。

 そして子供の安心感と勇気から、家での不満も聞けるかもしれない。重たいことかもしれないし、ほんのちょっとのことで改善できることかもしれない。すぐに改善できなかったとしても、子供が「話せた」と思うことは、今後の親子関係や社会での人間関係にもつながるかもしれない。

 世の大人たちは是非「口出し」ではなく、親の「心底にある思いを言葉にして」ほしいと思う。本当に心配し、愛情をかけている相手であるなら。自分が子供をかまってやれていなくても、すごく心配していることを。友人や知り合いである私に愚痴を言うのはちっとも構わないし、そういうことを言うのはお互いさまだけれど、その言葉を子供自身にも向けてほしい。「あなたのためを思ってあなたのために言っている」ではなく、「あなたのことが大好きだから心配する」という言葉の方がおそらく正確だしストレートに伝わるだろう。そしてどうか「心配かけさせないで」ではなくて「心配するのは親にとっての醍醐味なんだよ」と伝えて言ってほしい。だってしんどいけど、そうですよね。


 彼の意欲や好奇心、自信がどうか戻りますように。


#子育て #子供の悩み #言葉にして伝える #親子関係 #子供の成長

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。