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娘の結婚をよろこぶ父親が嬉しいな

 「娘の結婚式では、思い切り泣いてやる」ってCMの台詞を見て、そう言えばよく「娘が結婚なんて認めたくない」「彼氏連れてきたら怒る」「悔しくて許せない」みたいに聞くなあと思い出す。

 そんな言葉ばっかり聞いていたら、娘を持つ男親ってそんなものなんでしょうか~って思っちゃう。
 照れ隠しだと良いなあ。
 だとしても、私は照れ隠しより率直な気持ちを聞きたいなあ。
 そしてもし率直な言葉が、そういったものだとしたら、私は個人的な気持ちだけど、ちょっぴり残念。

 母と息子も、恋人みたいな気持ち、とか、ちっちゃな恋人、とか聞くけど、私は「それは気持ち悪い」と思っちゃう。いや別にそれ自体を否定しているわけじゃない。知り合いがそうだったら「へーそうなんだ」だけなんだけど、私自身に関しては、ないよなあ。


 もしそのうちに息子が彼女を連れてきたら……息子をよく理解してくれているようなら、ありがたいな~と思いそう。

 私には兄がいて、兄の奥さんと特別親しくもないけど、「ありがたいな~」って気持ちはある。何しろ私は兄とあまり相性が良くない。あんな兄と一緒にいてくれるんだから。なんて思ってしまう。

 息子に関しては、幼少期頑張ってみたけど、息子の性格、ペース、気質から、できないことがハッキリしていて、相応に対処していくしかない。そんな息子と結婚してくれるなら、やっぱりありがたいなあ。息子のいたらない部分は二人で話し合ってもらいつつ、基本的に息子の良さをわかってくれるなんて、すごく嬉しい。

 私は結婚直後、義母に「息子の本当のところは、よくわからないんです」と言われた。
 
 うーん。そうかあ。笑顔でうなずきつつ、内心唸ってしまった。
 「だからアナタに託したわよ」「アナタの方がよくわかっているんだと思うわ」の気持ちかなと、良いように捉えるようにしたけど。何でもそうだけど、自分の考える対人の距離感と、人の考える距離感て違う。義母と私。義母と夫。夫と私。
 だから親には見せない面とか、同年代とか恋愛相手にしか見せない面もあるものだけどさ、でも親がよく知っている部分てきっとあるはず。ホラ。良さがさ。そんな話も聞きたいのになあって。その時に思った。

 母には、好きな人や彼の報告をいちいちしてはいなかった。 
 でも夫と付き合っていた頃は、一時帰国当時、彼ができたのだとわざわざ報告した。彼に、きちんと私への気持ちがあって、それが誠実なものだと感じたから。

 母に彼の話をした後、ニュージャージーに戻って、ほどなく彼と結婚することになった。ちょっと強引だったけど(私が)。親には少しずつ話していこうってことで、母に言った。そして母がそれを父に言ったら「全然知らなかった」とちょっとムッとしたらしい。
 父がムッとしたのは、何も知らされていなかったことについて。父には何も話していなかったので。だけど、夫となる彼自体については「かせみの良さがわかってくれる人が出てきて嬉しいよ」と話したらしい。

 父のその言葉は心から嬉しかった。
 挙式前後、たくさんの句を詠んでくれたのは、以前も書いたことがある。

薄い陽は ビルの壁映し 眠る娘に まだあどけなき 嫁ぐ日の朝
 
 ヘアメイク 純白のドレス 愛くるし これが我が娘の 26年目の夏
 
 思い出を 大切にする君となら 一歩一歩 押し花にして
 
 大好きな 君と思い出かみしめて なぜか急いだバージンロード
 
 両側の 親の思いを背に受けて 二人ではっきり誓いの言葉

 挙式の時の両親を写真で見ると、目のまわりが何となく赤い。父も「めっちゃ楽しそう!」で「嬉しそう!」なわけではない。
 だけど、娘を取られたとか、悔しいとか、そんな感情を父は言ったことがない。あと勝手に感じているのだけど、多分そんな風には思っていない。
 私もきっと感慨深いだろうけど、息子が結婚したら喜ぶなあ。だからそんな感情を父親が持つって、私にはよくわからないのだ。少なくとも私の父は、私の結婚を喜んでくれた。

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 ここまで書いて、父の昔の手紙を発見した。探したわけでなく、整理していたら見つけた物。本当は、一枚目に綴られていた別の話題が笑えて、好きで取っていた手紙。すごく偶然のタイミングだったので、二枚目の一部を載せたい。

 北から冷たい風がやってきて、終日ヒューヒューガタガタと言っていました。その強い北風の中を車で走り、赤や黄色に染まった山のふもとに車をとめて、父母の家に行きました。そしてお母さんと、このたびの、かせみのうれしい話をすると、二人ともとても喜んで、おばあちゃんは、何度も涙をふいていました。その中でお母さんは「子供たち二人とも、人を見る時、選ぶ時に、その人の容貌や地位やお金でなく、もっと大切なものを持った人を選ぶように育ってくれたことがうれしい」と言ったのが印象的でした。まさにその通りになってくれたことが一番のよろこびです。かせみは、その人を選んだ。帰る時も、心があたたまって、外の冷たい風もまったく気になりませんでした。
 今日は、お父さんの好きな言葉を書きます。
 「人はみな幸せを得るために生きています。それは自然を、宇宙を、物を、生き物を『愛する』ことによって得られる。なかでも最大の幸せは『人を愛する』ことによって得られます」

 ❛かわせみさん❜に会える時が楽しみです。元気でね。

 父が何度も何度も口酸っぱく伝えてくれたのは、「結婚生活は、お笑いを大事にね」。

 なにそれお父さんらしい。
 と笑ったけど、どうやらお笑い芸人のモノマネの腕が上がりつつある私だ。最近は、シソンヌの「キヨコー!」。

 いや、そういうことじゃないんだな。わかってるよ。そういうことでもあるのも。

 それなりに、面白おかしく暮らしているよ~おとうさーん。



#エッセイ #両親 #父 #結婚 #娘

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。