愛おしくて愛おしい、成長していく姿

 人の成長する姿とは何故こうも嬉しいものなのだろう。
 他人の子でも、大きくなったなあとビックリする度、「喜び」の感情がわいてくる。

 映画でも、人の成長が描かれると、グッとくる。ああ心が成長したんだ、と嬉しくなる。

 自分の成長は、あらゆる物事が過ぎ去ってだいぶしてからじゃないとわからないからだろうか。「こんなことやあんなことがあって、私は成長できた」とか言ってみたり書いてみたりするけれど、実際は「考え方が変化したし、そうなんだろうなあ~」くらいで実感はできていない気がする。でも人の成長は宝物を見つけたみたいに嬉しい。
 
 ましてや自分の子供となると、その「成長」が嬉しくてたまらない。

 幼少期は、日々が変化と成長だった。
 昨日できなかったことが今日はできるようになる。できたことができなくなっても、しばらくすると、レベルアップしてできるようになる。

 息子は運動機能は標準的に成長したけれど、運動神経は格別悪くて、心配したものだった。でも体全体を動かすドラムやスキーなど特定のものは得意だったし、マラソンは夫と一緒に楽しみ、やっぱり格別遅かったけど、長い間続けていた。
 身体的な成長だけでなく、しつけは遅れた。それでも息子のペースで少しずつ身に着けていったし、今もやらなければいけない、できないこともある。

 でも何より面白くて嬉しいのは、心の成長だ。

 息子はかんしゃくがひどく、泣いたり怒ったり激しかったので、他を後回しにしてでも、「表現する人」になってほしかった。
 それには自分の意見を落ち着いて伝えてもらうことだと信じ、まだ言葉を話せるかどうかの頃から小さな物事から自分で判断し、それを自分で伝えられるようにした。
 下した判断も意見も、ちょっと的外れでも自分で考えたことを表現できると、それを否定せずに尊重する。その代わり、その後、泣こうがわめこうが自分で責任取ってもらった。息子は元々の気質もあったためなのだろう、どんどん意見や考えたことを言うようになった。

 ただ興味の対象が、周りの友だちと違ったため、又、周りと違って構わないと気にしなかったため、ふとある時「僕って普通じゃないんだ」と気づいてしまったようで。

 良いのよ、違うところがあなたの宝物だよ、と言ってきたけれど、もちろん私にも迷いはあった。息子に孤立感があるとしたら、この後いやだと言わないかな、この接し方は息子のためになっていないのでは。

 夫はその育て方が良いと言ってくれてはいたし、友人たちも理解はあったけれど、その他大勢や担任の先生は、良く思っていないようだった。それでも小学生の間、息子自身も「これで良い」と思っていたようだった。

 中学生になってそれが変わる。

 周りの子と同じ物を持たないとイヤだと泣き、人と違うと不安がった。
 ちょっとした物でも泣いて訴えるので、先生と相談して交換してもらったり、私も周りがどうしているか聞いてみたりするようにした。

 先生方も「違っても良いんだよ。違う子もいるよ」と話してくれたけれど、息子は「普通の人と同じに育ちたかった」「僕だけ皆と違う」「その子が思い描く中学生像と僕が違うからなんだろうけど、イヤな感じに接してくる子がいる」などととても気にした。

 その度に「普通ってなあに?」「どんな時にそう思うの?」「それはあなたの大事なところなんだよ」と伝えてきた。
 息子にそんな思いをさせたこと自体には謝ったけれど、「この先の方が世界が広くて、普通だとあなたの良さは生きてこないよ」とも同時に伝えるようにした。
 なかなか伝わらなかった。年頃だし仕方ないと私も思っていたけれど、心をこめて育ててもやっぱり本人の素敵な個性は埋もれていってしまうのかなと少し寂しく、悲しくもあった。

 でも段々と息子は「僕はもうこうしかできないんだ。これで良いと思えるようになってきたよ」「どうして○○(息子の名前)は、そんなに自由なの? って聞かれたよ」などと言うようになった。

 そして高校二年生になったごく最近、「僕、普通が良いって言ってた頃あったでしょ? あの頃から皆と同じようにしていることは今もあるけど、最近はそうやって普通に皆と同じように振舞う中でも、自分の個性を出して良いと思うようになったんだよ」と話してくれた。「一人だけ目立っても、質問するようにしたり、わからないことがあったらわからないって言うようにしてるんだ」。

 「へえ! そりゃ良かったよね」

 とっさに気の利く返事が思いつかなかった。胸がいっぱいになったのだ。

 これ以上ない喜びだ。息子が成長している。

 そしてそんな息子が、「アベンジャーズ / エンドゲーム」のメンバーたちを見ながら、「みんな成長したよねえ~」としみじみ言うのがとても可愛くて好きだ。

#エッセイ #成長 #子供 #映画 #普通であること

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。