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この一年のジェームズガンに起きたこととは~それに翻弄された気持ち~

 その朝は家族皆が休みだったので、起きてすぐ布団から出たくなくて、グズグズしつつツイッターをのぞいた。
 すると「ジェームズガン、ガーディアンズオブギャラクシー監督復帰」と書いてある。
 昨年も解雇の直後に失望したり期待したり、気持ちがその度に動くのがしんどかったので、今回もすぐには信じられずにいた。
 でもあれこれ読んでいると、ジェームズガンのコメントも出ている。他の監督からのメッセージも出ているではないか。

 ……。本当なんだ!!!

 夫と息子はまだ寝ている。大声を出したい気持ちを抑えて、静かに喜び、流れてくる情報を読み続けた。

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 昨年の6月終わりから7月のはじめ頃、「ガーディアンズオブギャラクシー」の「3」となる脚本ができたと情報が入った。「ガーディアンズオブギャラクシー」が格別好きでMCUにハマり始めていた私は、とてもワクワクした。アベンジャーズの4の後にあるというから、どうなるのか、誰が出るのか、みんな無事なのか、時制としていつの話なのか、色々と想像していた。40代半ばを超えてきて、こんな気持ちになれるのかと自分でそのワクワクに驚き、嬉しくも思った。
 とりあえずもうすぐ「アントマン&ワスプ」が公開されるから、楽しみにしていよう。
 その日の朝も、「アントマン&ワスプ」の情報が更新されているかなと楽しみに、ツイッターの画面を開いた。
 すると「ジェームズガン」がトレンドに上がっている。
 なんだろう?……と思って見たら。
 「ジェームズガン解雇」のニュースだった。

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 わかったのは、ジェームズガンは、政治批判のツイートも多かったこと。私は強いメッセージや批判性を感じるツイートや文章は、どんなに思想が似ていても全然違っていても、皆の意見のやり取りやスピード感に、読んでいて疲れてしまうので、ファンの人でもフォローしない。ジェームズガンも確かに少々激しい主張があるので追わなかった。でもそんなに政治的な批判が多いとは知らなかった。

 次に、それを良く思わなかった現政府に近い人が、彼のツイートの粗探しをしたこと。そういった人たちの執着心たるやすごい。そんな気持ち、手放せば自由になるだろうに。その時間や気持ちをジェームズガンに随分と費やしたようで、その人が見つけたのは、ジェームズガンの10年程前のツイートだった。
 それは読むと、彼なりのジョークだなとわかるものではある。だけど、顔をしかめたくなる幼稚で下品な内容でもあった。

 しかしそのいただけないジョークも、10年程前のこと。彼はその後、当時の自分を反省し「過去の自分がいかにイヤでダメなヤツだったか」ということで謝罪の言葉を公に表している。それすらもずいぶん前だ。さらにその後の言動で、彼がどの程度どんなふうに気持ちを改めたかはわかるはず。「ガーディアンズオブギャラクシー」一作目を経て、「2」では、彼の精神的成長を感じられるものとして仕上がっている。
 でもディズニー側は、そのツイートを見つけた人の訴えにより、あっという間にジェームズガンに解雇を言い渡した。

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 失恋のような気持ちだった。こんな気持ち、いつぶりだろう。運転していても、ハンドルにガンガン頭を打ち付けたい衝動にかられる。サントラを聴けば涙が流れる。もう完全に情緒不安定なのだ。
 夫や息子と話したけど、私の入れ込みようが強すぎるのは自覚していたので、抑え気味に話した。
 映画ファンで、MCUの作品にも理解ある友人に話を聞いてもらった。その後も、全然関心のない友人にまで話を聞いてもらった。
 そしてツイッターで仲間を求めた。とにかく悲しみを一人で持ち続けることができず、誰かと共有したかった。

 どこかに救いのある、希望を持てる情報はないかと、懸命に探した。
 再雇用をお願いする署名運動を見つけた。文章を読んで、きちんと言いたいことが伝わっているのではないかと思い、英文だったため夫にも確認を求め、本名で署名。各国の文字で名前が記入されていっていた。最初に知った時、既に何万人だったかくらいの数が、あっという間に10万人を超え、最近見たら、43万人に届きそうだ。

 さらには、「ガーディアンズオブギャラクシー」の出演者たち9名の、解雇取り消しと再雇用を願う文章と署名も発表された。弟で俳優としても出演、モーションキャプチャーもやったショーンガンもコメントを出した。でも改めて解雇が言い渡されただけで、絶望的な気持ちになった。

 それからは、「ガーディアンズオブギャラクシー」を観ることがあれば、あらゆるシーンをジェームズガンがどのような思いで作ったかに思いを馳せ、音楽の選び方に改めて感心し、可愛いグルートの踊るシーンを見てはジェームズガン自らがモーションキャプチャーとして踊った姿を思い出した。メイキングシーンはもちろん、他のMCUに関わった時の監督同士の対談で、つい感傷的になってしまう。でもどんなに悲しんだって、もうジェームズガンの作る「ガーディアンズオブギャラクシー」を観ることはできないんだ。と思っていた。

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 「ガーディアンズオブギャラクシー」の3を撮る監督が、その後なかなか決まらないことはずっと言われていた。脚本が使われるのかどうかもまだわからず、情報が錯綜していた時期がある。

 結局、既に書き上げていたジェームズガンの脚本は使われることになった。それについては喜んだものの、出来上がった映画を観ながら「ここ、ジェームズガンならどう撮ったかな」と、気もそぞろに観てしまうだろうと思っていた。
 あの軽さとロマンチックさ、ロックな曲選びや可愛げあるキャラクターたち、監督からの愛情あるメッセージ、一人一人の演者の個性を大切に扱うストーリー、全部を含めた世界観はもう観られないのか。私たちは、「ガーディアンズオブギャラクシー」という映画を通して見える、ジェームズガン監督のファンなのだ。
 
 そのうち、ジェームズガンは他の会社(MCUのライバル関係にもあるDCで採用)で監督することが決まった。彼の活躍は純粋に嬉しかったので、応援したいと思っていた。

 一方、MCUを手の中に入れているディズニー側は、様々な監督に打診していったようだ。
 でも誰もジェームズガンの代わりはできないとわかっていた。だから他の大物監督たちは、「次の『ガーディアンズオブギャラクシー』の監督に、ジェームズガンはどうだろうか?」と、ユーモアを交えながらツイッターでも発表していた。

 これらのことが、復帰の一端を担ったことは間違いないだろう。

 たった数日前、「アベンジャーズ」シリーズの4「エンドゲーム」の最新予告で興奮してツイッター上で大騒ぎしたMCUファンは、この日の朝起きてツイッターを目にし、またもやそこは興奮のるつぼと化した。
 
 嬉しくて、ツイートし、イイネを押し、リツイートし、ファン同士、喜びを分かち合った。
 ああツイッターやってて良かった。初めて思ったかもしれない。ツイッターに慎重過ぎるくらい距離を取っていた私は、ジェームズガン解雇をきっかけにツイッターの世界をほんの少し広げ、再雇用で感情を分かち合えた

 今はもうひたすら来月の「エンドゲーム」と、いつになるかわからないけど再来年辺りだろうか、「ガーディアンズオブギャラクシー3」の公開を楽しみにしている。

 「ガーディアンズオブギャラクシー3」は、ジェームズガンおかえり!と、高揚した気分のためにオープニングで泣いちゃうだろう。きっと、「2」のオープニングよりもっと早く泣く。

#ジェームズガン #ガーディアンズオブギャラクシー #MCU #映画

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