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映画館での思い出

 先日、久しぶりに兄一家と会って、映画の話で盛り上がった。

 兄の家族3人も映画が好きなようで、我が家もここ数年映画をよく観るようになり、話は自然と映画のことに。

 そこで兄が、「初めて観た映画」について覚えているかと聞いてきた。
 「スターウォーズ?」違う。「グリース?」違う。「スーパーマン?」それは帰国してから観たんだよ。えっ! 勘違いしてた。「未知との遭遇? あれは私怖くて、お母さんの膝の上に突っ伏して、観ることができなかった。でもあれは最初じゃないよね」

 「……。やっぱり覚えてないね。僕が7歳くらいだったから、キミは3~4歳だもんね」と教えてくれたのは「Seven Alone」という西部劇だった。そしてその次が、「Across the Great Divide」だよと。
 ああそのタイトルだけやたらに連呼していたのを覚えている。ありゃ映画のタイトルだったのか。

 でも二つとも、内容をまったく覚えていない。劇場の様子なんかも覚えていない。

 そうやって昔観た映画について話していくうちに思い出した映画館の中の様子。
 皆と話したその後で、昔の映画館について夫と話して懐かしんだ。

 
 今の劇場は、シネコンがほとんどで、一つの映画100席くらい。
 でもその昔、もう30~40年程前の話。映画館の席と言えば、400席くらいあった。
 人気のある映画は、いっぱいになったら通路に座ったり、立ち見したりなんてこともあった。
 席はそんなわけで指定ではなく、自由。指定席になっていった頃、これは良いシステムだ! と思ったのを覚えている。自由だと、早いもの順でバタバタと入っていく。
 映画上映中でもけっこう自由に出入りがあった。そう思えばおおらかだったとも思う。何度でも同じのを観ることができたため、一度観てすごく気に入ったら、ずっとその席に座りっぱなしで何度でも観ることができた。とは言っても疲れるので、大抵一度で終わるけれど。

 兄が「パルプフィクションすごかった! 3回観てきた!!」と言っていたのを思い出す。私はせいぜい、オープニングをもう一度観るくらい。今なら「最初のあの場面て、最後のアレにつながっていたのか!」と確認したくて観ることもあるだろう。そうやって最初の場面だけ観て、確認したら席を立って出て行くなんてこともわりと気軽だった。

 飲食に関しての規制も厳しくなくて、映画が始まってからはさすがに気を遣ったけれど、上映前に買ってきたハンバーガーをほおばっていることもあった。ドリンクをこぼす失態をおかしてしまったこともある。

 コメディ映画「星の王子、ニューヨークへ行く」で、エディ・マーフィーが「F― you!!」とFワードを連呼していた時、バルコニーから道行く市民に向かってあまりにも明るく笑顔満面にしつこく言うので、「F-youってどういう意味?」と、高校生の私が上映中に友人に聞き「後で教えてあげる」と笑いながら返事してくれた思い出もある。帰国子女なのに知りませんでした。周りの人たちはなんと思っていたか。いずれにせよ、今よりおおらかで気楽に観ていた記憶がある。

 その彼女とは、映画を度々一緒に観に行き、今以上に大画面の広い劇場で「ラマン」を観た時には、凍り付いたけど。座席にはりつくようにしてかたまって観ていた。あんなシーンが(ご存知なく、どうしても知りたい方はどうぞ調べてみてください)大画面で繰り返し流れ、それを観さされた女子大生二人は圧倒されて劇場を出てきました。「めっちゃすごかったなあ……」と観終わってから苦笑いしていた友人は、それから間もなく「氷の微笑」を観に行き、その詳細を実演交えながら話してくれた。面白くて大好きな友人である。

 懐かしい。

 昔は良かったと言う気はありません。懐かしいし思い出は愛おしいけれど、私は個人的にやっぱり今のシステムが好き(※友人の一人は、狭いところだとパニック発作が起きるから、昔の方が良かったと言うので、人それぞれですね)。指定席があるので、慌てないで座れるし、イマイチな席でも、自分で選んだ席だから納得する。劇場の造りから、前の人の頭が気になって仕方ないなんてこともないし、一つの映画館でたくさんの映画が上映されて選べるのも良い。今の映画館は、一部、非常識な人を除けば、皆さんマナーも良いし、座席も柔らかく、リラックスして観ることができる。エンドロールまでしっかり座って観て、何なら特典映像もあったりなんかして、余韻にしっかり浸りきれる。

 おかげで、映画館好きな夫と共に、大好きな映画をせっせと観に行く昨今なのだ。


#エッセイ #映画館 #思い出 #昔の映画館

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。