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独り暮らしを始めた息子の一ヵ月間

 ああ、あんな心細い表情して大丈夫だろうか。

 と、息子の一人暮らしをそれはそれは心配して離れてきたのが約一か月前。

  まずは一ヵ月。
 言い聞かせてきたけど、本当に一ヵ月経てば、お互いに慣れてくるものらしい。

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  最初の一週間
 息子が胃炎を起こしたらしく、対処の仕方や薬の在りかについてやり取りする。
 心配なので、ほぼ毎日メールを送り(息子はLINEをほとんどしないのもあり、メールにてやり取り)様子をうかがう。
 リモートは、家族で集まる約束の曜日と時間帯を決めた以外にも、一日おきに。
 ちょっとした皿洗いとか、洗濯とか掃除とか、面倒くさいもんだねと憂うつそうにしている。リモートする時間まで緊張を感じているのか、喋り始めると何度もため息をついた後、あくびが連発し「急に眠たくなっちゃう」と言うので、少し話しては切る。 

 対面授業が始まるからと、住まいを移ったのに、結局1~2回で、緊急事態宣言が出てリモート授業に。


  二週間目
 メールのペースを落とし、連絡回数を減らしていく。

 少し慣れた風で笑顔も見られるようになってきた。洗濯とゴミ出し、ちゃんとやっているよと、ちょっと誇らしげに話してくれる。 

 課題が多くて、リモート授業も大変だと、親子で話している時も、時々下を向いて勉強している様子。時々、習いたてのドイツ語を披露してくれる。可愛いヤツめ。


 三週間目
 少しずつ、リモートの回数も減らして、週に2回になった。
 でも約束していた2回目に、「眠たいからまた明日にしてほしい」と言われる。楽しみにしていただけに寂しく感じて、自分の気持ちに戸惑う。

 子供の側からしたら、親から頻繁に連絡が来るのは、負担になっていないだろうか。でも対面授業も一回しかしておらず、サークルの勧誘や活動も控えられているため、地方から住み始めた息子にはまだ大学の友人がいない。日中、話し相手もいないのは、話し好きな息子にとっては寂しいのではないか心配。
 夫に話すと「それは直接聞いてみたら?」と言われ、本人に聞かずに憶測しても仕方がないと思いなおす。

 課題やテスト勉強しなくちゃと思うけど、やる気出ない時に気を紛らす方法がわからないと言う。親の助言なんて、うっとうしいはずと思っているのに、ついついあれやこれやと提案してしまい、勝手に自分が嫌になる。


   四週間目
 近くにあるコンビニ2軒のお惣菜もさすがに少し飽きるらしく、家では料理などほとんどしたことがない息子が、初めて「肉と野菜を炒めてみたよ。どうやったら油はねしないの?」なんて聞いてくるように。
 「しょうゆだけでは美味しくないって学習したから、めんつゆにしてみたら、ちょっと美味しくなった」とか。

 約束の日時のリモートでは、さらにたくさん喋った。少しずつ、リラックスできている印象を受けた。
 ちくわを買ってみたけど、どんな料理が良いかなとか、野菜を茹でてドレッシングをかけてみるとか言う。
 画面越しの、なんて事のないこちらのサラダを「彩りが良いんだね」と気づくなんて、息子自身に変化が起きている。

 さらに、自分の思考をまとめたくて少し日記めいたものを書いているとも。
 その内容を少し話してくれて「自分で読むのって恥ずかしいね」「なんか暑いんだけど、照れてるからかな?」って笑ったりしている。

 何をするにも、とにかく面倒くさがりで、好きなこと以外には消極的だった息子が、何とか生活を楽しもうとしているではないか。
 「なんだかんだ一人暮らしを楽しめてるよ」と言うので、「そんな風に言われると、母さんも嬉しいよ」と話した。

  この一ヵ月、私以上に夫が寂しがっていた。それでも子供の気持ちを考えないで、一方的に連絡したり押しかけたりするのは迷惑だって知っている。 
 夫の両親がそうだったから、夫が私の盾になってくれていた。
 それでも義父の機嫌が良ければいいからと、義母は私たちの気持ちを無視して、ウチに押しかけ、物を押し付け、好きなように喋って帰った。
 私たちの気持ちより、義父の気持ちを先回りして義母が動いているのはわかるけど、義母がそれを制してほしいとずっと思っていた。

 だから夫が寂しそうでも、私は夫の気持ちを先回りして行動しないように頑張る。夫の気持ちはわかるけど、息子には息子の暮らしがあるからね。  
 なんて思っていたのに、不意に私が寂しくなった時、夫が「その辺の加減は直接話し合ったら?」と提案してくれた。

 そうだね。お互いに支え合っていこうね。息子には意見を聞きながら調整すれば良いんだ。そういう関係を築いてきたのだから。

 「一人暮らし始めてから一ヵ月くらいになったね」と話すと、息子は、「最初の一週間は20日くらいに感じたよ。やっと少しずつ、僕の思う一週間の感覚と、実際の一週間が近づいてきた」と言っていた。

 この先も、息子は寂しく感じたり、不自由に思ったり、しんどくなったりするかもしれないけど、この一ヵ月を思い出して、また頑張れる日もあるだろう。

 応援しているからね。
 夏休みを楽しみにしているよ。もし気分が乗るんだったら、「ブラックウィドウ」観に行こうね!


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読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。