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いつの間にか見られている!

 夫も息子も休日、の午後6時半。夫と一緒にテレビを観ていた。いい加減、晩御飯作らなくちゃいけない時間だけど、やる気が出ない。二人がのんびりしているなあと実感すればするほど、自分ものんびりしたくなる。

 やる気が出ない。

 

 ……やーるー気ー出ーなーいーー!!


 目の前に、袋に入ったままの割りばしがある。夫がコンビニで買い物してきた残骸だ。
 お行儀悪くそれを両手に一膳ずつ持ち、座ったままちょっと踊ってみた。

 夫はテレビに集中していて私には気づかない。或いは気づいていても、私のやりそうなことだと流しているのだろうか。

 指摘されないから、もっと踊ってみる。

 何も言われない。

 もう途中から夫の反応など、どうでも良くなってしばらく踊っていると、ふと視線が気になった。

 

 息子が横で私を見ていた。 

 「ば、晩御飯作りのやる気が出ないんだよね~」と笑ったら、うふふんと笑われた。

  *** 

 幼少期に、母と手をつないで何かの行列に並んでいた。ふと列の外側に気を取られてまた前を向いたら、みんなが何やら笑っている。
 「お母さんも笑ってるのかな」と見上げたら。 

  知らないおばさん!! 

 列の外側に気を取られてそちらの世界に没頭している間に、つないでいた手を離してしまったのだ。その間に列は進み、前を向いた時には私の横に知らないおばさんが立っていた。それにも気づかず私はその人と手をつないだので、皆が笑った。

 私がどうするか、母を含め周りの大人たちがイタズラ心を起こして見守っていたようだ。


 ちょっと前にもあった。
 この辺の田舎にしてはちょっとオシャレをしたお母さんが、抱っこひもの中の赤ちゃんにしきりに話しかけながら買い物をしている。ご機嫌な赤ちゃんと楽しそうで微笑ましいなあ~。 

 一通り買い物を終えてレジに並ぼうと、空いている列を見ると、さっきの母さんと赤ちゃんがいる。
 すぐ後ろに並ぶと赤ちゃんと目が合った。控えめに変顔をしたら、やたらにウケる。
 そのお母さんが気にして私の方を見たので、ふふと笑って挨拶をした。そのうち順番が回ってきてお母さんがレジの方に集中し始めた。
 赤ちゃんはまた退屈なようで私の方を見ている。でもさっきまでの控えめな変顔が、段々ウケなくなってきた。
 そんなに変顔にバリエーションないよ~と思ったけど、期待に満ち満ちた目でこちらを見ている。見ている!

 プレッシャーに負けた私はとりあえず口を「お」の形にしたまま鼻の下をめいっぱい伸ばし、目玉だけを上に向けてみたら、ウケた。

 おお。反応が良いね。可愛いね。

 笑い声もたてて可愛いから調子に乗って何度かやったら、赤ちゃんのウケが良すぎてまたお母さんがこちらを向いた。突然。

 その顔のまま、けっこうな至近距離で、そのお母さんと向き合ってしまった。

「すみません」

 ギョッとした表情のお母さまに、すぐさま真顔になって謝り、それから目を伏せて大人しくしておいた。

 ***

 その世界に入り込んでいる間は楽しいんだけど、思わぬ人に見られていると気付いて恥ずかしい時ってある。

 ……私にはある!

  幼少期から最近のことまで一気に思い出した、先日の出来事。


#エッセイ #見られている #恥ずかしい #思い出

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。