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結婚24周年を迎えて~夫の表情~

 夫とお喋りをしていると、よく止まらなくなる。

 結婚した当初、寝ようと天井を見上げながら、下らない話をしているうちに、深夜2時や3時にまで及んでしまう日も度々だった。

 息子が独り暮らしを始めた最近、時々寝る間際に話をしていると、当時を思い出す。もちろん時間はもっと早く寝ちゃうけど。
 まだこんな(下らない)話をしてるんだ私たち。

 結婚してから変わらない24年間な気もするけれど、「こういう面もあるんだ」と気づく瞬間はまだある。

 今月は、息子が独り暮らしを始め、結婚24周年を迎え、夫と自分が過ごしてきた時間について思いを馳せる日が多い。
 息子ができる前。息子を共に育てた年月。そして三段階目が始まっている。

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 夫とはコンテンツものの好みが合う。本も漫画も映画もテレビも、夫の方が貪欲に知りたがるので、私の方が夫の知っているものの一部を知るようになっている。ごく稀に私の方が知っている作品があると、私はそれだけで夫の前で鼻高々になってしまう。

 ただ、好みが合うにしても、夫と私とでは好みの基準が違う。

 お笑い芸人の話になると、私は動きモノマネや、台詞のフレーズ、どこを切り取るかで夫を笑わせる。けど、夫は広くたくさんの人を覚えている。
 特に夫は、若手の成長する過程を見るのが好きなようで。登竜門と呼ばれる番組に出る人たちより、さらにもっと前の人たちの。
 大都市に住んでいれば、小さなライヴハウスに通うタイプだ。
 若手過ぎると、まだ荒い所が気になってしまって笑いきれないことも多いけど、夫は構わないらしい。
 そんなことより大事な何かを感じているのだろう。

 「浦沢直樹の漫勉」という番組も好きみたい。機会あれば観ている。絵が描かれていくペン先の動きを見て、作者たちの「描く」に対する思いを聞いて、感心している。

 この前は、「エヴァンゲリオン」などでも有名な庵野秀明さんのドキュメンタリー番組「プロフェッショナル」を観た。4年も追ったもので、彼の気質や特性が垣間見えたし、才能ある人も、こんなに苦悩し葛藤するんだと思い知った。

 「キラキラ成功している人より、葛藤を重ねて頑張っている姿」「何かが創り出されていく様子」を観るのが、夫は好きなようだ。
 物づくりに関わる夫だから、共感する部分も多いのかもしれない。

 結婚したての24年ほど前、私たちの住まいに遊びに来た夫の知り合いがいる。
 彼も夫と同業者なのだけど、「僕は物を作らない人を信じられない」と言っていた。
 「○○って不思議だよね、ってその人は言って、その○○について研究するんだけどね。その〇〇を作ろうって思わないのが僕には信じられない。理解できないよ」。

 「うーん」

 その時の夫は、賛成とも反対ともつかない返事で、宙を見て考えていた。少なくとも大賛成ではないんだな、その意見に。
 と、ホッとしたものだった。

  だって。

 ただ見るとか聞くとか観察するとか、知るだけだと好きって言えないの? 知り尽くさないといけないのかな。作らないと「好き」って公言できないの?

 25歳当時と、今でも、私のその意見はあまり変わらない。

 「好き過ぎると、作る」があるべき姿?? それが一番カッコイイの? そうしないと「好きの最終形態」として認められないの?? 



 夫に仕事のことを何度尋ねても、私にはピンと来ない。初めて二人で出かけた時に「どういうことをしてるんですか?」と聞いた時も、最近インタビューみたいに聞いた時も、結局よくわからない。噛み砕いて説明してくれてはいるんだけど。夫の得意分野が、私は苦手過ぎる。

 夫は「だけど僕は実際に物を作っているわけじゃないんだよ」と言う。「手を動かすのは他の人にやってもらってる。そこは僕は得意じゃないからね」って。

 そういう話を聞いていて気づいた。

 幾つになっても葛藤を重ね、何かを創り出そうと頑張っている姿を、愛おしそうに見る夫。
 その表情を見るのが私は好きなんだ。

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 夫の表情について。良い方ではない表情についても、気づいたことがある。

 何かで思い悩んだり、イヤなことがあったりすると、私はふさぎ込んでしまう。
 夫についてイヤだと思うことがあっても。

 私の機嫌が悪いと、夫は機嫌を取ってきたり、放っておいたり、「いつもと違う夫」になる。でも私の気持ちはわからないんだと、その「いつもと違う夫」がまたイライラして、機嫌を直すのも嫌になる。
 そうやって互いの感情が悪化していく。
 でも夫が何かに対して怒るとかイヤな態度を取る時って、私の機嫌が悪かったり、イヤな表情していたりする時なんだ。私には直接向けないから、最近まで気が付かなかった。

 そう言えば昔、「かせみどんが機嫌悪いと、どうして良いかわからなくなる」と言っていた。

 そうか。私の機嫌が悪いと、夫はもっと機嫌悪くなるんだ。

 嫌なことあっても、私が笑顔でフラットでいることを要求されたってできない。でも少なくとも、私は自分を俯瞰するようになってきている。
 腹が立ってもその表情を夫に向けるのではなく、その瞬間は無理でも、落ち着いている時に言語化しよう。話せばちゃんと聞いてくれる夫なのだ。

 夫と無関係なことで「愚痴を聞いて」と延々話しても、とりあえず聞いて自分の感想を伝えてくれる。しかも私の機嫌が悪くなっちゃうから、できるだけ私に良いように言ってくれる。

 気を使って工夫してくれてるんだよね。

 私の機嫌の良い顔を見て、機嫌を良くしている夫を見ると、また私も機嫌が良くなる。
 私がゴキゲンだと夫も楽しいんだよな。

 息子が独り暮らしを始めて、二人の生活が始まったからね。少しでも心地良く過ごす時間を増やしていきたいね。

 何だか思った以上にドライになってしまった。もう少し感情に浸りたかったけど、来年、外で乾杯する時まで取っておこうか。銀婚式になるし!


#エッセイ #夫婦 #結婚記念日 #24年 #表情 #機嫌


読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。