輝くアイディアを作るために。 アイディア創発の指針と デザイン思考の5ステップで気をつけたいこと。
先の記事では「デザイン思考の3つの特徴と、新規事業企画のアウトプットで目指すべき5つの項目」について書かせていただきました。
その記事でもまとめたようにデザイン思考の大きな方針は、
1:問題解決志向である(人が抱える問題を起点に考える)
2:プロトタイピングする(可視化と共有・検証する)
3:イノベーティブを目指す(新しい価値観を生み出す)
の3つでした。
では実際に事業企画に取り込む際には、どんなプロセスを踏むのでしょう?
今回は実際に、デザイン思考を用いたアイディア創発をする際の考え方や進め方についてまとめていきたいと思います。
先ずは自分が探求し続けられるテーマを選ぶ
デザイン思考は、問題解決の手法なので「解決したい事象」をある程度選んだ上で、ユーザー観察やインタビューに入って行きます。
言い換えると、ユーザー(自分以外の誰か)を重視するため「他者の問題」を解決することになります。「他者の問題」を解決するためには相当高い共感力が必要です。
そのためデザイン的なアプローチによるアイディア創発では「共感力」が大変重要視されます。
共感とは他人の痛みや歓びを、同じように自分の痛みや歓びのように感じれるということです。
しかし、これは私の持論ですが新規事業の企画推進を乗り切るには、自分のWillもなければ難しいです。なぜなら新規事業の実現には大変な困難・苦悩が伴うことがあるからです。
自分の興味のあること、長年解決したいと思っていること、疑問に思っていたこと…つまり、困難が起きても、探究心の持てるテーマを選ぶことがまず第一に重要だと私は考えています。
あらかじめ課せられたテーマがある場合は難しいかもしれませんが、それでも改めて、そのテーマに関連し自分が強く興味を持っている事柄や技術をチーム内で共有し、発散や収束を繰り返してテーマをいろんな角度がから深掘りしたり、引いて眺めて、真のテーマを探していくところから始めてみるのもおすすめです。
そうするとその過程で自然とチームメンバーの価値観のズレや、認識の齟齬などの凸凹をならすこともできます。
もし自分に興味のないテーマが選ばれてしまったら?
他のチームのメンバーには強い探究心があるけれど、自分はそこまでモチベーションを持って探求できないテーマが選ばれてしまった…。
でも安心してください。その場合は支援者になることができます。
チームで取り組むわけなので、チームで勝てばOK!という考えです。
実際に、ただの突拍子もないアイディアで終わらせずに、周りを巻き込んで熱量を生みだすには、そういった追随する支援者・援護者になる最初の一人がもっとも重要な要素であるという研究結果も出ています。
目指すべきアイディアとは?
ちなみに、自分が探求できるテーマを選ぶことを踏まえた上で、生み出すアイディアにも守るべきマインドがあります。それが下の三つです。
これは元任天堂で、Wiiを企画した玉樹さんという方が提唱しているもので、非常にわかりやすくまとめてくださっています。
1:良きこと 社会にとって良いこと、現状をよりよくすること
2:未知の良さ 必ずしも当たり前に良いと言えないこと
3:自分の幸せ 自分やチーム、会社が幸せになれること
ここでいう未知の良さというのは前の記事に書かれているイノベーティブと意味するところは同じです。
新規事業創発の際には、この3つの円が重なることを目指して、アイディアやコンセプトをブレストして練り上げていきます。
ちなみに、実際にテーマ選びやアイディアを出す時、この3つの円の図で、テーマ選びやアイディア出しがスムーズにいく切り口は、「良きこと」と「自分の幸せ」の間であるとも玉樹さんはおっしゃられていました。
企業ではよく「イノベーティブな事業アイディアを出せ!」と指令が下ることが多いですが、(実際これまでそういうざっくりとした依頼が多かった…)そんなお題でブレストをしてテーマやアイディアがうまく出た試しはありません。(できたらみんな苦労もない)
ここでいう「未知の良さ」つまり「新しい価値観を生むイノベーティブなアイディア」というのはとってもハードルが高いし、たどり着くまでのストロークがあるんです。
だからそこにたどり着くためにみんないろんな思考法を使ったりプロセスを踏むわけです。
でも社会にとって良いことや、自分や自分の周囲にとって良いことなら比較的考えやすいですよね。なのでまずは「良きこと」「自分の幸せ」を入り口に、空気を温めながら脳をウォームアップさせて、未知の良さ(イノベーティブ)を目指すことをお勧めします。
ちなみにこちらについてより詳しく書かれている本はこちら。Wiiの企画についての試行錯誤がストーリーとして描かれており、非常に勉強になりました。
アイディアを作り上げる、デザイン思考の5ステップ
自分たちが取り組むテーマが決まったら、次のようなプロセスでワークを進めます。
こちらは有名なデザイン思考の5ステップです。
STEP1:ユーザーの深いニーズを探る
ユーザーの気持ちに共感することで、ユーザーが本当に求めているものは、何かを明らかにする。
STEP2:問題点とゴールを定める
ユーザーの欲求が満たされていない現状(問題)を明らかにし、どのような状態を目指すべきかを定める。
STEP3:アイディアを生み出す
理想の状態にたどり着くことを支援するアイディアを生み出す。
STEP4:アイディアを形にする
生み出したアイディアを実際に形にすることでうまく行きそうな部分を確認したり、さらにアイディアを得るきっかけにする。
STEP5:アイディアを評価する
本当に目的を達成できるのかどうか、ユーザーの声をもとにアイデアを検証する。
(1つ1つのステップについては、既にいろんなところで詳細を説明している記事や本があるので、ここではすみませんが一旦割愛します。)
5ステップはもちろんどれも欠かすことができませんが、あえてその中でも重要なものをあげるとしたら「STEP1のユーザーの深いニーズを知る」、「STEP4のアイディアを形にする」だと個人的には考えています。
なぜなら実際の相手と向き合わなければ課題は明確にできず、解決するアイディアも曖昧で抽象度の高いものになってしまからです。また、アイディアは実際に形にならなければ確認ができないので、たとえアイディアが未熟な状態だったとしても、ささっと目に見える形に起こして客観的に確認できるようにしなければ先に進むこともできません。
実際にSTEP1とSTEP4をスピーディーに行うことでアイディアの精度がぐんと上がります。
繰り返して、アイディアを磨きミニマムにしていく
5ステップを繰り返し行うと、最初のぼんやりした状態からアイディアがどんどん具体的になってきます。実際にアイディアを目に見える形にして、ユーザー検証ができるからです。
検証すると、自分たちのアイディアが機能することが実証できる部分とそうでない部分があります。
検証してフィードバックが得られれば、徐々にアプローチする問題の原因・目指すべき状態も明確になります。そうすれば自ずと解決策の機能もシンプルで実現可能なものになっていきます。
もし、アイディエーションをして具体的なアイディアが出てこなかった場合は、「STEP1:ユーザーの深いニーズを知る」で情報が足りず、「STEP2:問題とゴールを定める」の抽象度が高い状態ということになるので、立ち戻ってフォーカスすることをお勧めします。
陥りがちだが気をつけたいアイディアだしの注意点
5ステップのうちのSTEP3~5では、アイディア発想をして、作って、それを評価するという流れになっています。
アイディア発想をするとき、手を動かして形にしながらやることで発想が広がったり、発見につながることもあるので、STEP3の発想とSTEP4の形にするは行ったり来たりしながら、入り混じりながら、進めていくことも可能なのですが、絶対にやってはいけないのはSTEP5の評価を、STEP3と混ぜてしまうことです。
基本的なことだと思うかもしれませんが、ワークショップをこれまで開催しいると、アイディア出しの時点で評価をしてしまうシーンを見かけることは決して少なくありません。
STEP3の時点では、とにかくたくさんのアイディアを生み出す瞬発力と柔軟性が命です。しかし評価とういのはそれにブレーキをかける相反する作用があります。同時に行えば硬直して十中八九、捗りません。
また評価されることで、「いいこと言わないと!」というハードルができてしまったり「下手なことを言わないほうがいいのかな」といった遠慮が蔓延し、硬直状態を生む原因になりますので、STEP5は必ずSTEP3,STEP4を集中してやりきってから行いましょう。
今回はこんなところで。長文となりましたが最後までお読みいただきありがとうございました。
次回はアイディア出しの基本姿勢的なことを書きたいと思います。
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