見出し画像

夢の中の祖父が見た鳥は

夢の中で祖父に話しかけられた。
「ほい、〇〇ちゃん、さっき、そこの信号のとこで珍しい鳥を見ただ」
そこの信号というのは実家のすぐ近くのわりと交通量の多い交差点だ。
現実には鳥がいたとしてもカラスかハトくらいなところ。
「横のこの辺が茶色でのん、腹がこう、青かっただ」
と小鳥が手に乗っているかのような身振りで言った。私が答える。
「オオルリじゃない?それかルリビタキ」
「おお。オオルリか。オオルリのう」
うれしそうな祖父。

目が覚めて、今度実家に行ったら祖父に鳥の図鑑で見せてあげよう、
と思ってから、ああ、祖父はもう亡くなったんだった、と気づいた。
祖父が亡くなったのは新型コロナへの警戒でお見舞いの制限が強かった頃で、
祖父はコロナとは全く別の病だったのだけれども、
入院した、と聞いてから一ヵ月くらいだったろうか、
結局私は一度も会えないまま、母や祖母も一度二度しか面会できないまま、
衰弱していって亡くなったのだった。
入院当初は「入院なんかせんでも家で寝とりゃあ治る」と言っていたそうだが、
祖母が最後に会った時にはひとこと「もうだめだ」と言っただけだった、と。
私が最後に会ったのはその半年余り前だったか、
「〇〇ちゃん、のう、じいはまあだめだ。(長くは)歩けんようになったで」
と弱気なことを言いながらも玄関までは出てきて話をしていた。

夢の中の祖父は60代くらいの若さで元気だった。

そういえば祖父の父は小鳥屋をしていたと言っていた。
祖父も鳥は好きだった。いや、そうでもなかったのか?
子どもの頃に店の鳥の餌にする虫を取りに行かされて嫌だったと言っていた。
でも昔、小学生の私が鳥を飼いたいと言ったら、一緒に買いに行って、
私が店先でウズラをじっと見ていたら(うずら卵がとれるかなと思ってた)、祖父は
「ウズラは(色が?)汚いでやめときん。こっちのがかわいいでいいに」と言って、
祖父の仕事場の隅でジュウシマツを飼って、世話も半分以上やってくれていた。
それに、「メジロはかわいい」と庭にメジロが来ると喜んでいた。

そんなことを思い出した後、もう一つ、夢の中の間違いに気づく。
オオルリの青いのは背中じゃなかったっけ?
お腹が青い鳥っていたっけ?
日本で青い鳥といえば、オオルリ、コルリ、ルリビタキ、だけど、
みんな青いのは背中。

私はたまに夢の中で実在しない配色の鳥を見ることがあるけど、
夢の中の祖父が見た鳥もそういう幻の鳥だったか。