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ゲームライターマガジン 2020年上半期ベストゲーム座談会(3/4)

 ゲームライターマガジンのメンバーによる2020年上半期ベストゲームを語る座談会の模様を全4回に渡ってお届けする企画の第3回。

 今回はするめ(以下)マンてっけん(池谷勇人)のベストをピックアップします。

※第1回はこちら

※第2回はこちら

カワチ:じゃあ、するめさんおねがいしまーす

ラー油:(ゴクリ…)

するめ(以下)マン:1月から遊んでるゲームをエクセルにまとめてるんだけど、すごく悩んだんですよね~。本音を言うと『ゴーストオブツシマ』とか『Rootfilm』とか、7月のゲームに候補が多い

カワチ:ルートフィルムよかった

するめ(以下)マン:うん

オピオン:ルートフィルムについては、年末待たずにじっくり聞きたいなあ

ラー油:ツシマとルートフィルムどっちも良かったですわ

hororo:ツシマが入っていれば自分がプレイした中ではツシマ独走だった……

将棋を知らなくても熱さが伝わる『千里の棋譜~現代将棋ミステリー~』を推していきたい!


するめ(以下)マン:で、最終的に悩んだ結果『千里の棋譜』にしようかなって思いました。

カワチ:あー、あれも今年か!

てっけん:あれかーーー

ラー油:おお!千里の棋譜! 俺もこれがベストでもいいくらいです

伊藤ガブリエル:将棋ミステリーでしたっけ?

伊藤誠之介:『千里の棋譜』と『D.M.L.C.』は、いちばんやらなきゃいけないのに、積んでるんですよねぇ……。

するめ(以下)マン:アトラスのゲーム『幻影異聞録♯FE Endore』と『ペルソナ5 スクランブル』でも良かったんだけど、前者はほぼWiiU版の移植に近いのと、後者は『ペルソナ5』を知らないと楽しくないと思ったので今回は『千里の棋譜』ですね。

カワチ:千里の棋譜も移植だけどね

するめ(以下)マン:『千里の棋譜』は第2部から新作シナリオで、そちらまで遊ぶと完結するから。もともとはフリーゲームとして分割でリリースしてたゲームで、その時のシナリオ……第1部までだと、ある意味で決着がつかなかったところがあるんだけど、今回はそこまで書ききってるんですよ。

てっけん:あれ元はフリーゲームだったんだ!

ラー油:元はスマホの無料ゲームでしたね。今回のはシナリオ追加の他にグラフィックの改修もされてて手が入ってます

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伊藤誠之介:将棋は今、いろいろ熱いから、このゲームももっと盛り上がってほしいですよね。

するめ(以下)マン:自分は将棋のルールを知ってるくらいで、定石や将棋の歴史までは知らなかったのですが、遊んだあとに将棋のゲーム(金沢将棋)を買ったくらい良かった。

ラー油:俺みたいに将棋詳しくなくてもめっちゃ面白いからいいゲームですわ

カワチ:今チャンスですよね。すでにいろいろキャンペーンやってるけど(笑)。

するめ(以下)マン:第2部、ミステリーとしては「えっ、それありなの?」というところはあるのですが、対局が熱いので有無を言わせないところがあるんですよ。

オピオン:TGS2019で触っただけですけど、将棋の知識は補完してくれつつかなりしっかり将棋がシナリオに絡んでましたね

ラー油:登場人物1人1人を丁寧に書いてるので、対局シーンでどっちが勝つのかマジで分からないのが熱かった 2部の展開はかなり凄かったのであそこは賛否分かれそう……!俺はアリ

するめ(以下)マン:スポーツ漫画みたいに1手ずつ見せてくれて、外野も「うおーっ! あの手は●●!」みたいに盛り上がってるから将棋知らなくても楽しめると思います。

hororo:将棋の駒の動かし方すら知らない人でも問題ない感じですか?

するめ(以下)マン:将棋解説講座がついてるんですけど、そこを読まなくて駒の動かし方すらわからないままでも、作中の描写の雰囲気だけで「どちらが優勢なのか、どういう状況なのか」もわかる感じ。

伊藤ガブリエル:おお~、それはいいですね!

hororo:なるほど。ヒカルの碁とかも碁わからなくても普通に楽しめますしね

ラー油:主人公の1人を将棋知識ゼロにする、というお約束の構成で分かりやすくしてますよね

オピオン:「将棋だから知ってるでしょ?」にしていないの、よかったですね

するめ(以下)マン:対局でどちらが勝つのかわからないように、相対する両方の思い入れや意気込みを描写してくるので、対局を最後まで見ないとわからないところも良かったですね。というわけで、自分は上半期なら『千里の棋譜』を推します!

カワチ:はーい! 詳しくはゲームライターマガジンに載っているレビューを観てもらうとして……では、てっけんさんお願いします


探求欲だけが純粋にゲームを駆動させる原動力になる 「探求」のゲーム「Outer Wilds」の美しさ


てっけん:あ、そうか次僕だったか

ラー油:もう聞かなくてもみんな分かってますよ!

てっけん:僕は5月のnoteでも書いた、Outer Wildsです!

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カワチ:だと思った(笑)

伊藤ガブリエル:Outer Wilds!

するめ(以下)マン:やっぱり

ラー油:ですよねー!

てっけん:あれ以来ずっと推し続けていて、自分でもこわ……と思ってるんですけど

カワチ:勇者ああああでも取り上げてたり、どんどん話題が広がった感じですね

hororo:実際てっけんさんの熱量がすごくて、どっかでやってみたくはあるんですよね~

てっけん:あそうだ、一応、ホントは2019年5月にリリースされてたんですけど、僕が見つけて遊んだのが今年だったのでご容赦ください

オピオン:おもしろそうな気配はするけれど、感想を追うと致命的なネタバレ踏んでおもしろさが減りそうで怖いですねw

ラー油:実は買ったけどまだ遊んでない

てっけん:開発中のニュースはちらほら見てて期待はしてたんですけど、最初がEpic独占だったこともあって長らく見落としてたんですよね……エピック……

カワチ:てっけんさんが今年語りすぎてて今年のイメージしか無い(笑)

hororo:昨年だったのか……w

てっけん:Steam解禁されたのは今年(6月)だから……!

ラー油:俺も今年のゲームってイメージありましたわ なるほど…

てっけん:んで、noteでも「10年に一度のゲーム」って書いたんですけど、冗談抜きでここ10年で一番面白かったゲームでした。その前のベストはWiiのLA-MULANA(2011年)だったので正確には9年ぶりか

するめ(以下)マン:買ってまだ途中だけどいつ面白くなるのかわからない……という話をすると、最後までやると面白くなるみたいに書かれてる

てっけん:マジで序盤10時間くらいは何が面白いんだかわからないゲームです

hororo:序盤10時間わからないのは……キツイなぁw

カワチ:シロナガス島だったら事件解決して帰ってるよ!

てっけん:ただ、つまらないって感じでもなかったんですよね。面白いんだか面白くないんだかすらわからない

オピオン:序盤10時間おもしろみが見つからないのに、なぜ10時間遊べたんです?

てっけん:Twitterでもちょっと書いたんですけど、面白いか面白くないかわからないゲームって、矛盾して聞こえるけど面白いんですよ。長年ゲームやってると、だいたいパッと触ったら面白いかつまらないか分かるじゃないですか。それすら分からないゲームって、なんだよこれ! って

hororo:未知の感覚というものが新鮮で、逆にそれがモチベーションになった、みたいな感じですかね

てっけん:そうそう

hororo:それは体験してみたいなぁ。どこかで時間作って遊ばないと

するめ(以下)マン:eshopをのぞいて、解説だけじゃよくわからないゲームを買ってみる感覚に近い……?

オピオン:確かに、それなら最低限つまらないと見切り付けるまで遊んじゃいそう

てっけん:あとはDownwell作者のもっぴんさんが強烈にオススメしてたのが大きかった

カワチ:信頼している人が推している作品は安心できるっていうのはありますね

てっけん:だいたいのゲーム紹介的なことはもうnoteで書いたのでそっちを読んでもらうとして、一応ざっくり説明しておくと、「太陽系消滅までの22分をループし続けるオープンワールド宇宙ADV」です

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するめ(以下)マン:グレッグ・イーガンとかハヤカワSF大好きなので、ハマれそうな気はしてるんだけど

てっけん:んで、語ろうと思ったらこのゲームいくらでも語れるんですけど、それだと4時間くらいかかっちゃうので どこがそんなにハマったのかなーというところだけ昨日から考えてたんですが、僕のゲーム性癖の一つに「テーマとゲーム性がかっちり噛み合ってると泣いちゃう」というのがあるんですよ

カワチ:あぁ、なんとなくわかる

伊藤ガブリエル:その気持ちすごくわかります……!

ラー油:なんか分かりますわ

するめ(以下)マン:あーわかる気がする。『グノーシア』とかもそういう仕掛けが上手かった。

カワチ:『ザンキゼロ』とかも物語とシステムが一致していて最後ボロ泣きしたなー

hororo:気持ちいいですよね、そういう作品

てっけん:で、このゲームのテーマってなんだろう、って考えると、「Wilds(荒野)」ってタイトルが示すように、未開の荒野へ乗り出す探求心がテーマなんです

カワチ:ほうほう

てっけん:チュートリアルを終えて宇宙に出て、何度も超新星爆発に巻き込まれながらループを繰り返していくうちに、どうやらこの星系にはかつて「ノマイ」という先住宇宙人が住んでいて、どうも「彼らがここで何をしていたか」を探ることがループの謎をとくことになるっぽいぞ、ということに気付くんですよ

カワチ:自分は同じ宇宙を舞台にした「OPUS-地球計画」が好きなんですけど、ループ要素などがある分、物語にもひねりがきいてそうですね

てっけん:んで、このノマイたちの「探求欲」がすごいんですよ。ネタバレできないけど、彼らの壮絶すぎる運命と、それでも一切衰えない未知への探究欲は、もはやドン引きを通り越して畏敬の念さえ覚えるくらい。まあちょっと探求欲が倫理観を上回っちゃってるようなところもあったりするんですけど、その点でいえばわれわれ人類も、探求欲の果てに戦争とか起こしたり、原爆とか作っちゃったりしてるわけで……でもこのゲーム、最終的にその「探求欲」を宇宙レベル、量子レベルで全肯定してくれるんですよ!

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伊藤誠之介:聞けば聞くほど、やればハマると予想がつくんですけど。PCゲーがプレイできる環境を、どうにかしないとなぁ……。

てっけん:PS4でも遊べるよ!(あとXbox Oneでも)

伊藤誠之介:えっ、ホントだ! 気づいてなかった。

オピオン:自分も長いことPCオンリーだと思ってましたね

てっけん:で、そのテーマ(探求欲の肯定)がどうゲームと結びついてるかなんですけど、このゲーム、ループで引き継げるのは「知識」だけで、アイテム入手で新しい場所に行けるとかないんですよ

カワチ:プレイヤー自身のレベルが上がってるってこと?

てっけん:アイテムとかパラメータとか、目に見える蓄積は一切ない。でも、知識を手に入れたり経験を積んだりすることで、今までは行けなかった場所への行き方が分かったり、これまでできなかったことができるようになったり、時間をかけなければできなかったことが短時間でできるようになったりする

カワチ:知識ってパラメータがあるわけではなく?

てっけん:そんなものはない!

伊藤誠之介:MYSTっぽい感じですかね?

てっけん:そうそう! MYSTの謎解きにめっちゃ近い

hororo:(昔MYST挫折したからな……できるか不安になってきたw)

てっけん:たとえばあちこち回ってると、どうも各惑星に、ノマイが建てた「うずまき型のよくわかんない施設」があるな、ってことに気付くんですよ

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伊藤ガブリエル:MYSTっぽさがあるのは個人的に嬉しいですねー

てっけん:ただ、それだけだと「なんかよくわかんない施設があるな」としか思わないんだけど、何かのきっかけでそれが何のための施設かが分かると、それまでただの背景だったうずまき施設が、謎解きのためのヒントになったり、新しい場所へ行くためのカギになったりするんですよ。そういう細かい知識の積み重ねで、行ける場所を広げていくんです

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ラー油:すごそうだけど俺だと苦戦しそうな気がしてきた……!

てっけん:ゲーム的な蓄積がないということは、何をしてもそれが正解なのか分からないので、序盤はホントに難しいと思います(※探索大好き人間なら序盤から楽しめるかも)。「自分がいま、本当に正解に向かって歩いているのか」をゲーム側が一切教えてくれない。でも、そこがいいんですよ。だってテーマは「探求」だから!

カワチ:あー情報無しでひとりでじっくりやりたいですね

てっけん:探求欲だけが純粋にゲームを駆動させる原動力になり、探求欲がなければクリアできないようになってる。この構造が本当に美しい

オピオン:例えば「うずまき型の施設」になにかがあるという知識だけを得てしまった座談会メンバーが遊んだ場合、「うずまき型の施設」を早々と利用してしまうとかはないんですか?

てっけん:そこはさすがによくできてて、ちゃんとゲーム内で手に入る情報がないと、いきなりは気付けないようになってるんですよ

するめ(以下)マン:MYSTは暇を持て余していた学生時代ならできたけど、今やったら投げちゃいそうかな……出会うタイミングって重要ですよね

てっけん:ただ、めちゃくちゃ運が良ければ最初のループでクリアすることもできちゃうゲームなので、ある程度運が良くてカンが冴えてる人なら、うずまき型施設の意味も一発目で分かるかもしれない。でも、それもまた正しい攻略なんですよね

カワチ:アナログの謎解きゲームっぽくていいですね

hororo:とても興味が沸いてきました

てっけん:なんというか、ゲームに誘導されて進んでいっているのではなく、自分自身の探求欲に導かれながら進むという感覚が本当に久しぶりだったんですよね

オピオン:プレイヤーがどう遊ぶかで、体験も、次のプレイへの足場も、生まれる謎も変わる???

てっけん:全部で6つ惑星があるんですけど、最初からどの星にも行けるので、人によって攻略順とか、謎がひも解けていく順序とかも全然違いますね。いろんな実況動画見てるけどホントにみんな攻略順も、詰まるところも違う

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hororo:確かに最近のゲームは誘導がしっかりしているものがほとんどですからね

伊藤誠之介:たしかに、その探求心はLA-MULANAと共通しそうな感じですね。

カワチ:どこから攻略するか決まっていないところとかは、ちょっと、『そう、あたしたちはこんなにも理不尽な世界に生きているのだらよ』にも似てるなー。まぁ、その部分だけを言ったら『ブレス オブ ザ ワイルド』とかも同じになっちゃうけど(笑)。

てっけん:こういう誘導って、うまくやらないと「遊んでる」んじゃなくて「遊ばされてる」という感じになっちゃうんですよね フロムとかはそのへんのバランスがすごく上手いけど、このゲームはちょっと投げっぱなしすぎるくらい。そこがたまらない人にはたまらないけど、フロムより間違いなく間口は狭いw

伊藤誠之介:フロムより狭いw

てっけん:だからめちゃくちゃ難しいですよこのゲーム。敵と戦うとかそういうのはないけど、たぶん3人いたら2人は途中で投げると思う

ラー油:Outer Wildsから逃げるなって言われちゃう

てっけん:あと、ゲーム史上でもけっこう珍しい「ガチSF」というのもよかった。量子モノというのもたまらないんだけど、ここまでの強度とスケールのSFはちょっとなかったと思っていて。感想見てると、よく比較で名前が挙がっていたのは「星を継ぐもの」「インターステラー」あたり。あとこれ遊んで気に入った人には、グレッグ・イーガンの「宇宙消失」をぜひ読んでほしい

hororo:お話し的にもかなり興味をそそられますね

てっけん:ということで、すごい早口でしゃべってしまったけど、僕の推しはOuter Wildsでした!

カワチ:FF5以来の探求ゲーってことでありがとうございました

てっけん:そういえばFF5も大好きだったw

 第3回はここまで。ラストとなる第4回はhororoとラー油のベストをお届けします。

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