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【書評】愛と再生の医療ファンタジー〜『ムゲンのi』(知念実希人)

知念実希人さんの大作、『ムゲンのi』を紹介します。ミステリーと医療とファンタジーが融合した、なかなか類を見ない作品です。

本屋大賞ノミネート作品です。

※書評の目次はこちら

1、内容・あらすじ

主人公は若き神経内科医・識名愛衣(しきなあい)。

彼女は、昏睡から覚めずに延々と眠り続けるという謎の病気・「特発性嗜眠症候群」、通称「イレス」という難病の患者を担当していました。

世界でも400例くらいしか報告されていないこの奇病が、同時期に同地域で4人発生し、愛衣が勤める病院に入院しているという異常事態。

この不可思議な事態に困惑する愛衣は、実家に帰った時に祖母からアドバイスを受けます。

沖縄の霊能力者「ユタ」である祖母は、患者を目醒めさせるには、魂の救済〈マブイグミ〉をするしか方法はないと言います。ユタの血を引く愛衣ならできる、と。

半信半疑だった愛衣ですが、実際に患者の夢の世界に入り込むことができ、魂の分身〈うさぎ猫のククル〉と一緒にマブイグミに挑みます。

次々とマブイグミを成功させる愛衣は、次第に、患者のトラウマが都内西部で頻発する猟奇殺人と関係があることに気付き──。

↓作品PVです。最近は本にまでPVがつく時代なんですね。

2、私の感想

上下巻に分かれていてかなりの長さがありますが、面白く読みやすくてスイスイと読み終えてしまいます。

最初は、「ああ、主人公がイレス患者たちを目覚めさせる物語なのかな」と思いますが、全然それだけではありませんでした。

読み進めていくうちに、イレス患者たちの背景に「ある猟奇殺人事件」が関係していることがだんだんわかってきます。

そこから先は伏線がこれでもか、これでもか、と張り巡らされ、後半でその伏線が一気に回収される快感を味わえます。

広げまくった大風呂敷が見事に折りたたまれる感じ。

特に終盤の「えっ、じゃあ今までは一体何だったの!?」と思ってしまう急展開はお見事です。

そうか、だから「ムゲン」はカタカナなんだ、「i」もそういう意味なんだ!と、タイトルの意味も納得。

そして物語は最初に戻ってきて、きれいに着地。

新しい発想で計算され尽くした、気持ちのいいエンターテイメント作品でした。

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3、こんな人にオススメ

・ミステリーが好きな人
この展開はなかなか予想ができませんでした。いい意味で裏切られます。

・医療ものが好きな人
作者さんはお医者さんだそうで、病院の描写もしっかりしています。

・ファンタジーが好きな人。
かなりの部分、ファンタジー要素が占めます。

※こちらは作品特設HP。




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