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【書評】作家による白血病の闘病記〜『無菌病棟より愛をこめて』(加納朋子)

これは必要に迫られて読んだ本です。ミステリー作家の加納朋子さんが自身の白血病体験を書いた本です。『無菌病棟より愛をこめて』

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1、内容・あらすじ

始まりは、加納さんのご主人(作家・貫井徳郎さん)からうつった夏風邪。

ただの風邪のはずなのに体が重くふらふらで呼吸も荒く、血液検査を受けます。

「全体的に数値がおかしい」という結果が出て、大学病院に回され、「急性白血病」の診断が下ります。

そこからは全てを放り出して突然の入院、抗がん剤治療、骨髄移植……という怒涛の日々が始まります。

今、私が死んでしまうことは、身近な人たちにとってとても良くないことだと思う。子供はもちろんのこと、旦那さんがかわいそうである。だからなるべく死なないようにがんばろうと思う。

家族や友人に支えられ、つらい闘病生活の中でもユーモアを忘れず、前向きに病気と向き合います──。

2、私の感想

普通、闘病記を読むのはなかなかにしんどいものです。特に自分や家族が同じ病気であればなおさらです。

しかし、この本は意外にそうでもありませんでした。ポジティブかつ冷静でユーモアを交えて書かれているためです。さすがは物書き。

ミステリー作家さんが闘病記を書くとこうなるんだな、という感じでしょうか。

もちろん、つらい局面は多々あるのですが、明るくて悲壮感がなく、わりと安心して読んでいられます。

白血病患者の、入院治療から骨髄移植までの詳細な経過がよくわかって、とても勉強になります。白血病についての知識を仕入れるにはもってこいでした。

さらに、血縁ドナーとなった加納さんの弟によるドナー日記がこれまた克明ですごいです。加納さん以上に冷静な筆致で詳細な記録。記録は大事です。

それにしても、普通に生活できることのありがたさをつくづく感じさせられますし、改めて「人生は無常だな」と思いました。

病とは、実に理不尽なものです。どんなに真摯に努力しようと、駄目なときは駄目。そしてまるで努力していない(ように見える)人が、あっさり快復してしまったり。人生そのもののように、不公平で残酷です。

これは、病気を経験した人ならよくわかることと思います。

「白血病患者へのエール」という気持ちにあふれている、温かい闘病記でした。

3、こんな人にオススメ

・白血病患者の方
大いに共感できるのではないかと思います。

・白血病患者の家族
特に、血縁ドナーになる可能性のある人は貴重な情報が得られます。

・白血病患者の友人知人
どう接していいかわからない、白血病のことを知りたい、という人は特にオススメです。

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