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【書評】"色々ある"男女の恋愛小説『海の見える街』(畑野智美)

久々の書評となってしまいました。それもこれも全てはコロナウイルスをめぐる混乱のせい……(2020/04/27現在)。本だけは読んでいたのですが、アウトプットする余裕がなかなかありませんでした。

これは恋愛小説です。とても心に残る作品でした。『海の見える街』、作者は畑野智美さん。

※書評一覧の目次はこちら

1、あらすじ・内容

海の見える市立図書館で司書として働く31歳の本田。
7歳下の真面目な同僚、日野さん。
その図書館に契約職員として赴任してきた春香。
隣の児童館で働く本田と同い年の松田。

天真爛漫で奔放な春香の存在が起点になり、4人の男女の日常が少しずつ変化していきます。

やがて彼らの間に「恋愛」が生まれていきますが、春香は1年間の契約期間が終わり、図書館を去る時が来てしまいました──。

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2、私の感想

4人の男女が繰り広げる落ち着いた恋愛小説です。

ただし、甘々な恋愛ばかりが描かれるわけではなく、4人が抱えているそれぞれの事情も同時に描かれます。

この事情が本当にそれぞれ色々あって、中には言葉を失うほどの重いものもあります。

個人的には、児童館で働く松田くんが抱えているものに絶句してしまいました。そして、彼の行く末についても。

「ああ、人はそれぞれ色々なものを抱えているんだなあ」という、人生の機微みたいなものが垣間見え、小説を読むことの醍醐味を味わわせてくれます。

ドラマのように激しい山場がやってくるような恋愛ストーリーではありませんが、その分リアルで生々しく、とても心に残ります。

小説ですが、この4人はどこかに実在しているような気がして、「みんな幸せになってほしいなあ」という思いに駆られました。

そして、最後の結末が「そうこなければ!」というものなので、読後感も非常に良く、ほっこりします。

いい小説、いい作家さんを見つけたな、と思いました。表紙もとても素敵です。舞台となった街に行ってみたくなりました。(どこなのかな)

3、こんな人にオススメ

・「色々ある」人生を送っている人
「みんな色々あるよねえ」という共感の思いでいっぱいになります。

・図書館にお勤めの人
図書館事情がよりリアルに想像できて、楽しめると思います。

・甘すぎない恋愛小説を読みたい人
なかなかのビター具合なので、そういう小説を求めている人にはぴったりかと。

畑野智美さんは、この本を書いた人として注目していました。まだ読んでいませんが、これはきっと読むべき小説だと思います。


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