【書評】切なすぎる殺人者〜『青の炎』(貴志祐介)
犯人にこの上なく同情してしまうミステリー作品です。『青の炎』。作者は『悪の教典』などで知られる貴志祐介さん。
1、内容・あらすじ
母親と妹と3人で幸せに暮らしていた高校生・櫛森秀一(くしもりしゅういち)。
ある日、別れた母親の元夫・曾根が家に居座ったことで、平和だった一家の日常は一変します。
昼間から酒を飲み、金をせびり、家族に暴力を振るう曾根。耐えきれなくなった秀一は、怯えて暮らす妹と母親に平穏な日常を取り戻すべく、綿密な計画を立ててこの侵入者を『強制終了』させることを決意。
計画は無事に成功します。しかし、完璧なはずだった計画にはいくつかのこぼれ目があり、秀一は次第に追いつめられていき──。
2、私の感想
本の帯には「こんなにもせつない殺人者がかつていただろうか」と書いてありましたが、全くその通りです。
主人公の身になってみると、「これは殺人を企てても無理はない」というくらいの境遇です。大いに主人公に同情してしまいます。
それだけに、後半からの追い詰められ具合は、読んでいて胸をかきむしられるような、非常にいたたまれない気持ちになります。
「これは最終的にどうなってしまうんだろう」と心配しながらページをめくっていきましたが、最後を読んだとき、ほっと胸をなで下ろしました。まだしも納得できる結末だったからです。悲しい結末であることには変わりはないのですが……。
本筋にはそれほど関係ありませんが、中島敦の『山月記』と夏目漱石の『こころ』が出てくるのが、国語教師としては嬉しかったです。
3、こんな人にオススメ
・時間を忘れたい人
結構な厚さがありますが、一気に読めてしまいます。しばし現実を忘れます。
・自転車が好きな人
作中で何度もロードバイクが出てくるので、乗りたくなります。
・二宮和也さんのファン
↓櫛森秀一が二宮和也さんだとイメージして読めば面白さも倍増します。
嵐の二宮和也さん主演で映画化もされました。
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