【書評】英傑たちのオールスター内閣〜『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(眞邊明人)
新聞の広告で見かけて気になり、読んでみた本です。『もしも徳川家康が総理大臣になったら』。今の閉塞した気分を一新するには絶好の、痛快な小説でした。
1、内容・あらすじ
2020年、政府は新型コロナの初期対応を誤り、首相官邸でクラスターが発生。ついには総理大臣までもが感染し、死亡してしまいます。
国民の政治不信は頂点に達し、日本は大混乱に。
そこで政府はとっておきの秘策を実行に移します。それは、AIとホログラムによって過去の英傑たちを復活させ、最強の内閣を結成するというもの。
AIによって総理大臣に選ばれたのは徳川家康。以下、経済産業大臣には織田信長、財務大臣に豊臣秀吉、厚生労働大臣に徳川綱吉、法務大臣に北条政子、外務大臣に足利義満、そして総理大臣の補佐役である官房長官は坂本龍馬。
日本史オールスターともいえるこの最強内閣は、尋常ならざる実行力で次々と政策を打ち出していきます。
東京ロックダウン、50万円大閤給付金、リモート国会、安土国債、令和版楽市楽座、リモート万博……。
国民は歓喜し、支持率は90%を超えます。しかし、このまま日本を救うかと思われた最強内閣に、「あり得ないこと」が起こります──。
2、私の感想
とてもワクワクする面白い小説でした。徳川家康と坂本龍馬が話をしているだけでもうワクワクします。
いつも無味乾燥な官房長官の会見も、坂本龍馬がやると一変。ワクワクしっぱなしです。
この小説を書くのはきっと楽しかっただろうなあ、と思います。
ワクワクするだけではなく、色々な読み方ができる小説です。
まずは、今の政治に対する痛烈な批判。読みながら「偉人たちを持ち出さなくても、今の政治家たちがこういうふうにやってくれればいいんだよなあ」と何度も思いました。
家康以上に、龍馬はこの時代の政治家というものに失望していた。龍馬の目から見て、この国を託すのに足る政治家は一人もいなかった。皆、自分の小さな野望にあくせくしている、まるで小商人のような人物ばかりだ。口が軽く、言ったことに責任を取らない。龍馬が目指した〝誰もが参加できる政治〟がこのようなものかと思うと、自分や自分の仲間が命を懸けてやってきたことはなんだったんだろうかと思えてくる。
また、歴史への興味を改めてかき立てられる小説でもありました。登場してくるのは誰もが知っている偉人ばかりですが、彼らのことをもっと知りたくなりました。
後半はミステリーっぽくなるのも面白いところです。
最後の徳川家康の大演説は見ものです。
3、こんな人にオススメ
・歴史が好きな人
歴史好きにはたまらないのではないでしょうか。逆に歴史嫌いな人も興味が持てそうです。
・今の政治にうんざりしている人
ある意味理想の政治を体験できます。副作用として、今の政治家たちを見るともっとうんざりしてしまいます(笑)
・コロナ疲れの人
現在の危機を見事に解決してくれるので、非常にスカッとします。
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