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【書評】一番罪深いのは誰なのか?『犯罪者』(太田愛)

前から気になっていた作家さんで、Kindleのセールで安くなっていた時にこの本を買っておきました。自分の先見の明に感謝したいです。めちゃくちゃに面白かったです。太田愛さんの『犯罪者』です。

※書評一覧の目次はこちら

1、内容・あらすじ

19歳の繁藤修司は、恋人と待ち合わせをしていた白昼の駅前広場で、通り魔殺人事件に遭遇してしまいます。4人が刺殺された中で、修司はただ一人助かります。

九死に一生を得た修司でしたが、搬送先の病院で謎の男から「逃げろ。あと10日生き延びれば助かる」と警告されます。その直後、謎の暗殺者に襲撃される修司。

なぜ自分は10日以内に殺されなければならないのか?

刑事の相馬によって命を救われた修司は、相馬の友人・鑓水と3人で、暗殺者に追われながら事件の真相を追います。

次第に浮かび上がってくる事実から、あれが決して偶然の通り魔事件などではなく、仕組まれた殺人事件であることがわかってきます────。

2、私の感想

「面白い」という評判は聞いていましたが、評判通りでした。

謎めいた通り魔殺人のシーンから始まるので、「ああ、この犯人を追うストーリーなのかな」と思って読んでいると、それが思わぬ方向につながっていきます。

「この通り魔が最終的にはあの企業の話につながっていくのか……!」と驚きます。

謎が謎を呼び、色んな糸が複雑に絡み合い、それが徐々に解きほぐされていく感じがたまりません。息をついている暇なし。

ラストの「仕掛け」のシーンは、もう先が気になって気になって、秒速でページをめくっていきました。

上下巻と長いですが、それは登場人物たちの人生がきっちりと書き込まれているからです。人間に対する深い洞察が、ストーリーに厚みを与えています。『犯罪者』というタイトルにも、筆者の意図を感じます。

主人公たちが漫画のように都合よく助からないのもいいところです。より現実に近い感じがします。

これがデビュー作、と聞いて驚愕しましたが、あのドラマ『相棒』の脚本を書いた人だと聞いて納得。

もっともっと売れていい小説だと思います。

3、こんな人にオススメ

・時間を忘れたい人
上下巻とあるので、物語の中にたっぷりと没入できます。時間を忘れます。

・ストレスがたまっている人
長い自粛期間でストレスがたまっている人にはうってつけです。物語の世界で気分転換をしましょう。

・『相棒』シリーズが好きな人
確かに、物語の運び方がいい意味でテレビ的な気がします。『相棒』が好きな人はぜひ。

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