最小の暴力——ジャック・デリダ「暴力と形而上学」について
『評伝レヴィナス』(サルモン・マルカ 斎藤慶典・渡名喜庸哲・小手川正二郎訳)によると、後にソ連へ吸収されることになるリトアニアに生まれた哲学者エマニエル・レヴィナスは、ロシア革命による政治的動乱を機に一九三〇年にフランスに帰化する。その際、フランス国籍取得の条件として兵役を課され、実際に第二次世界大戦においてロシア語の通訳者として軍務につくことになる。一九四〇年六月五日、ドイツ軍との戦闘に敗北したレヴィナスの所属する連隊は捕虜となり、ドイツ国内へ移送される。ユダヤ人でもあっ