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大河「光る君へ」(20)望みの先に

 早20回来ましたねー。この、とても現実に起こったとは思えない・フィクションなら荒唐無稽すぎて却下されるレベルの「長徳の変」、どう描くのかと楽しみでしたが期待以上でした。いやほんとすごい。
※「源氏物語を読みたい80代母」のための企画です。最終回までこの形式で続ける所存。思いっきりネタバレ全開なのでご注意くださいまし。
お喋り役の平安女房ズは以下:
右近(右)、侍従(侍)、王命婦(王)、少納言(少)

侍「右近ちゃああああん!!!」
右「なあに侍従ちゃああああん!!!」
侍「右近ちゃんまで叫んでるううううでもわかるううう、叫ばずにはいられないよね何今回!!!」
右「ガッツーンとぶちかましてきたわね長徳の変。映像化って本当ヤバいわ。中関白家の崩壊ってどんなドラマよりドラマよねえ」
王「ちょっといいかしらお二人とも。ラストの定子さま断髪シーン、衝撃だったわよね。『賢木』巻での藤壺宮さまのサプライズ出家の記憶が否応なく蘇ったわ。あの時、私たち側近の女房には事前に知らされてたからまだよかったけど……バッチバチにトラウマ刺激されて暫く立ち直れなかったわよ」
少「平安時代に女が髪を下ろすというのは、社会的な死に等しいですからね。まして中宮さま御自ら刀で黒髪を切り落とされるなんて……如何に追い詰められておいでだったか、察するに余りあります」
侍「えっでもさあ伊周くんも隆家くんも死罪じゃないよね?理由がミットモナイとはいえ要するに左遷っしょ?定子さま自身はなんも悪くないんだしそこまで気にしなくても」
右「いや気にするっしょ……あの家族、何かというと中宮様中宮様で頼りっきりじゃん。伊周くん行きたくなーい!でギャンギャンだし」
少「中宮としてのお立場、一族の支柱としてのお立場、帝への愛とご家族への情との板挟みで、責任の一端を負わざるを得ない形に追い込まれたんでしょう。おいたわしいですわ」
王「まさに背後にあった闇に追いつかれて捕まったって感じね。呪詛の一件なんて典型的。あんな軽率で愚かな真似しなきゃ、女院さまの周囲から大量に呪符が見つかるなんてことなかったのに」
侍「……エッ?!ちょっとまって、何何?!」
右「やあね侍従ちゃん。まさかアレが本当に伊周くんの仕業とか思ってなかったでしょ?」
侍「い、いやそれはそうだけど……本人も否定してるし……ままままさか」
少「女院さまが仰いましたわよね倫子さまに。『口が軽い』と」
王「思い出すわ……かつて兼家さまも宮中で倒れて寝込んだ。その間に道兼さまを使って今上帝をそそのかし、出家と譲位を引き起した。どちらも同じ花山院が絡んでるのは偶然だろうけど、道兼さまの役割は倫子さまってところかしら」
右「はー、つくづく一番父親似なのは女院さまってことなのよね」
侍「まーさーかの!詮子さまと倫子さまグル説キターーー!」
王「いやどう考えてもそれしかないでしょ。スパイ潜入はあったかもしれないけど、あれ程あちこちに沢山仕込めないわよ。あの『口が軽い』は、倫子さまへの
(貴女なら空気読めるわよね今余計なこというんじゃないわよ)
という釘刺しであり、道長くんへの
(アタシが黒幕ってことはミリも出すんじゃないわよおわかり?あくまで発見は倫子、通報したのも倫子よ)
という後から効いてくる釘刺し」
侍「じゃ、じゃあ倫子さまの『悪しき気が』ってセリフも演技……」
王「でしょうね。いつどこから関わってたのかはわかんないけど、道長くんに何も言わずして
『詮子さまの自作自演』
を通じさせた手腕は凄すぎよ。道長くんもだからこそ、
『(処罰に関しては)帝の御意思のままに』
となったわけで。この辺は道長くんもさすがね。闇をずっと見据えてきた三男坊はちがうわ」
侍「道長くん意外に腹黒ー!でもそれ以上に倫子さまヤバヤバのヤバ!」
王「痺れるわよねあの立ち回り。詮子さまとのタッグ最強すぎ。もはや敵なしね宮中には」
少「まひろさんが心配ですわ。倫子さまが『殿の心にいる誰か他の女』を特定するのももう時間の問題でしょう?あんな鍵もかからない文箱にまとめて入れてあるんですし……」
右「そこで為時パッパとの越前国赴任てわけよ。運はすっごくいいわよねー道長くん。首の皮一枚繋がるって感じ?」
侍「そっか来週から越前国編!キャホー楽しみ!同時に動く色々はともかくとして!」
王「光と闇が交錯する中での『春はあけぼの』」
少「待ち遠しいですわね……」

 いや今回もまた凄かった。もう凄いとしかいいようがない。「長徳の変」とそれ以降のドタバタが映像化されるとここまでインパクトがあるのかと。文章で読んでも嘘やろ本当にこんなことあったんかーいと言いたくなるようなどうしようもなさ。そりゃあ町の人々も噂しますわ見物にも行きますわ。
 そんな中、ききょうとまひろが変装して(笑)潜入し、中宮定子の断髪を目撃するという演出。ドラマならではの荒唐無稽で超無茶なシーンにも関わらず、二人の受けた衝撃がわかりやすくどストレートに伝わってきて、これはこれでありなんじゃないかと思ってしまう必然性の鬼脚本。ききょうのそれとまひろのそれとは当然明確に違う。それぞれの表情にその温度差が如実に現れていて、二人とも素晴らしい演技でした。
 実際「枕草子」は中関白家が凋落してから書かれたらしいので、この衝撃が千年残る随筆を生み出したのかと思うと、実に実に感慨深いです。前回書いたききょうとまひろの会話も、あながち間違ってなかったりして?(いや妄想です)
 改めてもう一度考えてみる。
 帝も認める名作「源氏物語」の作者としてその名を馳せた紫式部が、
「『枕草子』もその作者も大したことないクソザコなんだから放っておけばいいのよ」
 と言い切ればどうなるか。
 お上(この場合道長か?)に対しては危険視する必要なしというメッセージになり得る。ここまでは前回の会話の内容と同じ。
 一方、その他一般の人々に対しては逆に、
「あの紫式部があれほど悪しざまにいう相手が書いたものってどんな作品?」
と興味関心を煽る効果があったんじゃなかろうか。現代のSNSだって、褒め言葉より悪口の方がバズるもんね。映画も本もあまりにレビューが酷いと、チラ見してみようかって気にもなる。そこまで見通していたとしたらヤバすぎない?紫式部。天才か(天才だ)。
「枕草子」の凄さは読めばわかる。物語が大好きで漢詩に造詣の深い紫式部が、その価値を理解できないはずはない。中関白家の隆盛を描いた「枕草子」は、下手をすれば全て闇に葬られる可能性もあった。どうすれば残せるかを熟慮してのあの悪口、ならば。
 まるで根拠のない妄想だけど、そう思うとすごく楽しい。ドラマの醍醐味よね。
 それと。
 為時のお祝いで、宣孝とまひろが酒飲みながら話してるシーン、やけに色っぽかったと思いません?まるで夫婦みたいに見えた。越前国行く前に求婚したりはないのかなあ。でもあちらで宋人のイケメンとの出会いもあるのよねえうーんうーん。個人的には宣孝とのラブラブも観たいんだわ。この辺の展開もどうなるやら楽しみ。
 というわけでまた来週!
<つづく>
※来週はガテン仕事がまた入るので火曜以降更新になるやも。その前に福井旅レポを仕上げないと。がんばる。
 


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