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大河「光る君へ」(27)宿縁の命

 二週間長かったよ……そしてその空白を埋めるどころか詰め詰めパンパンつるつるいっぱい(福井弁)にぶっこんでくるこの大河。待ち望んだ道長とまひろの再会場面でまさかの越前和紙の話も再登場したし、いやもう本当にいつもいつもありがとうございます。
※「源氏物語を読みたい80代母」のための企画です。最終回までこの形式で続ける所存。思いっきりネタバレ全開なのでご注意くださいまし。
お喋り役の平安女房ズは以下:
右近(右)、侍従(侍)、王命婦(王)、少納言(少)

侍「ねえねえ右近ちゃん」
右「なあに侍従ちゃん。……あら、案外落ち着いてるじゃない。今回も怒涛の展開だったのに」
侍「フッ、アタシだってね、いっつもキャーキャー言ってるだけのお子ちゃまじゃないのよ?永遠の二十代だけどねっ!」
右「あらそう。今日は冷静に語る日☆ってことね了解。じゃあまず七夕(一週遅れたけど)の再会から焼けぼっくいに火のW不倫について話そっか」
侍「ちょ、だぶるふりんてー!!!いやそりゃ現代だとそうだけどさーあの二人はちがうのー!!!もうさー道長くんすっかり三郎の顔に戻ってたじゃん、ピュアピュアなエンドレスラブからのなだれ込み!ってやつよっ!!!」
王「結局いつもと同じで安心したわ侍従ちゃん。それにしてもあの一夜で大当たりだなんて凄いわね。これがいわゆる宿縁ってやつかしら」
少「道長さま、そもそも子沢山のお方ですもの。その意味でも強運なのですわ。ただ、まひろさんだけはどうしても手に入らない……あれほど惹かれ合っているのに」
侍「うわーーーーんそれよそれ!!!なんでなん?恋と結婚は別っていうけどさあ、それにしてもよ!!!」
右「そのセリフなんだか既視感ある……『帚木』あたりかしら」
王「道長くんぐらいの地位にいると、結婚は政治活動とほぼイコールだものね。まひろちゃんを妻の一人に加えること自体は問題なくても、あんな『止められない』感じでイチャイチャされたらそれこそ一条帝と中宮定子さまカップルと同じく……」
少「倫子さまには秒でバレますわね。これまでの経緯もほぼ全て洗いざらい」
右「ヒエッ怖……まひろちゃんにその事態を収める器量は期待できないわ正直。断って正解よ」
侍「うわーーーん!それはね、アタシもそうは思うの!バカ正直なまひろちゃんは宣孝サンみたいな物わかりの良すぎる器超デカオジサンじゃないと無理って!」
右「侍従ちゃんまーたオジサン呼ばわりして!メッ!」
王「宣孝さまの立ち回り、完璧オブ完璧だったわね。全てを察した上でのあの判断プラスまひろちゃんに罪悪感を与えないための『左大臣様の子であればワシにもメリットある』的な発言」
少「あの場面で、ああ宣孝さまは心底まひろさんを愛していらっしゃるのねと確信いたしました。ただ『愛してる』『離れたくない』というばかりが愛情表現ではないんですよ。嘘がつけない・何かと理が勝りがちなまひろさんにうってつけの言い方で、誰よりも深い愛をお示しになられたと思います。感動しましたわ(うっとり)」
右「わかる。あの途轍もない安定感と包容力、それでいて愛嬌もある気も利く、情の深さもピカイチっていう。道長くんよりずーっといい男なのになあ……惜しい」
王「本当にね。こんなすべてを兼ね備えた理想的な夫、人生で二度出会えるはずもないわ」
侍「エッ……ちょっと何その不穏な発言んんん!」
少「春はいつか終わりますのよ……(再)」

 はーーーやっぱりこう来たか!の展開でしたね。そっかー腹の子の父は道長かー。
 母はいとさんの意見に完全同意で、
「何も白黒ハッキリさせんでいいのに」
 と言ってました。正直私もそう思う。でも今ドラマでのまひろの性格じゃ
「どっちかワカランけどまあいっか」
 は無理だったんだろうし、まず以てあの宣孝が気づかないわけないスね。こうするしかなかったんだねうん。
 と、このように、
「ハア?道長と紫式部の恋愛だと?!ないないありえん」
 などと言っていた以前の私が嘘のようにスンナリ状況を受け入れてしまっています。まあもともとニワカですしそこまで思い入れなかったんじゃないかと言われればそうですけど、何より脚本の妙ですよ妙。いやそれはナイやろと時にツッコミながらも、撒かれた種があちこちで芽吹くんですもの。すべてが必然に向かって邁進するんですもの。ドラマとしてあまりにも面白いので、むしろ虚実をどう絡めてどこにすっ飛んでいくか、を予想するのが楽しみにもなってます。今の時点で、初の平安大河としては大成功と言ってもよいんじゃないでしょうか。
 ただ私、今でも道長と紫式部の関係は主従の域を超えていなかった(=恋愛関係なし)との考えは変わってない。ドラマを手放しで楽しむのと、歴史的事実を踏まえ考察して楽しむのとは、両立できると思う。だって全然別ものだし。それはそれこれはこれ。別世界線てやつですよ。
 話変わりますが遂に入内した藤原彰子!いいですねー。二十代の帝に「私のような年寄りは」とか言わせちゃうそのあどけなさ、まさにピッタリ。役をやっていらっしゃる見上愛さんの「頭では色々考えてはいるが言葉として出てこない」演技、素晴らしいです。不安げな、頼りなげな表情をしつつも気品と芯の強さをも窺わせる、なかなか出来ることではないです。

 それと入内の際に彰子が乗った「輦車れんしゃ」!(この読み方初めて知った!全部てぐるま、かと思ってた)なんかサラっと流れていましたが、かなりかーなり手間かかってますよコレ。 

 この辺私がイメージするのは、源氏物語でいうと女三の宮の降嫁ではなく、やはり明石の姫の入内なんですよね(「藤裏葉」)。姫と紫上は輦車、実母である明石の君は徒歩。華やかながらもちょっと切ないシーンです。
 そしてあの「屏風歌」。「前例がない!」と言って断った実資に、道長が屏風を見せるシーンありましたね。

 道長が権力を確立していくさまを印象づける、重要な場面はキッチリ押さえていく。その意味で実資役にロバート秋山さんを配したのは大正解だと思います。こういうところに今大河の人気の秘密があるんじゃないかなあ。
 というわけで今週も堪能いたしました。来週も楽しみ♪ですね!ちょっと怖いけど!
<つづく>

「文字として何かを残していくこと」の意味を考えつつ日々書いています。