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大河「光る君へ」(36)待ち望まれた日

 何だか急に秋になりましたね。人生でこれほど秋の涼しさが有難いと思ったことはありませんでした。秋サイコー!!!もう一年中秋でいい!!!
※「源氏物語を読みたい80代母」のための企画です。最終回までこの形式で続ける所存。思いっきりネタバレ全開なのでご注意くださいまし。
お喋り役の平安女房ズは以下:
右近(右)、侍従(侍)、王命婦(王)、少納言(少)

右「ねえねえ侍従ちゃん!!!」
侍「なあに右近ちゃん……っていつもと逆じゃん。どしたの?」
右「とぼけんじゃないわよ。道長っち何やってんの?自分からバラしていくスタイル?よりによって若君のおめでたい日にさあ。意味わかんないんだけど!」
侍「突然の道長っち呼び(笑)いやーーーやっちまったなあ道長くん!倫子ちゃん退場しちゃったじゃんねー?ヤッバヤバのヤバ!」
右「侍従ちゃんメッチャ嬉しそうじゃん。どうせあの二人が阿吽の呼吸で相聞歌めいたやり取りしちゃったもんだから『ひゅーひゅーラブラブ健在ヒャホー♡』とか思ってんでしょ」
侍「やだバレたー?まー平気じゃない?オメデタイ席で上司に歌詠め!言われたら断れないっしょ平安女房としては。実際どがつくハッピー満載モリモリなお歌だったんだし無礼講だしオケ!」
王「赤染衛門さんのお顔がこわばっていらしたわねえ。まひろちゃんが悪いわけじゃないけど、中々キツイ状況よこれ」
少「倫子さま……席を立たれたのは、あのお歌のやりとりのせいだけではなくて……まひろさんへの感謝のお気持ちは真実、心からのものでしょうが、一方では、ご自分だけでは娘の問題を解決できなかったという忸怩たる思いもおありで……あの五十日のお祝いでは、晴れがましさや嬉しさと同時に母としての悔しさも相まって、もういっぱいいっぱいになっておられたんじゃないでしょうか。色んな意味で感極まってしまったのでは」
右「明らかにトリガーよね、道長くんのあの手招きから後の展開。普通に気分よくはないわよ倫子さまからしたら。だいたいさあ普段からまひろちゃんばっか構いすぎ。ひとつ柱を背にしっぽり月見とかさあ、そりゃ女房は見た!になるし周りからやっかまれるに決まってるのに、ダメ押しみたいにあーんな大勢の人前であーんな目立つ真似しちゃってさあ……どうすんのこれ。もはや道長くん脇どころか全方位的に甘甘のガッバガバ。まひろちゃんを針のむしろに蹴り飛ばす勢い」
侍「えー、だーいじょーぶだよー今のまひろちゃんなら。赤染衛門姐さんにも
『雇用主のニーズに最大限答える、が私の務めですから。ええ、もちろん道長さまのことは好きですよ?私の物語執筆のため、高価な越前和紙を湯水のように供給してくださる大スポンサー様ですもの』
くらい言いそうジャン☆」
右「いやいくら異世界平安大河でもそうは言わんでしょ」
王「今のまひろちゃんは確かにたくましくはなったけど、創作沼にドップリ漬かりすぎて周りが見えてない感あるわね。今までさしたる修羅場もない状態でここまで来たけど、いよいよかしら」
少「次回予告で『三十三帖』というワードがよぎっておりましたわね。ということは藤裏葉まで書かれたということ。夕霧さまが首尾よく恋を成就させ、ヒカルさまが頂点に昇りつめる。そこからの『若菜上』……現実とまさにリンクしておりますわ」
侍「やっぱり来週も嵐のヨカーン♪♪♪」
右「侍従ちゃんやっぱり嬉しそう……(怖)」

 はーーーーー、彰子さまのご出産、今大河屈指の名シーンでしたね(何回目)。白装束の彰子さまと母・倫子さま・側近女房ズ、その周りを取り囲む女房ズにふりまかれる米、坊さんたちの加持祈祷、寄巫よりましの阿鼻叫喚。あーこれ源氏物語でも観たやつ!「紫式部日記」のアレが実写にするとこうなるのねサイコー!!!となりました。倫子さまの「うるさいこと」というセリフも秀逸、マジでうるさかったし(笑)「もうイヤー!!」と叫びたくもなるわアレじゃ、落ち着かないじゃん。ただ考えてみれば、やんごとなきお方でも心おきなく叫んだり喚いたりうめいたりできますねあの騒音の中なら。実は配慮なのか?(違)何にせよ運頼み、神頼みしかない時代の出産はまさに文字通りの命がけ、一か八か。大騒ぎしなきゃやってらんなかったのかもですね。母子ともにお健やかで何よりでした。
 そして「紫式部日記」にこれまた克明に書かれている五十日の祝宴。映像の力がここでも如何なく発揮されましたね。これも名シーン(何回目)。公卿たちのあられもない酔っ払いっぷりには笑いました。公任の、
「此方に若紫はおいでかな?」
のセリフからの
「光源氏のようなお方がいないのに、若紫がいるわけないだろ(意訳)」
という超絶イケメン相手に超絶無慈悲なバッサリ切り返しbyまひろ、からの道長手招き~相聞歌~倫子退場までの流れはあまりに嵌りすぎてて呆気にとられちゃいました。道長よ……(溜息)。
 ドラマの道長は
(アッ公任が俺のまひろにちょっかいかけてやがる……くっそー、こっち呼んじゃえ)
 的な脇甘アホムーブでしたが、実際の道長にしても孫のお祝いではっちゃけて調子に乗り、物蔭に隠れてた紫式部たちを見つけて
「歌詠め、詠まないと許さん」
 などと絡んで無理やり詠ませたようだし、妻の倫子にも
「俺を夫にしてよかったろ?」
と口走ったりもしてるので、どっちにしろ単なる酔っ払いですねこの日の道長は。ともあれ、物語を書く人ならではの視点とイメージ力でしっかり書き残してくれた紫式部には大感謝です。面白かった。
 さて来週は「若菜」よろしく、世代交代の波がひたひたと押し寄せるのでしょうか。源氏物語は描かないという大河だけど、しっかり流れは源氏物語だよなあ。いよいよ終盤になだれ込んでいく……あああ寂しい(早い)。
<つづく>
 



「文字として何かを残していくこと」の意味を考えつつ日々書いています。