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大河「光る君へ」の予習と復習と単なる趣味のために読んだ本

 白熱のパリ五輪に明け暮れるうちに盆休み突入、よーし大河もお休みだし記事いっぱい書いちゃうぞ♪と呑気に構えていたら、エッそんな暇どこにあるんすかという感じで。有言実行をモットーとするアテクシ、だからといってこのまま何気にスルーするには気持ちが収まりません。ということで、直近に読んだ平安本とその感想を載せておきます。

「紫式部と藤原道長」倉本一宏
 此方は以前にも紙の件でマイ記事にチョロっと取り上げた本。著者は言わずと知れた「光る君へ」の監修をつとめておられる倉本先生。大河が後半にさしかかった今パラパラ読み返すと、ドラマで何が取り上げられているかいないか・どうアレンジされてるか、がよりはっきりくっきり見える。色々(意味深)苦労されただろうなというのも窺える。
「ここまでは史実であるという紫式部と道長のリアルな姿を、明らかにしていきたい」(「はじめに」より)
 倉本先生曰く、日記や古記録に没頭していると、その時の書き手の気持ちまでも理解できる瞬間があるそうな。史実を拾い上げつつストーリーを組み立てていく作業と、書いてあることに集中して論を組み立てていく作業、内容も方向性もまったく違うんだけどただ一点「その時代を生きた人の心に触れたい」という望みは同じなのかもしれないと思いました。

「平安貴族とは何か」倉本一宏
 続きましてまたまた倉本先生の著書。帯には「道長は危ない勝負師だった!」などとデカデカと書かれてる(笑)内容は全然そんなじゃないのですが……ご本人もこれには苦笑されてた。
 こちらは「古記録」とはなんぞやということと、今大河の舞台となった時代の三大古記録ともいうべき「御堂関白記」(道長)「権記」(行成)「小右記」(実資)についての本。考えてみれば同じ時代に同じ宮中で働いていた三人の日記が残存している(量も半端ない!)ってスゴイことじゃないでしょうか。儀式や催し事、政治的な手順や決め事の詳細な記録は、写真もビデオもない時代には唯一の拠り所。情報は力なり、は昔も今も同じなんだと実感します。

「平安京の下級官人」倉本一宏
 倉本先生の本で一番最初に読んだ本(これも以前記事にチラっと書いたかも)。上記にあげた日記は「儀式や政務を後世に伝える」史料という性格上、どうしても視点は身近なところ・内裏での出来事に向いてしまいがちなのだが、それでもいくらか下級官人や庶民の暮らしが窺える部分もある、ということで此方も大量の参考文献をもとに書かれている。これ読むと平安時代は大きな戦争こそなかったにしろ、道路は不潔で治安も悪い、自然災害疫病多数、かなりバイオレンスでハードな時代だったとわかる。貴族なら安泰かといえばそうでもない。何なら宮中にも強盗入るし放火もされる。ネット上では「平安貴族は和歌詠んだり楽器演奏したり優雅に暮らして~」という意見がまだ根強いけど、その「優雅さ」を演出するためにどれだけ多くの人の手がかかっているか。前例をつぶさに調べ手順を精査し割り振りしてまとめ上げ実行に至らしめる立場にある貴族たちの心労たるや、と想像すると涙を禁じ得ない。いやー超ブラックですわ。

「源氏物語のリアル」繁田信一
 此方はそのバイオレンスな平安時代を踏まえた上で「源氏物語」の登場人物のモデルとされる(と思われる)人物を紹介。かなりくだけた感じで気楽に読める。ただ、個人的には「源氏物語」は誰がモデルなのか容易にはわからないようよくよく巧妙に描いてると思う。この本の最後にある「源氏物語のアンリアル」に列記されてる項目からしても、確実に紫式部は「何を書く・何を書かない」をキッチリ決めて守り通していた気がする。

「孫の孫が語る藤原道長」繁田信一
 同じく繁田さん。此方は道長の「孫の孫にあたる藤原忠実の談話集『中外抄』『富家語』」からの本。当然のことながら直接見聞きしたのではなく、家に伝わった話をまとめたもの、らしい(それでもすごいが)。世代を超えたまた聞き話ではあるので、どの程度信憑性があるのかは疑わしいものの、読み物としては非常に面白い。
 繁田さんの本には「殴り合う貴族たち」というのもあってこっちも読んでみたい。

紫式部本人による現代語訳「紫式部日記」古川日出男(2023)
 古川さんは「平家物語 犬王」の作者。大胆な現代語訳に初めは少し戸惑うものの、この独特な世界観にすぐ慣れてすいすいいける。確かに男性の日記(古記録)とは全然違う、不可思議な日記なんだよなあ。他人に見せること前提と考えるとますます謎。彰子の出産周りの話は命じられて書いた感満々だが(ちゃんと記録になってる)その他はよくわからない。この本の中で、具体的な時期や日時を「くさび」としているところ面白かった。それでいうとほとんどの記事に「くさび」はないんだわ。
 紫式部自身が入念に選別しているとすれば(やってそう)、残されたものにはきっと残すなりの理由があるんだろう。書き写した人の意図もあるから何とも言えないが。

 えーとひとまずこのくらいでしょうか。ちなみに「権記」「小右記」はビギナーズクラシック(抜粋版)で持ってる。抜粋版でも相当の量なので、全記録を精査してらっしゃる学者の皆様はどんだけかと。超人すぎ。
 また何か読んだら載せます(多分)。さあ今日は久々の大河!楽しみです!

「文字として何かを残していくこと」の意味を考えつつ日々書いています。