少女の君が好きだった。

長いツインテールに大きなリボン、フリルの着いたワンピース。真っ黒な瞳にピンク色のほっぺた。
いつまでも、少女のままでいてほしかった。

君が春を売っていると知った時、僕は特に驚きもしなかった。少女であることに価値を見出していた君が、少女であることにしか価値のつかない場所にいると知った時、ああなんて君らしいんだ、とまで思ってしまった。

君は少女を売る度に、僕をデートに誘ったね。お決まりの格好、お決まりのあの店、お決まりの苺クレープ。帰りが近づく度にわんわん泣きわめいて、僕の家に泊まるところまでもお決まりだったね。おかげで僕の部屋には無数に甘いピンクが散らばっていたよ。

君とお風呂に入る時間が好きだった。狭い浴槽をピンク色に染めて、浮かび上がるおもちゃにああまたこの子だったよって残念そうに呟く君が。すぐにのぼせてしまう僕をにやにや笑って見ている君が。僕の部屋に並ぶ小さな小さなおもちゃを見る度、君を思い出して愛おしい気持ちになっていた。

明日はなにしよっか、って名残惜しそうに眠りにつく君を見て、色々なことを考えていた。
君はいつまで少女のままでいてくれるんだろうか。もうすでに僕以外にも少女を魅せている君が、いつまで僕のそばにいてくれるんだろうか。

長いまつ毛、苺柄のパジャマ、解かれた黒い髪。どこまでが君で、どこまでが君じゃないんだろう。

週末もまた、春を売りにゆくのだろうか。少女でいることが求められる場に、本物の少女はいない。白く濁ったいびつさの掃き溜めのような場所に、君は何を求めているのだろう。

いつまでも少女でいてくれたら良かったのになあと思いながら、僕も眠りについた。

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