見出し画像

母になるということはアレを人前で出す強さを持つことだ ー子育てフリーランス10話ー

フリーランスイラストレーター歴12年のカワグチマサミが、妊娠・出産・育児と夫の関係に向き合い、試行錯誤しながら「いい感じ」の働き方にたどり着くまでの赤裸々エッセイ。著書「子育てしながらフリーランス」の原作。火・金更新!

前回のお話。

妊娠中に低置胎盤と診断され、妊娠後期はお風呂とトイレ以外は歩けず、フリーランスで積み重ねてきた仕事も全て断り、落ち込んでいたカワグチ。


しかし…

ー最終検診日ー


最終検診日、なんと低置胎盤ではないと言う診断を受けました。
お腹が大きくなるにつれて、胎盤が本来あってはならない場所から移動したそうです。


「出産は生まれるまで何が起こるかわからない」

これほど実感したことはありませんでした。







それから私は、産後に仕事復帰ができるよう、ポートフォリオやホームページ作りを始めました。

お断りした週刊誌の編集さんにも連絡しました。




すると…



なんと、初めて雑誌の連載を依頼されました。



妊娠中、仕事がなくなった私は、喉から手が出るほどの嬉しいお話で、すぐにお返事しました。

……この時はまだ、産後に何が待っているのかを、私は知らなかったのです。



それから数週間後




私は赤ちゃんに会うため準備を始めました。

​生まれる前から、夫と赤ちゃんの名前は決めていました。
お腹にいる頃から、「ソーちゃん」と、名前を呼んでずっと話しかけていました。

それはそれはもう、躊躇いなくベラッベラ話しかけ続け、アスリートなみに出産のイメトレをしていました。
側から見たら怪しい人だと思います。




その気持ちが赤ちゃんに伝わったのか、不思議なことに、
土曜日の朝に陣痛が来ました。


「ズキン……………………ズキン……………………」




病院に電話をして確認すると、
「陣痛が15分置きになったら病院に来て下さい」と言われました。

この時の陣痛の痛みは、少し重い生理痛くらいでした。


「出産前に焼肉を食べたくなる」と言う噂がありますが、私の場合、本当でした。

陣痛が始まってから、急にお肉が食べたくなりました。
やはり本能的に、命を産むと言う大イベントに体が肉を欲していたのかもしれません。

ステーキを平らげて、家でゆっくり過ごしました。

そして夜を迎えた頃…

「ズキン……ズキン……」


陣痛が15分感覚になりました。

タクシーを呼んで、夫と一緒に病院へ向かいました。



記念撮影ができるくらいの余裕がありました。

病院について、診察してもらうと…


本格的な陣痛が始まるまで、待合室と言うところに通されました。
そこには、一人のママがいました。


同室の妊婦さんは、すでに陣痛が来ている状況で、
私の入れ替わりとともに分娩室に向かいました。






ーと、思っていた数時間後ー










ついに私も本格的な陣痛が来ました。

数時間前に比べると痛みの感覚が短くなり、比べようにならないくらい大きくなりました。

痛みに狂う私の横で、うろたえるしかできない夫…。




正気ではいられない痛み…!

助産師さんが駆けつけてくれました。




担当の助産師さんは、「前世天使してました?」と思うくらい、優しい人でした。

不思議なことに、天使の助産師さんに声をかけられるだけで痛みが和らぎました。


しかし!

そんな時間は長くは続きませんでした。

なぜなら…!


この日は出産ラッシュで、天使は忙しく、妊婦で取り合い状態!


天使が去ったと、夫が、助産師さんの真似をして摩ってくれましたが…

痛みは和らがない!!



この痛み…!この痛みを例えるならぁ…!


ハンマーで腰を殴られてるような痛み…!




あとは他にもそうだな…

橋から落ちたり、車にぶつかったり…あ、みんなはそう言う経験あんまりないかな?

骨折した時のMAXの痛みは、長く続くことはないと思います。
それでも痛いし、辛いし、大変だけど。

しかし!出産の痛みというのは…


「「いつ終わるのかわからない!!!」」

と言う、不安が大きいのです…!

痛みで悶えていると、夫が申し訳なさそうに言いました。



この瞬間、痛みの中で私は閃きました。

これはチャンス…!
今なら願いを叶えてもらってもいいのではなかろうか!

それほどの痛みを今、私は乗り越えているところなんだから!

私は想いを叫びました。



って、夫は答えるしかないですよね!

陣痛中なんですから。

まぁ、実際には無理な話かもしれませんが、出産中、夫が立ち会ってくれる時は、ちょっとしたワガママを叫ぶのもいいかもしれません。
普段言い辛いことも、痛みのテンションで言えちゃうかも。


さらに、陣痛はクライマックスに…!


お昼に食べたステーキを全部吐きました。



ついでに破水しました。

さらにトイレに行きたくなりました。


赤ちゃんを出す前に、色んなものが出て行きそうになりました。


うんこか、赤ちゃんか、確信が持てない私に天使は微笑んで…






病院によっては事前に浣腸するところもあるとか。

天使のような助産師の言葉で、私は母として覚悟ができました。

「「母になるということは、「うんこ」を人前で出す強さを持つことだ。」」


私の中で、大切な、いや、大切だと思っていたけどそうでもなかったようなものが崩れた瞬間でした。

これが「母の強さ」と言うものなのでしょうか。


ズッキン…ズッキン…ズッキン…ズッキン…!!!

痛みは激しくなり、夫と助産師さんにひきずられながら、分娩室に入りました。


ずっとお腹の中にいたソーちゃん。

お腹の中は安心だっただろうに、今、外にでようとしてくれてる。







この時、すでに子宮口全開!

しかし!医者も忙しく、他の人の分娩の最中で、不在のまま…!

医者が来るまで、分娩室で待つものの…




もう、出る!!!

出る出る出る!!!!!




その瞬間、隣の部屋から医者が飛び込んできて、ハヤテの如く消毒をし、
勢いよく生まれた私の子を取り上げてくれました。


痛みも我慢も限界で、赤ちゃんは勢いよく、生まれ飛び出てきました!





生まれた赤ちゃんは、とっても小さくて…



可愛くて、涙が出ました。

隣で、夫も涙ぐんでいました。

これはとんでもないことです。

夫はあまり感情を出さない人で、彼が泣いたのは、丹波哲郎主演の「砂の器」を見た時以来。


それくらい、赤ちゃんと出会えたことに感動してくれたんだと思います。

助産師さんが、赤ちゃんを胸元に連れてきて抱っこさせてくれました。



その瞬間…

さっきまで泣いていた赤ちゃんが、私に抱かれた瞬間、泣き止みました…。




この時、息子に「あなたが僕のママだよ」って言ってもらえた気がしました。



赤ちゃんを産んだ瞬間に、陣痛の痛みはなくなりました。

出産って、不思議です…。


まるで数ヶ月に及ぶ便秘が解消されたような爽快感…!

ごめんなさい。例えが他に思い浮かばない。


だけど、私の場合、勢いに任せて産んでしまったので、股が裂けてしまい、結構、縫われました…。


助産師さんの言うことをちゃんと守ればよかった…。


でも、大丈夫!

陣痛に比べたら気にならないくらいの痛みでした。いやちょっと気になったけど。
大イベントの後なので、感覚も麻痺してるのかもしれません。

そのあと、少し休んでから、入院する部屋に移動しました。


その時、助産師さんが声をかけてくれました。

え…………………

え…………………???




妊婦さんの中には、陣痛が二日以上も続いて痛みで気絶したり、
自然分娩で陣痛を体験した後に帝王切開になることもあると聞きました。

どうなってるんだ!出産!!

子どもを連れて歩いてるお母さん、一人一人に、出産ドラマがあると思うと感慨深いです…。

命を産むって大変すぎます。

どんな出産でも、お母さんは命がけ。
それは間違いないのです。

しかし、その「大変さ」は産んだら終わりではなかったのです…。


つづく

読んでいただきありがとうございます!今のカワグチだよ〜!

今回は生々しい出産レポでした。

怖がらせてしまったら、ごめんなさい。
でも私の体験談としてリアルに書きました!

私は、自然分娩で産みましたが、妊娠中、低置胎盤だったので直前まで帝王切開で産む予定でした。
母子ともに危険な可能性もありました。

なので、色々調べたんですけど…

自然分娩も帝王切開も、どっちも痛い!!!
自然分娩は陣痛が痛いけど、帝王切開は産んだ後が痛いし、 中にはどちらも経験される方も…。
和通や無痛分娩も、痛みは和らぐかもしれませんが、妊娠中の辛さは変わりません。

だからつまり…

どんな出産も大変やな!!!!!
どこのお母さんも頑張ってるよな!!!!!


街を歩けば、お母さんも子どもたちもたくさん歩いています。
自分の親も自分を産んだわけだし、周りの友人も出産してる人がいます。

なので、どこかで、「妊娠、出産って当たり前」って言う意識があるんじゃないでしょうか。

私は、正直ありました。 舐めていましたよ!妊娠出産を!!
みんなが経験してることが、「当たり前」なんてことはないんです。

みんなが当たり前じゃないことを頑張ってるんです。

お母さんはみんな、痛みやストレスと闘う武士なんだと、私は思うようになりました。だからこそ、育児だけじゃなくて好きなことをして生きて欲しい思いがあります。

そう言う思いもあったから赤裸々に書きました!
ウンコも書いた!

ウンコが出たとか、やっぱり出たとか、どうでもよくなるくらいに価値観が変わったってことです。
ここは個人差があると思いますが。

特に「誕生日」の価値観。

誕生日って、本人が生まれただけじゃなくて、その人のお母さんが頑張って産んでくれた日でもあるんですよね。

それに気づいて、母に「ありがとう」って伝えたことがあるんですけど、

超険しい顔で
「あんた4kg近くあって産むのマジでしんどかったわあああ!!」
って怒られました。

生まれた時、私太りすぎて、おむすび太郎みたいな顔してたんですよね。

次回からようやく、息子のソーちゃん(今9歳)も登場します!
ソーちゃん、私の漫画を読んでるんですが、「ウンコ」のくだり腹抱えて笑ってました。

じゃあ、またね〜!

カワグチマサミ(ほぼここにいます


トークイベント【仕事と家庭を大事にするための失敗談】
2022年3月1日(火)18:30 ~ 20:00
参加費無料、アーカイブあり、会場書籍販売あり
会場(KOIN 京都経済センター3階)orオンライン


子育てしながらフリーランスで「いい感じ」で働くための赤裸々エッセイ+仕事に繋げるためのハウツー本「子育てしながらフリーランス」出版。

子どもと親の自己肯定感を高める、「子育て言い換え事典」(KADOKAWA)出版。



サポートしていただいた売り上げは、新しく面白い漫画を描くための活動資金とさせていただきます。いつも漫画や記事を読んでいただき、本当にありがとうございます!