鍛冶屋の仕事 Vol.2|鍛冶屋の打つ道具。日本を日本たらしめるもの
鉄を赤めてたたく。そうして作られた道具を当たり前のように使っていたのは、ほんの数世代前のことだった。
どこの町にも1軒や2軒は鍛冶屋があって、例えば包丁を作らせたら○○鍛冶屋、農具をあつらえるなら○○鍛造工房と、鍛冶屋がしのぎを削りながら地域の人々の産業や生活を支えていたものだ。
――と、書いてはみたものの、昭和の晩期に生まれたぼくは、鍛冶屋が奏でる鎚音を聞いて育ったわけではない。ただただ、ぼくの住む町・兵庫県小野市の、そこで鍛冶屋を続ける先達に、その懐かしい時代の