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人の裁きより、天の裁き【きまぐれエッセイ】

天道が積極的な事を何もなさずして、しかももらすところなく何事をもなしておることを述べている。

[諸橋轍次]

ある正直商人(あきんど)の末路

正直者がバカを見る時代を生きのびてきた正直者の商人が、正直(まじめ)に生きることがだんだんバカバカしくなってきた。

なぜなら、詐欺まがいの売り込み口上でどんどんモノを売って儲けている同業他社に比べてうちは昔ながらの商売のやり方をしているのに売り上げが上がらないからだ。

こんな世知辛い世のなかでキレイゴトはいっていられない。
生きるためには多少のチョンボも仕方ない。

インチキ商売をやっている輩に倣って、いつしか自分にも他人にも不正直に生きるようになった。

かくしてこの元正直商人の末路は悲惨なものであった。

道(タオ)に反した生き方をしているうちは何をやっても上手くいかない。

人の裁きより天の裁き

翻って、個人の生死から国の興亡まで、全て天道によるものであるから、人間の知恵では推し量れないものなのである。

天のはたらきは、何もしないようであるが、実はすべてを見通している。
誰もこの天の網から逃れることはできない。


敢えてするに勇なれば則ち殺、敢えてせざるに勇なれば則ち活。
此の両者は、或いは利、或いは害。
天の悪む所は、孰れか其の故を知らん。
是を以て聖人は猶お之を難しとす。
天の道は、争わずして善く勝ち、言わずして善く応じ、
召かずして自のずから来たり、繟然として善く謀る。
天網は恢恢、疎にして失わず。

[老子:第七十三章任爲]


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