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偉大なるデクノボー【きまぐれエッセイ】

偉大なるあらきへの道
素朴デクノボーへの回帰

世の中には、柔らかな力というものが存在する。これは、言葉の響きからは想像もつかないが、その実、硬い鉄をも捻じ曲げるほどの強大なエネルギーを内包しているのだ。あたしはそんな力に憧れを抱く。ちょうど谷間に集まる水のように、自然に蓄えられる力。それは、無駄を省き、必要なときにのみその威力を発揮する。まるで静かな湖が嵐の中で驚くべき勢いを見せるように。

柔弱に見える者が、実は最強の戦士であることを知っている人は少ない。強さとは、単に筋肉の塊であることではない。内なる闘志を秘め、外にはその姿を見せぬまま、慎ましやかに生きる。これは、水のような生き方だ。谷間を流れる水は、やがて大河となり、どんな障害も乗り越える。その力は柔らかで、同時に強靭だ。

本当に強い者は、他者に対して優しいものだ。自分の強さを誇示する必要がないからこそ、穏やかな態度で接することができるのだ。正義と潔白を理解しながらも、汚れた世界に身を置く。それは、清濁併せ呑む生き方であり、どんな試練にも動じない強さを育む。

あらきのような存在は、無限の可能性を秘めている。製材される前の素朴な木材、それは使い道が限られない。その一方で、割り箸のように一度限りの使い捨ての人生もある。割り箸がしゃもじになりたかったと嘆くこともあるだろう。しかし、その役割を全うすることにこそ意義があるのだ。

デクノボーのように役立たずとされる存在も、実は大切な意味を持っている。誰からも使役されない自由を持つがゆえに、いざというときに本当に役立つ。床の間の柱や仏像となって、皆から尊敬され、拝まれる存在になることも重要だ。

だからこそ、あたしは思う。デクノボーのようにただ怠けているだけではなく、たまには自分を削って、世の中の役に立つことをしようと。割り箸や薪のように、自分の存在を少しずつ捧げることで、社会に貢献することができる。

どうぞ、皆さんもなまけゴコロに負けず、少しでも自分の力を発揮し、世の中の役に立つ存在になってください。さもなければ、無駄に過ごすだけの人生となってしまうでしょう。


知其雄、守其雌、爲天下谿。爲天下谿、常徳不離、復歸於嬰兒。知其白、守其黒、爲天下式。爲天下式、常徳不忒、復歸於無極。知其榮、守其辱、爲天下谷。爲天下谷、常徳乃足、復歸於樸。樸散、則爲器。聖人用之、則爲官長。故大制不割。

そのゆうを知りて、そのを守れば、天下の谿けいる。天下の谿けいれば、常の徳は離れず、|嬰児えいじに復帰す。その白を知りて、その黒を守れば、天下の式《のり》とる。天下ののりれば、常の徳はたがわず、無極に復帰す。その栄を知りて、その辱を守れば、天下の谷とる。天下の谷とれば、常の徳はすなわち足りて、ぼくに復帰す。ぼくさんずればすなわうつわとなる。聖人はこれを用いて、すなわち官の長とす。ゆえ大制たいせいかず。《老子第28章》

雌牝=女性的な柔軟、柔弱さ
谿谷=谷間の謙虚さ
嬰児=みどりごの素樸、純真さ

#川越つばさの気まぐれエッセイ #創作大賞2024 #エッセイ部門 #エッセイ

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