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【自然環境部会コラム】自然を訪ねて(7)自然環境保全のために生物多様性有機農法をめざそう!

今、農業が環境破壊を起こしています!

 「亜酸化窒素(N₂O)」は、二酸化炭素(CO₂)の実に300倍を超える温室効果をもたらすと言われており、このことは大きく農業に由来しています。

 図-1 は、亜酸化窒素の人為的な発生の内訳で、農業による発生量が実に全体の59%で最大を占めており、化学肥料によるものが約32.0%(図-2)と報告されています[1]。

IPCC第5次報告書に基づくN₂O発生内訳(2006/2011時点)[1]
出典:IPCC 第5次報告書(2014)記載のデータに基づきNEDO 技術戦略研究センター作成(2021)
農業分野におけるN₂O発生内訳(2017)[1]
出典:FAO 公表のGHG インベントリに基づき NEDO 技術戦略研究センター作成(2021)

 この膨大な量の亜酸化窒素の発生源は、農業活動において大量に使われる化学肥料のアンモニアに由来するもので、その使用過多が大きな要因となっています。そこで、この亜酸化窒素を抑制することが地球温暖化を防止する上で世界規模での研究課題になっています。抑制のカギを握るのが土壌バクテリアと言われています。土壌の健全化が地球の温暖化を抑制する大きな役割を担うと言っても過言ではないでしょう。2021年5月に国連総会議長のボズクル氏は「微生物に懸かる人類存亡」の危機として、土壌を守るために何ができるかを考え行動しよう!と語っています。

土壌バクテリアによる土壌の健全化

 そこで、かわごえ里山イニシアチブでは日本薬科大学の高野研究室と連携して、私たちが長年農薬も化学肥料も使わない米づくりをしてきた川越市福田の田んぼの土壌バクテリアを解析してもらった結果、実に56種におよぶ土壌菌が発見され、多様な土壌バクテリアのコミュニティや肥沃度合いが示された結果となり、土壌の健全化につながっていることがわかってきました。

 さらに、興味深いことは、マメ科植物の根には根粒菌が共生しており、窒素化学肥料を必要としないで済む2つの主要な土壌バクテリアが最近の研究で特定され、これらが福田の土壌においてもしっかりと見つかりました。

 このことは、レンゲなどの緑肥が、化学肥料を田んぼに施肥しなくても窒素固定をするバイオシステムが土壌に備わっていて、亜酸化窒素の発生を自然と抑制していることを示唆しています。

地球温暖化防止の観点からも生物多様性の有機農業を

 土壌の健全化は、土壌菌のバランスを保つために多くの土壌バクテリアのコミュニティ形成が必要で、土壌環境もヒトの健康に重要な腸内環境も地球環境と同じだと言われています。地球温暖化防止の観点から、今、生物多様性の有機農業に舵を切らなければ人の健康も地球環境も守れないと言っても過言ではないでしょう。

(増田純一)

出典[1]:温室効果ガスN₂Oの抑制分野の技術戦略策定にむけて,技術戦略研究センターレポートTSC Foresight Vol.105, 2021.6


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