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そうだ、京都へ行こう、と思い立ち、「むしむしセット」を食べた話。

 思い立って、京都へといってきた。発作的に行きたくなるのが京都だ。あの歴史と地続きの街に浸るだけで、ゆったりとした気持ちになる。その週末、日本海側で大雪が心配されたが、思い立ったら止められない。あの人にも会えるなぁ。ウォーホル展もみなきゃ。鴨川のランニングも魅力的だなぁ。脳内ではもう京都はんなり散歩状態だ。

 えい、と心を決め、新幹線に飛び乗った。

 京都は極寒だった。さすが盆地。今年一番の冷え込みだという。街ゆく人はダウンにマフラー、ニット帽子を深々とかぶって完全防備である。ジャンパーの首元から冷気が染み込んでくる。前からネットで目をつけていたダウンマフラーを買おうと、デパートに飛び込んだが、売り切れていた。

 お昼ご飯をどうしようか。

 にしんそばととか、カレーうどんとか、京都にはパワーメニューがたくさんある。ぐるぐると考えを巡らせながら、四条河原町をぶらぶらする。

 それにしても寒い。なんとかして身体を温めければ。

 そこで思い出したのが、「むしむしセット」。

 その名前の強烈なインパクトたるや。平松洋子さんと姜尚美さんの往復書簡をまとめた「遺したい味」というエッセイ本で読み、ずっと食べてみたいと思っていた。「むしむしセット」って最高のネーミングですよね。ちらし寿司をホカホカに蒸して食べるなんて考えただけで身体がポカポカしてくる。しかも季節限定で、冬の時期しか食べられない。
 人並みをかき分け、たどり着くと奇跡的に席が空いているという。

お店の名物「ちらし寿し」を蒸した「蒸し寿し」
むしむしセットについてくる茶碗蒸し

 注文して10分ほどで「むしむしセット」がやってきた。アナゴにゆりね、錦糸卵、銀杏、エビ、椎茸などがはいったちらし寿し、これが蒸されていて、蓋をとると、ふわっと湯気とともに、甘いお酢の匂いが立ち上る。ほおばると、口の中にじわっと旨味が広がる。食べ始めると止まらなくなり、あっというまに完食した。

 実は、この蒸し寿司、ただちらし寿司を温めているだけでないらしい。蒸すことによって味がより立ってしまうので、ちゃんと味の調整をしているのだという。京都の厳しい寒さが生み出した、ささやかな贅沢だ。

 蒸し寿司と茶碗蒸しのおかげで身体がポカポカになる。

 ひさご寿司の「むしむしセット」は12月から2月末までの限定メニュー。

  翌日、早起きして、南禅寺を散歩していたら雪がちらついてきた。空気が凛としていて、気持ちが引き締まる。

南禅寺の門だったと思います
こういう日常が京都の真骨頂
砂利の道を踏み締めるのは心地よい
疏水の水路橋のつらら

 それから京セラ美術館でウォーホル展をみて、大切な人たちとランチして、京都駅でお弁当を買って新幹線に乗る。

 ずっと同じ場所で仕事をしていると、なにか「型」にはまってしまう気がする。新しいアイデアを生み出すには、新しい刺激が必要だ。思い立ち、京都にでかけて「むしむしセット」をいただくだけでも、脳がブルッとふるえて動き出す。それにしてもあれは美味しかった。

 今やWi-Fiさえあれば世界中どこでも仕事ができる。今年もいろんな場所にいって、その季節にしか食べられない、その土地の味をいただきたい。そして大切な人たちにあって、いっぱい話したい。

平安神宮の鳥居は京都に行く度に撮っている気がする

 ちなみに今回、「京都で何を食べたらいいか」をFacebookで聞いてみたら、たくさんのグルメ情報が寄せられた。みなさん、京都がお好きなんですね。それはそれで今度、まとめますね。

 それとこの本、めっちゃおすすめです。東京と京都の派手さはないけれど、味わい深いお店がたくさんでてきます。平松さんと姜さんのいい意味で力の抜けた文体にも心がほっこりします。


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