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書籍「強迫性障害からの脱出」を読んだ感想

書籍名:強迫性障害からの脱出
著者名:リー・ベアー
翻訳者:越野好文、五十嵐透子、中谷英夫
出版社:晶文社
単行本:351ページ
発売日:2000年12月

OCDの治療者として国際的に有名な著者による書籍。初版は2000年となっているが全く古さを感じない。訳文も読みやすく内容を理解するのが難しくない。
本書は行動療法のエキスポージャーと反応妨害を実践して強迫性障害を治療していくための予備知識や具体的な方法を解説したものとなっている。

第1章では強迫性障害とはどんな病気なのかについて解説している。この解説は他のOCDに関する書籍とだいたい似たような内容となっており、他にも同類の書籍を読んでいる人にとっては復習程度の読み物となるだろう。

コントロールできるのはあくまで行動だけ

第2章では強迫性障害の治療方法について解説している。
ここでは特に行動療法について詳しく解説しているが、行動療法の原則について以下のように述べている。

<コントロールできるのは行動だけ>
まず定義をはっきりさせよう。行動とは、あなたが行っているのを他の人が観察できる行為である。
・・・中略・・・
ストーブを一回だけ消し、その確認のために戻らないという宿題が割り当てられたなら、宿題はそのことだけだとわたしは患者に説明する。すなわち、もしストーブを一回だけ消し、その後確認しないならば、それを行っている間の感情や思考に関係なく、宿題は成功したのである。
引用元:「強迫性障害からの脱出」P.93

私はこの文章によってかなり救われた気持ちになった。
すなわち、強迫観念という名の衝動をコントロールすることができずに長年苦しんできたが、衝動や思考をコントロールしようといくら頑張っても、そんなことはできるわけがないということにここで気付くことが出来た。
これは私にとって非常に大きな気付きだった。

ここで述べられている通り、人間にとってコントロールできるのはあくまで行動だけであり、逆に言うなら行動だけは誰にでも常にコントロールが可能なのだ。
そして強迫観念という衝動に負けることなく、行動をコントロールし続けていくことができれば、やがて後から衝動や思考も行動に沿った形に変化していくのが行動療法の原則となる。

協力者がいれば成功の確率は高まる

P.100およびP.182によれば、行動療法が成功するかどうかについては協力者の有無による影響が大きいという。

誰かあなたの問題を理解している人が周りにいれば、儀式を行いたいという衝動に屈服せず、それに抵抗できるようになる。ため込み儀式を持つOCDの一人は、協力者が横にいて、やらないように励ましてくれる時は、ごみ箱のごみを取り出したいという衝動に抵抗しやすいと言う。
引用元:「強迫性障害からの脱出」P.182

強迫性障害の人は自分の病気のことを周りの人(家族にさえ)に隠していることが多いという。
この病気について一般的に認知度が低いこともあり、奇妙な儀式にとらわれていることを知られるのが恥ずかしいと感じているのかもしれない。

しかし、少なくとも協力をお願いする人には病気のことを知ってもらわなければならない。
また、行動療法に協力してもらうには協力者にもきちんとした知識を持ってもらうことが必要不可欠となる。まずは協力者にも、本書やその他のOCDに関する書籍を読んでもらうのが手っ取り早い。

ただ、行動療法の協力には根気や忍耐も必要になってくるため、中途半端な友人や同僚などでは人間関係がうまくいかなくなってしまう可能性がある。
そのため、家族に協力を依頼できるならそれが一番かもしれないが、誰に依頼するにしても、相手は慎重に検討したほうが良さそう。

まずは書籍できちんとした知識を身につけよう

私は、以前、強迫性障害の症状がとても酷かった頃、まずはきちんとした知識を身に付けたいと思い、この書籍やその他にも多数の強迫性障害に関する書籍を読んだ。
そして家族にも協力してもらって自分なりに行動療法に少しずつ取り組み、数年かけて症状はかなり改善した。

その中で自分に言い聞かせていたのは、たとえ、その確認行為をしなかったことによって、強迫観念の通りに将来何らかの大変なことが起きたとしても、一切後悔は無いということ。
行動療法でOCDを治療するためにやっていることなのだから仕方がないわけで、100パーセント今回の自分の行動を肯定できるし、これを責めることは絶対にないということだった。

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