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本から得た知識の価値は何冊読んだかではなく「どのくらい深く読んだか」で決まる。


タイトルの「決まる」とは、早い話が本から得た知識がどこまで自分の栄養になったかという意味です。
それには「何を何冊」よりも『何をどのくらい深く』読んだかのほうが、ずっと重要だと思うのです。

ここで言う本にはマンガや絵本も含めています。
『ワンピース(鬼滅の刃でもOK)のコミックスはもう何十回も読み返した』というひとのほうが、自己啓発本を何十冊読んだと自慢するひとよりも、よほど自分の心の栄養となる読書をしているはずだと思うからです。たとえば……

「腹の傷より、やられっぱなしで傷ついた俺の名のほうが重症だ!」

はい、これは誰の名言で、いつどこで言ったセリフでしょうか?
ワンピースファンには、これに即答してみせるひとがたくさんいますよね。

名言というのは、いつ、どういうシチュエーションで、誰が言ったかという部分にも影響されるものです。
ではこのセリフをどう考えるか。


読者A
「このひとは自分の名前にプライドを持ってるんだな」

読者B
「腹の傷なんか問題じゃない。やられっぱなしでこのまま退いたら俺の名折れだ!そっちのほうがよっぽど大問題だ!」


Aは言葉をそのまま、Bは(このキャラなら多分こう考える)という部分も含めて、作者がそのセリフに込めた意図を読み取るわけです(たぶん)
ちなみにこの「腹の傷」はかなりの重症だったはずです。

このBをワンピースのゾロファンだとすると、Aは本を毎月100冊とか、週に何冊読むこと自体にこだわるタイプだと思うのです。

Aの場合「このひとは自分の名前にプライドを持ってるんだな」という理解までで終わっておくからたくさん読めるのであって、そうでなければ到底、月に100冊は読めません。

が、ワンピースファンになると、そのセリフはコミックス何巻の誰のセリフで、どういうシチュエーションのシーンで…というふうに詳細を語るひともめずらしくありません。
そこにさらに本人の感想や解釈、キャラへの想いも加わります。

これはべつにどっちが正しいとか偉いとかを比べるものではありません。
知識は表面的にサラッと理解して、広く浅く吸収しておけばそれでいいと考えるタイプと、何ページの何コマめのセリフというところまで暗記し、関連部分もまとめて記憶するタイプとの、いうなれば選択と手法の違いです。

本の内容をテスト前の一夜漬けレベルの短期記憶にとどめておくか、はたまたいつでも取り出せる長期記憶として保管しておくかの違いという言い方もできます。

知識も記憶の価値も、当人が短期記憶で十分だと思うならそれでもいいわけで、何をどれだけ覚えておきたいのかには個人差があります。
ただ影響力という観点から『心の栄養』や読解力を養うためとするならば、すぐに忘れてしまう短期記憶よりも長期的な記憶のほうが、長い目で見れば価値があるように思われるのです。


ちなみにわたしはそこまで『ワンピース』のファンではないのですが、好きなセリフというか回というか、そこをアニメで観たら必ず泣いてしまうシーンがあります。


CM前のワンカット
『麦ちゃん達を、追わせはしない…』
これはダメ。何回観ても、もうCM前のこのセリフを聞いただけでウルウルきてしまいますから(ノД`)・゜・。

これを書いてる今も、元バロックワークスMr.2ことボン・クレーが、正義の門の開閉装置をぶっ壊すところから船の後ろで門が閉じるところまで、あのシーンをぜんぶ思いだすんですよね。

正義の門がどんどん閉まっていって、ルフィの『ボンちゃん…俺たちもう、行くよ…』も、最後の『必ずアニキ救ってこいよ〜〜ッ!!』までぜんぶ覚えてるのに、観るたび大号泣💦

そこなのか?ワンピースにはもっと他に名シーンがあるだろう?というひとは、ボン・クレーというキャラの真価を正しく理解していないのです。

インペルダウン編が、湿っぽくなることもなくギャグ満載のおもしろ編になったのは、シリアスな場面も面白おかしく変えてしまう彼がいたからです。
ルフィがイワさんの協力で九死に一生を得たのも、みんなを乗せた船が無事に正義の門を出られたのも、大事なところでは必ず彼が自分のこころに誠実に動いてくれたおかげでした。
わたしはそんな彼に胸を打たれたし、彼の言葉や行動を忘れたくありません。
きっとルフィやジンベエもそう思っているはずです。

©️尾田 栄一郎  アニメ『ワンピース』より


じつは前に紹介したハインラインの『スターマン・ジョーンズ』にも、これと似たシーンが出てくるのです。

異星人に捕まった主人公マックスともう一人を単身救出に来たサムは、マックスが生存している唯一の航宙士だから、みんなのために危険を冒して彼を連れ戻しにやってきたのだと説明します。
航宙士がいなければ恒星船(宇宙船)は動かせないからです。
船まであと少しのところで追手の異星人に追いつかれそうになると、サムは敵の足止めのため身を挺してその場に残り、サムを置いていけないとためらうマックスを殴りつけて「行け!」と命じるのです。
そして、唯一の航宙士が無事に船に戻った代わりに、サムは亡骸となって船に戻ることになるのです。

彼はみんなのために命をかけて航宙士を守ったのでしょうか?
わたしはそうは思いません。
サムはただ大切な友達を守りたくて、だから躊躇なくその場にとどまることを選んだのだと思うのです。
ルフィのために、Mr.2ボン・クレーもまたそうしてみせたように…。


ようするに、本を読むのってそういうのを知ることなのよぉ!
本を読んでおいて、表面だけサラッと理解したつもりになってそれで終わりなんて…アチシは冗談じゃないわよぅ!!

と、まぁそういうことを言いたかったのでした。


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