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【ネタバレあり】「ハケンアニメ!」感想

 2022年6月12日に広島バルト11にて映画「ハケンアニメ!」を見ました。
 気になる作品でしたが、実写作品でアニメを交えた作品と言う事で少し二の足を踏んでいました。Twitterでの評判が概ね好評なのを見て、見に行ってみました。
 見た感想は凄く面白かったです。邦画で久しぶりに心を揺さぶられた作品でしたね。

職場作品での傑作




 「ハケンアニメ!」はアニメ制作会社を舞台にした作品で、仕事が主なテーマと言える。
 主人公である吉岡里帆演じる新人監督の斎藤瞳は、作画監督や色彩設定・撮影監督などが持つ独特な感覚に戸惑い、製作するアニメ「サンドバック奏の石」の主演である群野葵(高野麻里佳)の演技に不満を募らせ、プロデューサーの行城理(柄本佑)が強引に進める企画に困惑する。
 そんな不安と不満が高まるネガティブな状況で瞳は仕事を進めなければならない。
 こうした複数人と共に居る職場で、意見や仕事の進捗に悩んだ事のある方なら凄く共感できる作品だと思えました。
 私自身も、それぞれの役割を担当する同じ職場の皆への伝達や仕事の進め方で悩む日々なので瞳が感じる不満が凄く分かるし共感できましたね。
 この「ハケンアニメ!」が職場作品としての良さはなかなか手助けが来ない所でしょうか。
 作品の中盤まで瞳は誰かから助けられる事は無い。
その中で作品発表の場でライバル作品の監督である王子千晴(中村倫也)に勝つ事を宣言し、スタッフへ自ら修正などを指示し、会社を飛び出した時には街頭で貰った無料券でボクシングジムで発散しようと試みたり自力でなんとか立とうとする姿を見せる。
 瞳の性格ゆえもあって誰かに甘える事無く、一人で抱え込む。これは職場での悩みとして誰もが抱えている心境ですよね。
 そうした中で瞳は行城が自分を認めている事を理解し、それをスタッフに説く場面になります。価値があるから振り回し、食い物にするのだと。
 これも誰かから教えられてではなく、瞳の自力による理解だった。行城はそこに行き着いた瞳に仕事のやり方を教えると伝えます。
 自力による突破をする。だからこそ、終盤で最終回の内容を変えたいと決心した瞳にスタッフは付いて行くと賛同する。自ら進み出る姿を見せていたからこそでしょう。
 自分の職場での評価や勝ちは自分自身ではなかなか見えない、と言うのもリアルさを感じましたね。


王子監督と有科プロデューサーの熱いドラマ


 瞳のライバルとして登場する王子千晴監督 
 作品では失踪したと言う出来事から登場します。さぞ迷惑さの強いキャラなんかなと思いきや、ガチのオタから監督になった根っからの本物さがあって凄さを見せつける。 
 王子監督は天才監督と言う評判からファンも多いものの、作品の完成度を高める為に周囲を振り回す事を厭わない困った部分もある。 
 そんな王子監督と組むのが尾野真千子演じる有科香屋子プロデューサーだ。 
 本作では失踪した王子監督と連絡がつかず、放送局の重役からも責められ製作スタジオのスタッフからも監督不在の問題を問われ追い込まれる姿から始まる。 
 そうした後での再会は一発殴る事でお返しになるのも当然だ。 
 それでも有科は王子監督を支える。急な変更で修正を断ったスタジオへ直に言って頼み込み、最終回で主人公を殺したいと望む王子監督の意見を尊重してそれを認め、代わりに放送局が納得できる内容をと求める。 
 王子監督の求めに応じる有科、それは不完全な物を出せないと言う王子の意志を知ったからでしょう。 
 完璧さを求める王子監督の本気さを知った有科は各所を奔走し、主人公の死はNGだとする放送局の意見ではなく、最終回で主人公の死を描きたい王子監督の意見を通す為に腹を括る。 
 完璧さを求めて自分を追い込む王子監督、そんな王子監督の本気を実現しようと覚悟を決めた有科 その二人の共闘ぶりが見ていて熱いものを感じましたね。 
 最後の王子監督から有科への「自分と結婚しない?」は恋愛要素を混ぜる必要からの場面にも見えたけど、作品の最後まで見捨てなかった有科への信頼を伝える言葉かなとも思ったり。 
 (二人の関係性という意味では、瞳と行城との関係が仕事上の師弟関係に着地したのも印象深い)


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