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アニメ「T・Pぼん」第8話は結構細かくミリタリー描写がされていた。

 アニメ「T・Pぼん」
 「ドラえもん」の藤子・F・不二雄先生の漫画「T・Pぼん」がNetflixでアニメ化されて配信中だ。
 今回は「T・Pぼん」第8話「戦場の美少女」でのミリタリー描写についての解説になります。

「T・Pぼん」のあらすじ

奥の少年が主人公の並平ぼん、手前のヘルメット被っているのがT・P隊員のリーム・ストーム
右の黄色い生物はブヨヨン


 主人公である少年、並平ぼん(なみひらぼん)はT・P(タイムパトロール)の隊員であるリーム・ストームと偶然に出会う。
 それから、ぼんはT・Pが使うタイムボートを見つけて乗ってしまい、鎌倉時代にタイムスリップをしてしまう。
 ぼんはリームに助けられたが、リームに会ってしまった事などT・Pについての記憶が残ったままでした。
 ぼんはT・Pに入る事で秘密を守る事になります。
 過去に遡り、歴史の流れに関わる人物以外を助ける。ぼんは過去の世界での冒険に出るのでした。

第8話「戦場の美少女」

第8話の桜木少尉

 「T・Pぼん」第8話「戦場の美少女」
 リームとぼんに与えられた任務は1945年5月25日の沖縄で、特攻隊の桜木海軍少尉を助ける事だ。
 特攻隊と米艦隊が戦う中に飛び込み、桜木少尉を探すリームとぼんは過酷な戦場に心を痛める。
 そんな中で桜木少尉の乗る特攻機を見つけ、桜木少尉を助ける。
 しかし桜木少尉は自決をしようとしたり、拾った軍刀で斬り込みをやろうと死のうとする。
 どうすれば桜木少尉を助けられるのか?と言う内容

菊水7号作戦

 第8話で「菊水7号作戦に参加している桜木少尉の救出」とリームの台詞がある。
 菊水7号作戦は1945年(昭和20年)5月24日から27日にかけて行われた。
 この菊水作戦は4月1日に沖縄本島へ米軍が上陸した事から、4月6日からの菊水1号作戦が始まった。
 (ちなみに菊水作戦と呼んでいたのは海軍、陸軍は航空総攻撃と称していた)
 沖縄の米軍を攻撃するとして、九州と台湾から陸海軍の特攻機が出撃
 7度目となる菊水作戦はこれまで6回とは異なる展開を見せます。
 作戦開始の前夜、陸軍の特殊部隊である義烈空挺隊が米軍が占領して使用している嘉手納の飛行場へ突入
 沖縄上空に米軍戦闘機を出撃させないのが目的だ。
 胴体着陸に成功した1機から飛び出した10人ほどの義烈空挺隊が飛行場を襲撃して航空機や燃料を炎上させたものの、全員戦死
 義烈空挺隊に続いて発動した菊水7号作戦
 海軍は387機(内、特攻機107機)陸軍機174機(内、特攻機61機)を出撃させます。
 しかし天候悪化で引き返す特攻機が少なくなく、作戦全体としては順調には進みませんでした。
 この菊水7号作戦で輸送駆逐艦「ベイツ」と中型揚陸艦「LSM-135」を撃沈、4隻の小型艦艇を損傷させた。

作中のミリタリー描写

 第8話でぼんとリームが1945年の沖縄に到着すると撃破された九七式中戦車改(チハ改)がワンカットで登場。結構よく描かれている。
 沖縄戦では戦車第27連隊がチハ改を装備して戦っていたものの、ぼん達が来た5月には宮古島に送った第3中隊以外の戦車が失われた。

 ぼんとリームが特攻隊と米艦隊が戦う場面
 特攻機として陸上爆撃機「銀河」が登場
 日本海軍の急降下が出来る高速の長距離爆撃機として開発された「銀河」
 1944年(昭和19年)から実戦投入されたまだ新型機と言える機体だ。
 日本海軍は1945年(昭和20年)3月のウルシー環礁に停泊する米艦隊への特攻作戦(第二次丹作戦)から特攻に出撃し、菊水7号作戦にも特攻機として出撃している。
 日本のアニメ作品では「ガールズ&パンツァー」以来だろうか。

 桜木少尉が乗る九九式艦上爆撃機
 250kg爆弾1発を装備し、敵艦に急降下爆撃をする日本海軍の爆撃機である。
 太平洋戦争開戦から真珠湾攻撃・ミッドウェー海戦・南太平洋海戦など日本海軍の空母が戦う海戦に出撃した機体だ。
 そんな九九式艦爆ですが、1945年の時点ではもはや旧式の機体となっており、通常攻撃に出撃する事は無く実戦は特攻のみとなっていた。
 この九九式式艦爆は菊水7号作戦にも出撃している。
 アニメではOVA「紺碧の艦隊」以来ではないだろうか?

 菊水7号作戦では練習機「白菊」が初めて特攻機として出撃
 もはや旧式機でも足らず、戦場に出せるような機体では無い練習機まで特攻の戦力にされた時期に入っていました。

 作中で特攻隊と戦う米艦隊
 その艦艇は「バックレイ」護衛駆逐艦だ。
 船団護衛や海域の哨戒を行うのが役目の護衛駆逐艦
 全長93m、基準排水量は1400トンと日本海軍の「松」型駆逐艦よりも小ぶりな駆逐艦である。
 とはいえ、76ミリ砲3門、20ミリ単装機銃9基、連装または4連装機銃が1基に爆雷や魚雷もあるなかなの武装を備えた艦だ。

特攻機の突入を受ける米軍艦艇

 この「バックレイ」級が登場したのは菊水7号作戦で沈没したのが「バックレイ」級を改装した高速輸送艦(または輸送駆逐艦)の「ベイツ」だからだろう。
 この「バックレイ」級を輸送艦にした艦は「チャールズ・ローレンス」級高速輸送艦となっている。
 輸送艦とはいえ魚雷以外の駆逐艦の武装はあり、駆逐艦に輸送能力を持たせた艦艇である。
 (上陸用舟艇やジープを積めて、上陸用の兵員も乗せられた)

 しかし、第二次世界大戦の米軍護衛駆逐艦は多い
 映画「俺は、君のためにこそ死にに行く」の撮影で使われたフィリピン海軍のフリゲート艦「ラジャ・フマボン」の前身である「キャノン」級護衛駆逐艦
 (映画「真夏のオリオン」に登場した米軍駆逐艦も「キャノン」級である)
 もしかすると、資料の多い「キャノン」級の可能性もある。

 作中、桜木少尉が軍刀で斬り込もうとした飛行場にあるP-47戦闘機
 このワンカットだけだけどよく描かれている。
 

 気になる登場兵器として、桜木少尉の近くを通り過ぎたこのシャーマン戦車


 思うに、ジャンボと称されたM4A3戦車の装甲強化型M4A3E2ではないだろうか?
 だとしたら、「ガールズ&パンツァー」にも登場していない戦車だ。
 砲塔後部の出っ張りでそう思える。
 欧州戦線の戦車のはずだが、沖縄戦である作中に登場させたのはシャーマン戦車をよく知るマニアなスタッフの好きが故なのかもしれない。
 第8話のミリタリー描写は菊水7号作戦を描いたという点ではよく再現されているし、他の兵器描写も凄く良かったです。
 内容としては、自らの死に積極的な日本軍の軍人を、どう生きる方向へ変えられるかを描いた意味では良い作品でした。


 

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