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Apple Vision Pro返品前に自問したこと7


はじめに

AppleがSpatial Computing第一世代として2024年2月2日に世に送り出した「Vision Pro」をMacBookの屋根でお馴染みApple Store Chicagoでの無料デモをきっかけに3月9日に衝動買いしてしまった.

デモからのお買い上げ

費やした額は$3928 (59万円)である(日本円にすることでさらなるダメージ).

ーー購入金額内訳ーー
Apple Vision Pro 256GB $3499 + Tax $358.66 = 3857.66
ZEISS Optical Inserts - Prescription $150.49
Apple Care+ for Apple Vision Pro $24.99 / month
Apple Card 3% Daily Cash -$104.97
合計 $3928.17 (589,225.5円) *$1 = 150

支払いは一括ではなく,Apple Card 12ヶ月分割無利子で月$291.58である.

購入に至った動機をできるだけ思い出してみよう

デモで衝撃的だったのは,ソードアートオンラインやシャングリラフロンティアで見たことがあるような「空間上のウィンドウを操作する」ことを,アイトラッキングとモーションキャプチャにより実現している点だ.

それらの経験がAppleのデザイン哲学とテクノロジーにより一つの製品になっていて,Apple ID/iCloud Keychainにより自分のデータにすぐアクセスができる.

さらに,アメリカでしか売っていないという限定効果は大きい.アメリカで大学院生をしている白鳥にとっては,Apple Cardが作れて無利子12ヶ月分割払いと3%キャッシュバックがあり,Student InsuranceのおかげでOptical Insertsを作る際に必要なアメリカの処方箋(約$150)を無料で取ることができたことも貢献した.

そして,所有による精神的充足は無視できない.価格が高すぎて周りの人は全然持っておらず,とても良い雑談ネタになる.

最後に購入日から2週間まで返品可能であるという.

実は,購入日から2週間後の3/23が返品可能期限であったが,別で注文したZEISS Optical Inserts配達遅延のため,Apple Customer Centerとの交渉の結果,返品可能期限日がInsertsが届いた4月1日から2週間後の4月15日に更新された.

返品して59万を節約するか,59万でVision Proを得るかを検討した結果,返品した

本記事では,返品に至るまでにApple Vision Proを使用してみて素直な感想を自分への問いかけとして7つ挙げてみた.

返品前に自問したこと7

購入した瞬間から取り止めのない自己正当化がはじまり,何かお金を使うたびに「59万円の買い物をした」という事実が頭をよぎる.

自分を納得させることできるようにApple Vision Pro購入について自分なりに分析することが必要だ.

問題は,「Vision Proにより白鳥の生活がどのように変わりそうか,その変化は本当に59万円の価値があるのか?」である.

1.ZEISS Optical Insertsがないと不便か?

Vision Proは眼鏡をかけながら使用することができないため,視力補正が必要な場合,コンタクトレンズを着用するか,別売りのレンズZEISS Optical Insertsが必要である.

視力が弱い白鳥はVision Proを使うたびにコンタクトを使いたくなかったので,Optical Insertsが必要であった.しかし,Optical Insertsに要求される処方箋はアメリカの処方箋しか受理してもらえないため,近所の眼科を受診しなくてはならなかった.運の良いことに学生保険が適用され,さらに$150払う必要がなかった.

Optical Insertsはマグネットで着脱が簡単.再設定用のコードをVision Proで読み取る.

コンタクトをつける必要がなくなったので,ふとした時にでもVision Proを使用しやすくなった.

2.首や眼の疲れ,頭痛を引き起こすか?

Vision Proの重さは600-650gである.はじめてVision Proを手に取った時は重く感じたが,Solo Knit Bandにより後頭部が包みこまれるようで,首周りが楽になる.付属のDual Loop Bandよりも安定感を感じた.

白鳥の使用ケース(後述)として,ソファに深く腰掛けながら,またはヘッドレストのある椅子に座りながら使用するため,首の疲れは一時的なものであった.

返品の大きな決め手の一つとなったのが使用後の頭痛と目の疲れだ.

そもそもメガネとして最適な度数とVRゴーグルとして最適な度数が一致しているとは限らないし,白鳥の場合は,処方した度数がVRゴーグルとしては少し高めであったのかもしれない.

このように個人差が大きく,VRには避けがたいが,「59万円でこの頭痛を受け入れねばならないこと」は正当化できなかった.

3.余暇時間の過ごし方は変わるか?

家にいながら映画館にいるような視聴体験(3D映画を含む)は映画好きにとっては病みつきになる.

Vision OSのAppとして,Apple TVはもちろん,Disney +,HBOMax,Crunchy Rollなどがあり,ブラウザからYouTubeやNetflixを視聴することもできる.

やたら画質の良いVR動画Apple Immersive Videoは「ほぼソアリンと言っても過言ではない.

Disney+には特別なEnvironmentがあり,Avenger Towerで見るMARVEL作品やTatooineで見るSTAR WARS作品はファンならば盛り上がること間違いなしだ.

TatooineでLandspeederからSTAR WARSを見る

PCゲームであれば,Macbookに繋ぐことで,Vision Proをしながらプレイすることが可能.

さらに,キャプチャボードを使用したMacbookに繋ぐことで,Switchなどもプレイすることができるが,キャプチャボードで投影したスクリーンには遅延があるので快適にプレイするのは難しい.

キャプチャボードをつなぐことでSwitchをVision Proをかけながらプレイすることが一応できる

このように,Vision Proにより白鳥の余暇時間は劇的に変わると見込まれるが,余暇時間が膨張しすぎる方がむしろ心配である.

4.生産性は向上するか?

いくつものウィンドウを空間上360度どこにでも配置することができる.これは,モニターの大きさや数の制限を越えて,情報の一覧性を高め,マルチタスキングをサポートする.

しかし,その必要性を感じない白鳥にとっては,本来は何もない空間を飾ることによるモチベーション向上や外部環境デザイン(後述)による集中力向上の方が生産性向上に直結すると感じた.

アイトラッキングによるタイピングは遅いため,ほぼ音声入力に頼ることになるが,英語しか選択できない(4/6/24現在)ので日本語の入力をしたい場合はMajic MouseとKeyboardを繋げるか,Macbookを繋げるしかない.

人差し指のみを認識して画面をタッチすることができるが,指全体をキャプチャして,仮想キーボードやよりインタラクティブなモーションジェスチャーの実現はまだ実装されていない.

Vision OSのAppのみならず,互換性のあるiPadのAppもインストールすることができる.例えば,Endnote,ChatGPT,NotionなどのAppが使えるため,並べるウィンドウには事欠かない.

Safariで開いたたくさんのタブを一覧で見ることができる(ハンドジェスチャーはズームアウトと同じ).

ズームアウトと同じハンドジェスチャーでSafariのタブを一覧展開できる.

さらに,それぞれのタブを空間上に広げて同時に眺めることができた.

タブを少しの間つまみ,ドラッグすることでSafariウィンドウとして自由に動かせる.

このように,情報のインプットやアウトプット,それらを助けるAppやUIシステムは申し分ないが,59万円級に生産性が向上するとは言い難く,娯楽の誘惑に敗退する白鳥の未来が見えてしまった

5.仮想現実だからこその強みはあるか?

Airpods Proのノイズキャンセリング機能とEnvironmentを併用することで,外部環境をほぼ遮断することができる.

外部環境をデザインすることで,環境に左右されず,集中することができる.例えば,どこでも月面で瞑想することもできる.

Environmentの一つ「月面」

さらに,他人に何をしているか見られる心配がないため秘匿性がある.ただ,Vision Proをカフェなどのパブリックスペースで使うことには勇気が必要だ.

逆に,この秘匿性はVision Pro経験を自己完結させてしまうことを意味する.ミラーリングやシェアプレイは可能だが,他者とのコミュニケーションで特筆すべきことは,PersonaによるFacetime Meetingのみである.

6.毎日使うとすればどんな風に使うのか?

正直に言って,Vision Proを毎日使用するケースをあまり思いつくことができなかった.

Vision Proを白鳥のいくつかのルーティーンに組み込むことを試みた.

例えば,毎朝しているヨガにおいて,Vision Proによる「月面ヨガ」を試みたが,重すぎて,もはや肩と首の筋トレとなってしまった.

また,食事中にみるアニメやYouTubeにおいて,Vision Proを使用してみたが,Vision Proに当たらないように食べ物を口に運ぶための特別な技術が必要であった.

強いて日常で使うなら,家のソファでほとんど横たわりながら,ハンズフリー大画面でKindle,ウェブ記事などを読んだりすることである.

画質の良い大きなテレビと良いスピーカー付きの持ち運び可能な仮想シアターとしてのVision Proは59万円の価値があると思うが,体調に及ぼす影響や生産性の観点から日常的に使うのは憚られる.

7.59万円あったら他に何をしたいか?

日本帰りたい,Garmin Forerunner買いたい,ワークアウト用のサプリメントまとめ買いしたい.59万円あれば全部できる.Vision Pro返品!

返品してきた

購入日含め2週間以内であればApple製品は返品することが可能だ.

前述の通り,白鳥の場合はOptical Insertsの予期せぬ配達遅延で,例外的に返品可能期限日がInserts到着日から2週間以内となっていた.

Vision Pro返品

「Apple Storeで購入したものはApple Storeでしか返品できない」という事実を知り,急遽Chicagoへ行かなければならなかった.

確実に返品するために,Apple Customer Centerに何度か連絡をとったが,Apple StoreとOnline Storeとの連携は望めず毎度事情を説明しなければいけなかった.

覚悟を決めて,Vision Proを初期化し,丁寧に再梱包.
スタッフさんから「使った?笑」という評価をいただいた.

Unboxingの動画を参考に再梱包されたVision Pro

Apple Michigan Avenueでの返品プロセスは迅速であったが,実質保有期間が2週間を超えた特殊なケースだったからか,対応してくれたのがManagerであった.

「なぜVision Proを返品しようと思ったのか」について聞かれたため,本記事で述べたことをお伝えしたが,嫌な顔せず最後まで聞いてくれた.

MacBook屋根のApple Michigan Avenue再訪

返品後,iPadやApple Watchなどを触り,購買欲求に打ち勝ち,Starbacks Chicago RoasteryからのGiordano'sでピザを食してChampaignに凱旋した.

Optical Inserts返品

ZEISS Optical Insertsは,白鳥の視力に合わせて作られおり,なんだったら名前も印字してもらったにもかかわらず,返品が可能だ.

電話での返品しか受け付けていないため,4/12に電話し,発行されたLabelをプリントし,4/26までに最寄りのFedExにdropすることで返品をすませることができた.

おわりに

第一世代で広く普及する製品は存在しない.Appleもその例外ではない.

現在の白鳥の財政面と生活面を考えた結果,Vision Proを返品した

しかし,あらゆる部分に最先端のテクノロジーとAppleらしさが溢れていて,第一世代にも関わらず,何度も驚かさ,まだこの先が見てみたいと思わされた.

得られた注目とフィードバックは第二世代に生かされ,まだ見ぬ Spatial Computingが実現されることが今から楽しみだ.

本記事で挙げたいくつかの質問と白鳥の回答が,Apple Vision Pro購入を検討している方の一助となれば幸いである.



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