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◆オーディトリー・ニューロパシー(105):人工内耳リハビリ日記:音入れ前の仕事

音入れ前までの3週間、左耳がほとんど聞こえていない状態で仕事をせざるを得なくなった。新型コロナ対策のため対面での授業とオンライン授業を1週ごと交互に実施するという方針になったのだが、退院した翌週から対面での授業週。久しぶりに1日3コマ授業をしたのでくたびれた。

人工内耳の音入れ前でほとんど聞こえない中の仕事では、不便なことがたくさんある。授業の前にマイクのスイッチを入れてもほんとうに入っているのかが自分でわからない…。ランプ点灯で確かめる。授業中、話していると自分の声が自分の中で響いて聞こえて気持ち悪い。学生からの質問は音声認識アプリの助けを借りた。講義形式の授業後の質問対応は教卓に来てもらい音声認識アプリを使いながら授業後にまとめて対応した。学生に後ろから呼ばれているのになかなか気が付かない。平謝り。

別の授業では同僚の先生、外部講師の先生との分担で担当している科目。ずいぶんおふたりに助けていただいた。足を引っ張らないように自分はグーグルクラスルームのセットなど聞こえなくてもできる仕事をかたづけるようにする…。

この日は、学生にグループに分かれてグループ内で報告会をしてもらい、一番良かったプレゼンをグループごとに選んでもらうという内容だった。授業じたいはトラブルなく終了。学内で一番大きな教室で島のようにグループを作ってやってもらったのだが、外部講師の先生は前の教卓にいながらも一番うしろのグループに様子を聞いて後ろの学生が地声で回答するのを書き留めていた。「そっから聞き取れるなんて健聴者すげえ・・・」と内心思っていた。仮に人工内耳のリハビリがうまくいったとしたって、こんなことはできるわけないんだから同じようなことをやろうと思っちゃいけない。もしこの授業を自分が1人でやるとしたらどういうやり方ならうまくいくか、を考えないといけない。

また別の演習系授業では学生に事情を話してUDトークをスマホにいれてもらい、「トークを公開する」で共有した状態にしてみんなの発話を文字にみられるようにさせてもらった。次の対面授業では音入れが終わっているはずなので、もう少しやりとりがうまくいくといいのだが。

アプリをインストールしてもらったり、スマホに向かってしゃべってもらったりして面倒をかけて申し訳ない気持ち。この申し訳ないという気持ちはどうしようもなく起こるのである。それがなぜなのかを考えるのは研究者モードですべきことなのであるが、ともかくこの1週間を乗り越えれば来週は音入れ。待ち遠しい。

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