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理想の子育て~老舗企業に見る子育て論

家族経営の経営陣向けの絶対滑らない話をご紹介します。

老舗企業の子育て論です。


老舗企業というのは世襲が戦略のため、意外と子育てについての理論が体系化されているようです。

たとえば、私も江戸時代から続く商家の生まれですが、兄は京都に和菓子屋に修行に行き生産について学び、私は当時勃興していたインターネット通販を学びに楽天に入社し販売について学びました。これは少なからず、親からの影響を受けています。

このような形で、最初の社会人としてのキャリアの第一歩を親が決めるというのは、老舗企業では、意外と一般的だったりします。

老舗の鰹節屋さんは、当代も先代も主要販路であるデパートを最初のキャリアにしています。日本橋の老舗の海苔屋さんは、資金繰りを学ぶため、銀行を最初のキャリアにしています。

この最初のキャリアというのが、その後の会社の先行きを見ていく際に、非常に参考になったりします。戦国時代から続くお酢メーカーの跡継ぎは、大手の広告代理店を最初のキャリアにしています。彼は、家業の会社の取締役になっていますが、toB主体の会社からtoCの会社へ切り替えて行こうとしています。彼が、最初の経歴を広告代理店にしていることと無関係ではないと思っています。

日本を代表する流通チェーンの創業者は、お子さんを家業には付けませんでした。彼は、取引先の広告代理店の役員を勤めています。その創業者の方は、その会社の筆頭株主を自身から大手商社である伊藤忠商事にした事を考えると、会社は創業者一代きりでお子さんは継がせないと早いタイミングで決めていたのかもしれません。その為、お子さんを自社の業績に影響を与える可能性の少ない取引先のポストを用意したのではないかなと思っています。

最初のキャリアと言う観点で議論を進めてきましたが、老舗の会社経営者というのは、子供のキャリア、人生に対して一般の方より深く考えているというのがわかっていただいたかと思います。単純に、慶応や青学に放り込んでおけばよいという事を考えているわけではないというのが一般的なようです。

ここからは、まだ体系化出来ていないのですが、どうも年商ベースで20億円を境に家族経営としての存在が違うのではないかと思っています。年商で20億円を超えると、経営者ではなく「オーナー」として創業者一族が生計を立てることが出来るようです。

年商20億円を超えてくると、「番頭」的な立場の経営者を雇う会社が多いようです。跡継ぎ本人の資質は関係なく、優秀な「経営者」もしくは「経営者補佐」としての番頭さんがつきます。たとえば、ある子供服大手の跡継ぎは、自身も起業した広告代理店を軌道に乗せていますが、番頭として東大を卒業後アメリカの超一流大学でMBAを取得した番頭さんを雇っていたようです。

年商20億円を超えると、跡継ぎは経営力というよりもコミュニケーション力が重要な資質になるようです。ゼネコンの創業一族などでも、公立中学出身の人が散見されるようです。これには理由があり、多くの肉体労働者を使う業種の跡継ぎは、従業員である肉体労働者を理解出来るように意図的に公立学校で育てるんです。

これが、年商20億円未満になると製造部門、販路、金融など、いわゆる経営者としての能力を磨くため、いわゆるエリートとして育てられることが多いようです。そのため、幼稚園や小学校などから名門大学の付属に入学させずに、中学校受験などを経験させ、優秀な跡継ぎとして育てられるというパターンが見られるようです。

どのような大人になってもらいたいかという絵が明確になっているので、老舗企業の子育てというのは意外と子育てがしやすいのかもしれません。

ただ、大塚家具の親子喧嘩は有名ですが、お子さんを優秀に育てることと、親子がうまくいくかどうかは別の話なのかもしれません。某ステーキチェーンでも、創業者のお父さんと役員のお子さんの喧嘩が話題になりました。取締役会中に親子喧嘩をはじめて、お子さんが取締役会中に退任を宣言したという噂は、跡継ぎ業界では有名な話。

創業者であるお父さんのプライドと、コンサルや金融出身で経営知識の長けた子供。家族であるがゆえにお互いに遠慮せずに喧嘩も際限なく拡大してしまいます。

日本橋の老舗の旦那は、「鼻っ柱の強い某和菓子屋の娘は、私が結婚してあげなかったから40を過ぎて未だに独身」という話をされていました。日本橋の老舗など、小さい頃からお店の中、ご近所などコミュニケーション能力を磨かないと、大人になってからもその影響が響くという話なのかなと思いました。

年商20億円というハードルが適切かどうかは別に、一定規模の会社はやはり経営力よりコミュニケーション能力なのかなと思った話でした。

老舗の親は、子供のコミュニケーション能力を磨くために、親や大人が子供に接する時間よりも、子供同士のコミュニティで過ごすようにさせている親が多いのではないかなという印象です。


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