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【寄席エッセイ】カニカマは天下を取りに行く


JRの広告「美味しいもん食べに行こうぜ!」地方という事でカニの画像が大量に貼られている。ふと目に留まった。



カニね。美味しいよね。




と、私がぼやいているのを見て「あら、高いもの食べてるのね」とか「いつもそんな生活しているの?クソ狸のくせに?」なんて嫉み、嫉妬の声が地鳴りの如く響いてきそうなもんだがご安心頂きたい。





私の頭の中に居るのは「カニカマ」である。




カニカマ。アレほど美味しいものはそうない。
再現度が高いというかあれ自体が相当美味しい食べ物だ。そうは思わないだろうか。熱を通せばさらにうまい。天ぷらで揚げた日にはもう、カニの存在意義が霞んでしまうほどに。カニカマを開発した人はノーベル平和賞受賞もんである。




恐らく、私は十年以上はカニを食べていない。だから私は本当のカニを知らないとも言えるだろう。カニは知っているがカニの味を思い出すことができない。ごくりと生唾を飲んで想像しているのは「ほぼカニ」の方で、あの甲殻類の方ではないのだ。世間はどうなっているのだろうか。カニ鍋食べたいとか思うのだろうか。




私自身は「ほぼカニ鍋」で全然いい。美味いし。お財布にも優しい。スーパーで気軽に買える。カニの立つ瀬がないんじゃないかと思うほどに。


カニがもし絶滅したら「原因は「ほぼカニ」です」みたいな嘘みたいなコメントがテレビで流されるところが容易に想像できる。カニvsほぼカニ。私の中ではほぼカニの方が実像として、リアルとしてとらえている存在なのだ。身近な存在は強い。



娘たちも蟹を食べるような機会があまりない。私がカニカマばっかり食べてるし、「カニ美味しいね」って明言しちゃってるもんだから、彼女達はおそらく本ちゃんのカニを食べた時に「カニじゃない!ほぼカニじゃん!」って言うと思う。でもほぼだから日本語としてはまぁまぁイイ線行ってるとは考えられないだろうか。だってネーミングが9割9分カニなんだから。育ってきた環境というのは強固なものだ。なかなか変える事ができないだろう。いっそカニカマが海を泳いでくれてた方がこちらとしてはストーリーを正しく伝えられるような気もしてきた。




実際問題。カニを食べるのは難しい。値段的な部分もそうだが、鍋に入れると豪勢な見た目になるもののその後の殻向きがとても面倒くさい。この時点で、いや食べる前からほぼカニが大きなリードを取っている。よしんば殻を剥き、それにむしゃぶり着いたとしてもなんか意地汚い感じがしてしまうというか、そうじゃなくてこう、剥き身のデェエエエンって長い感じのやつが食べたいんだよって気持ちが高まってしまうだろう。高級なものを食べている時の劣等感。そんなものを味わいたくてカニを鍋に放り込んでいるわけではないのだから。


そんなメンタル面もケアしてくれるのがカニカマ。剥き身というかまぁそもそも本体として存在するわけだから余計な事考えないで良いわよね。むしゃぶりつかないで良いわけだし。レストランのビュッフェスタイルでカニカマ出されても私気づかない気がする。美味いし。






え、カニ。なぁ。カニ。






蟹でなく・・・豪勢な鍋にするならエビなのだろうか。そのうちエビ辺りもほぼエビみたいになってしまうような気がする。かわいそうに。ほぼカニが成功しているせいで海洋生物の生態系がどんどん怪しいものになっていく。カルビーあたりが「ほぼかっぱえびせん」みたいなのを開発したらエビも淘汰されていくに違いない。


あれ?そうなっていくと河童に「ほぼ」がかかっていくような気がしてそれはそれでなんか恐ろしい生命体になってしまうような気がする。どのあたりをロストすればほぼ河童になるのだろうか。皿がないとか、相撲を取るけど尻子玉取らないみたいなスタンスなのだろうか。優しい。優しいんだからほぼ河童の勝ちだ。こちらもやはり「ほぼ」の方が魅力的になってしまう。恐ろしいね。はながっぱだって、「ほぼはながっぱ」みたいなちょっと違うアニメになってしまうだろう・・・。




かに座もチェンジで「ほぼカニ座」みたいなあやふやな星座が生まれそうだし。「ほぼ蟹工船」みたいなほぼ傑作の小説みたいなのも誰か書いてくれるのではないだろうか。モンハンだって、ダイミョウほぼギザミ的な敵が現れてくるのでは?あれはあれか・・・ヤドカリかなんかか?よくわからん。





しかし…蟹たちとしてはどうなのだろう。蟹の気持ちを考える事になるなんて思いもしなかったが。


生存戦略(種の繁栄)という意味合いで言えばカニは大いに成功しているような気がしてきた。確か穀物とかは人間が栽培しているように見えるが人間に栽培されるように進化し種の繁栄を保っているみたいな超怖い話を聞いたことがある。


それをトレースする場合、カニカマが市場を席捲する事によって、カニは数を減らすことなく海を埋め尽くす事ができる。さらにライバルの魚(ライバルなのか不明)はすり身としてガンガンにそのお命を絶たれていってしまう・・・そうなるとカニカマが生まれたのは・・・え?蟹人間の生存策略?・・・蟹人間が自分たちを食べられない為に・・・


ちなみに、ほぼカニを製造しているサイトを覗いてみるとほぼカニがどれだけ消費者に食べられているかが書いてあり、「4800万匹分のカニが命拾いをしている」と書いてある。爆笑した。カニカマは生命を救っていた。驚愕の事実。カニの生命の確保の為に我々が動いていただなんて。それなんて傀儡政策?斬新すぎひん?つまりこれは・・・蟹人間の・・・



ってさんざん書いてきたんだけど。なんだよ蟹人間って・・・アタシどうしちゃったんだよ・・・これも蟹人間の・・・


信じるか信じないかはあなた次第・・・

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