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【かつらのお話:櫛入れ】

立役の鬢裏貼り毛の糊も乾きコテあてをして櫛入れをしたら、鬘師の仕事としてはひとまず完成です。

コテを当て、櫛入れした中剃りのかつら

こんにちは。京都時代かつらです。立役中剃りのシリーズもいよいよ大詰めです。

貼り毛の出来上がったかつらは、和裁の仕立て用電気コテを使って人毛に付いたクセを伸ばし、櫛入れをしていきます。

この櫛入れで気を付けなければならないのは、決して人毛を切ったり抜いたりしないこと。
バランスを考え左右対象に刺した刳の人毛を、櫛入れで切ったり抜いてしまっては元もこもないのです。

また、櫛入れで落ちた人毛は決して捨ててはいけません。人毛は限りなく最後の最後まで使いきります。

江戸時代には、町内を「おちゃない~おちゃない」と言いながら巡る女性がいました。俗におちゃないと呼ばれていた、人毛回収の女性達です。

身繕いの際に落ちた毛髪を回収して周り、それを材料として使う業種に売る商売です。以前にも書きましたが、人毛も立派な天然資源です。

集めた人毛は根かもじなどの、現代でいうヘアピース、歌舞伎芝居の鬘、禿隠し用のヘアウィッグ、漆刷毛等々色んな製品に使われました。

現代でも櫛入れで落ちた人毛は大切に取っておき、おちゃないこそ回ってこないにしろ、また鬘の材料として、また道具として使います。

材料としては整毛して、刳の刺し毛、簑編み用の毛、貼り毛、襟毛、当て毛、芯毛、毛タボの順に使い分けていきます。

また道具としては、銅の地金に下地漆を塗る刷毛として使用します。また結い櫛の埃取り、梳櫛の汚れ取りにも使用します。

限りある資源、有効に大切にしたいですね。

さてさて、鬘師として一旦ここまでで完成した鬘。床山さんにお渡しして、役の形に結い上げてもらいます。どんな鬘が完成するのか。

次回もどうぞお楽しみに。

毛を全て纏めたらかつら師の仕事は完成

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