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この夏に読んでほしい!桂書房の本 Part3

学生はそろそろ夏休みが始まっています。大人が夏休みを迎えるのはまだ先かもしれませんが、夏休みはゆっくり読書ができるチャンスです。
暑い日に涼しい部屋で、旅行や帰省の移動中に、ぜひ読んでほしい桂書房の本を紹介します。

今回は、編集者Tのおすすめする5冊を紹介!

夏休みには祖父と一緒に古本屋へよく行きました。家に帰って畳に寝転び、買った本を読み耽る。垂れる汗、蝉、扇風機の風、ちょっとお昼寝。
「今日も行くか」と誘う、祖父の声がよみがえります。



□ 『短歌集 こうのとり Tankas STORKS』(松井玖美・吉田和夫著) 2010年1月刊

松井玖美の歌集であると同時に、短歌の英訳を試みる一冊。
原文(日本語)と英訳を並べ、二つのリズムで楽しむことができる。
日常の小さな情景に目を向ける時、私たちは思いもよらず心奪われる瞬間がある。本書を読んでふと気づかされた。

モロッコの水売る人の皮袋けものの爪を残したるまま
庭の隅知りつくしいし猫去りて聞き洩らしたることの数数
見残した夢ひらくかや合歓の枝靜かに妖し夏の夕べは

『短歌集 こうのとり Tankas STORKS』より3首引用


□ 『粗朶集』 (秋月煌著) 1996年6月刊

第24回泉鏡花文学賞の最終候補作。
「粗朶」とは大きな炎を拵える際、火種に最初にくべる細枝の類のこと。
富山のある山奥の村に暮らす作者が静謐と純潔の中で紡いだ初の短編集で、収められた十三の物語は時に妖しく、どこか懐かしい。
これは作者の手で開示された現代の神話だ。


□ 『富山探検ガイドマップ』 (富山インターネット市民塾推進協議会・富山探検4次元マップサークル編) 2014年8月刊

今昔の地図を見比べ、重ね合わせて富山の街歩き。戦火に焼ける前の市街、大正期の老舗の並び、10万石の江戸期城下町までがまざまざ蘇る。
「老舗を歩く」「石仏を歩く」「湧水を歩く」「滝廉太郎を歩く」など13のテーマで紹介されており、散歩が趣味の私にはたまらない一冊。
この本を手に街を歩けば、見慣れた街が新しい世界に変わるかもしれない。


□ 『とやま巨木探訪』 (泉治夫・内島宏和・林茂編) 2005年6月刊

23人の執筆者が334本の巨木・名木を探訪する。幹周・樹高や伝説を記録し、全カラー掲載した一冊。本書に登場する樹木すべての所在地を表記した付録「分布マップ」を手に、巨木をめぐる夏も面白いだろう。
樹木をみつめ、過ぎていった膨大な時間に思いを馳せたい。


□ 『棟方志功 装画本の世界 —山本コレクションを中心に』 
(山本正敏編) 2023年3月刊

昨年生誕120周年を迎えた、棟方の装画仕業の900点を収録する。「民藝」・保田與重郎・谷崎潤一郎とつらなる戦前・戦後の人脈と装画を全カラーで時系列に並べて一覧できる大型本。
画集を読むと創作意欲が湧き立つ。この夏、棟方の装画からアイデアを新たに取り入れてみては。


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