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この夏に読んでほしい!桂書房の本 Part2

学生はそろそろ夏休みが始まっています。大人が夏休みを迎えるのはまだ先かもしれませんが、夏休みはゆっくり読書ができるチャンスです。
暑い日に涼しい部屋で、旅行や帰省の移動中に、ぜひ読んでほしい桂書房の本を紹介します。

今回は、編集者Kのおすすめする5冊を紹介!

子供の頃の夏休みといえば、毎週のように近所の市立図書館の分館に通い、手提げバッグいっぱいに本を借りていました。重たいバッグとは裏腹に家に帰る足取りは軽かったのを思い出します。



□ 『おわらの記憶』 (おわらを語る会編)   2013年8月刊

富山市八尾町に伝わる民謡おわらは謎が多い。
そんなおわらの実像を、文献資料を基に調査研究。
明治から昭和初期までのおわらの変遷を紹介、おわらがどのように磨かれていったかを明らかにする。資料編として豊富な資料を収録。

毎年9月の1〜3日、八尾の町は幻想的な雰囲気に包まれ、編笠をつけた男女の踊り、三味線と胡弓の哀調を帯びた音色と味わいのあるおわら節が観客を虜にする。
本書には豊富な資料が収録されており、明治〜昭和の新聞記事からはだんだん「おわら」が有名になっていき、人々を惹きつけていく様子がわかる。


□ 『越中怪談紀行』 (桂書房編)   2015年9月刊

例えば、浮世の味気なきを感じた遊女が身を沈めた「池」が放生津沖の「海」中に今もあるという。
奇怪な仕掛けを持ち、庶民のうっ積した情念をみる怪談を集め、百年前の1914(大正3)年に連載された48話を現地探訪するカラー版。

1914年に高岡新報で連載されていた「越中怪談」を中心に、特定できたものは、実際の場所の写真や地図を添えて紹介。
「恐怖」というよりは「不気味」さを感じる話ばかりだが、狐や狸に「化かされる」という現代では馴染みのない出来事も紹介されていて興味深い。


□ 『長い道』 (柏原兵三著)   1983年11月(初版)、2013年2月(再販)刊

太平洋戦争末期、父のふるさとへ一人で疎開した少年。
土地っ子の級長が除け者にしたり物語を強制したりさまざまな屈従を強いるが、いじめられっこの魂が爆発、ついに暴力が―

著者の柏原兵三は芥川賞作家。本書は著者が富山の入善町に疎開してきた際の体験をもとに書いており、子どもたちの社会のしたたかさや主人公の心理描写に引き込まれる、疎開文学の傑作。
篠田正浩監督「少年時代」として映画化されており、井上陽水のヒット曲「少年時代」はこの映画の主題歌。


□ 『富山の文学・歴史散策』 (立野幸雄著)   2023年12月刊

土地の伝説や民俗・歴史を横糸に、人物が縦糸になって文学は生まれることを、県内76カ所を散策して美布を織り上げるように紡いでみせる好著。
鏡花・高橋治・新田次郎・吉村昭ら富山ゆかりの作品エピソードエッセイも付す。

朝日新聞富山版で連載された「ぶらり つれづれ」と北陸中日新聞文化欄などに寄稿したものに訂正・加筆し、まとめた一冊。
本書では、富山ゆかりの文学作品や作家、郷土の歴史にまつわる場所を紹介しているが、各々に現地までの道のりが書かれており、この本を手に現地を訪ねてみようという気持ちになってくる。


□ 『越中五箇山炉辺史話』 (千秋謙治著)   2009年11月刊

平地へと広がる峠道、対岸と結ぶ籠の渡、念仏道場を中心とした信仰、塩硝を生産し流刑地であった江戸期、合掌造り集落として世界遺産に登録など、明治になるまで架橋されず、外界と隔絶された秘境ともいえる五箇山の暮らしと信仰と歴史を語る。

「白川郷・五箇山の合掌造り集落」は1995年に世界遺産に登録され、広く知られるようになりましたが、「白川郷」に比べ「五箇山」はメディアに取り上げられる機会が少なく、「五箇山」は知らないという人もまだまだ多いのでは…。本書で「五箇山」の歴史と文化を知ることで興味を持っていただき、ぜひ実際に訪れてみてほしい。


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