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相談相手がいたのは幸運だったんだな

人事異動は、急にやってきます。
本当に、急ですよね。
自分の希望が通る異動もありますが、急に告げられ、驚くほど意に沿わないことが多いものだと思います。
あくまで、人事異動の決定権は会社や上司にあるため、「思っていたのと違う!」という事態が生じることが、全国、いや全世界で行われているのであります。

昨年から読み始めていた話題の本「心理的資本をマネジメントに活かす」に、かつての私と似た人事異動にまつわるケースが紹介されており、我が事のように、興味深く読ませていただきました。

昨年10月、『自分の中に眠れる「自信」を呼び覚ますには』という読書感想文を書いたnoteの最後に、次のように予告を書いていました。

「また後日、同書第II部の実践編の内容について、私自身の経験と照らして、感想を書いてみたいと思います。」

予定では、11月中には実践編について感想を書くつもりでした。しかし、母が逝去し、葬儀や手続きで一気に多忙になると共に、私自身が落ち着いて物事を考えられない状態になってしまいました。食べて、寝て、仕事をするだけで精一杯でした。

11月から12月にかけて、noteのお休みをいただき、おかげさまで、徐々に私の生活も落ち着きを取り戻してきました。

そこで、年始の復帰第一号のカツオnoteとして、あらためて振り返り、実践編の内容のうち、私に似た境遇の例について、感想(というより、ほぼ思い出話?)を書いてみたいと思います。


「ガイディング」って何ですか?

本書第I部の理論編では、心理的資本とは何か?ということが丁寧に解説されています。
心理的資本とは何か、というと、「はじめに」に次のように説明されています。

「ポジティブな心理的エネルギーで、積極的な行動や自律的な目標達成を促すエンジン」

つまり、心理的資本を高めることにより、「ポジティブに目標へ向かって行動する実行力」が高まる、という解釈ができると思います。

本書第II部実践編は、第9章の「心理的資本の介入」からスタートします。
心理的資本を高め、ポジティブに目標へ向かって行動する実行力を高める介入法は「ガイディング」と呼ばれています。
この章では、ガイディングについて次のように説明があります。

ガイディングとは、対象者の課題解決を促す問いや、目標達成を目指す行動を促進する支援にあたり、心理的資本の構成要素であるHERO(ホープ、エフィカシー、レジリエンス、オプティミズム)を高める投げかけや、課題整理法を用いたコミュニケーション手法です。

心理的資本をマネジメントに活かす p.138

あくまでカツオ的解釈になりますが、ガイディングのイメージとしては、「仕事で悩みを抱えている部下に上司が面談する」というシチュエーションに近いのではないでしょうか。

もし、上司にあたる人が、ガイディングの手法や心理的資本について知識があれば、その面談の成果がより高まるのではないか?という期待感があります。

第II部では、実際に職場で起こっている事象に対して、どのようにガイディングするかを、具体的な事例(ガイディング・ケース)を通じて解説されています。

第II部の第10章に掲載されている3つのガイディング・ケースのうち、「新任の部門長としてリーダーシップを発揮したい人」というストーリーが紹介されています。

読み進めるうちに、「このケース、ほとんど私じゃないか?」と感じた箇所が多々ありましたので、私の経験と重ね合わせてみたいと思います。

未経験部署の新任管理職として何をしたら良いか分からなかった私

このケースの主人公、中山さん(仮名)は、簡単に整理すると、人事異動で急に次のような境遇になり、不安が高まり、自信を失っているように見られるという状況のようです。

・勤続15年で未経験の部門に異動になった
・初めて管理職として部署のマネジャーになった
・未経験の部署なので今までの経験が生かせない
・部下の方が経験豊富(業務的に先輩)である
・前任者と自分を比べて不安になり、自信を喪失

これは、私がかつて、総務部門に異動したときとほとんど同じ状況です。"管理職あるある"かもしれませんが、精神的にかなり苦しい状況であると言えます。

このケースのガイディング例では、「第三者のメンタリングによる対話を継続的に行い、その際には心理的資本に介入するガイディングの手法を用います」と書かれています。

不安を減らす「第三者のメンタリング」

第10章に掲載されたガイディング・ケースのうち、「新任の部門長としてリーダーシップを発揮したい人」というストーリーが紹介されています。

このケースの主人公、中山さん(仮名)は、簡単に整理すると、人事異動で急に次のような境遇になり、不安が高まり、自信を失っているように見られるという状況のようです。

・中堅になってから未経験の部門に異動になった
・初めての管理職として部門長になった
・未経験の部署なので今までの経験が生かせない
・部下の方が経験豊富(業務的に先輩)である

これは、私がかつて、総務部門に異動したときとほとんど同じ状況です。

このケースのガイディング例では、「第三者のメンタリングによる対話を継続的に行い、その際には心理的資本に介入するガイディングの手法を用います」と書かれています。

ここでポイントとなるのは、「第三者のメンタリング」という点だと思います。

まず、未経験の部署というのは、マネジャーでなくとも不安や焦りが生じやすいものです。
その不安な心境を周囲の人に吐露することは、部門長という立場としては、なかなか難しいものだと思われます。

上司に相談すれば部門長としての適性が疑われるかもしれないし、部下に言えば人間関係に影響する可能性があるなど、様々な利害関係が生まれる場合があります。そんな諸事情が気になって、不安を口にできず、ますます不安が募るのではないかと思います。

そこで、利害の生じない第三者のメンタリングであることは、その点でリスクがなく、相談がしやすいのではないかと思いますので、重要な配慮だと思います。
また、自分の部署の内情を知らない第三者に話す過程で、自分の悩みを整理できるというメリットもあるのかな、と思います。

私自身、異動して半年ほどは、未経験の業務だらけで、押さえるべきポイントや判断軸が無い状態で、自分のことを「丸腰」と呼んでいました。武器が無い状態です。
そんな状態で、「この件、どうしたら良いでしょう」と部下から相談されたらどうしよう?と不安だらけの毎日を送っていました。

不安ですが、「部下に弱みを見せるのは、マネジャーとして信頼を得られないのでは」と考え、本音を話すことはできませんでした。

上司にも「どうしたら良いですか」と聞いても「詳細はわからないから、経験のある部下の話をよく聞いて判断してほしい」と言われ、私の焦りは募るばかりでした。

そのときに相談したのは、別部署に異動した前任者の先輩でした。先輩も忙しい中、時間を作って、辛抱強く私の相談にのってくださいました。
直接利害が関係しない、他部署の所属であり、一方で内情が分かってもらえているので、先輩がいてくださったことは、私にとって救いでした。ただ、先輩の業務も多忙で、いつまでも相談にのっていただくわけにはいきませんでしたので、私が早く成長する必要に迫られていました。

対話を重ねて「自分をほぐす」

さて、中山さんのケースに戻り、ガイディングによる効果について考えてみたいと思います。

不安だらけの状態は、自分が描いているイメージと現実が乖離しているために生じると思います。

このケースでのガイディングでは、その不安を和らげるため、対話を通じて中山さんの考えや行動を否定せず認めることを積極的に行い、「こうあるべきだ」という状態をほぐして、「これでいい」と思えることを増やすこと、と解説があります。

私自身を振り返ると、メンタルクリニックへの通院(以下、ドクター)によって、だいぶ"ほぐして"もらえたのではないかと思います。

実は、先輩への相談で解決すること以上に難題山積で、そもそも休暇が取りにくい事情もあり、メンタル不調に陥りました。

あまりにも判断力が下がり、自分が自分でない感覚が湧いてきたので、自宅近くのメンタルクリニックに飛び込みました。

そして「うつ状態」という診断を受けました。
そのときドクターは、「すぐにドクターストップという状態ではないが、仕事と距離を取らないと危険ではある。仕事を休職するかどうかは、自分で決めてほしい」と言いました。

自分の感覚としては、「もうダメかも、と思っていたけど、客観的にはそこまでヒドくないのか」というふうに、少し驚きを感じました。
そして、自身の窮状を第三者のドクターに整理して話す中で、自分自身が少し楽になり、自分が自分を追い込み過ぎていたことに気づきました。

結論としては、服薬しながら、休み休み仕事をすることにしました。

「ドクターに相談して良いんだ」「自分も休職一歩手前なんだ」と思えたのは、私にとって凝り固まった考えがほぐれて、安心感を生みだしてくれたのではないかと考えています。

まとめ:ガイディングで、どう変わるのか

中山さんのケースでは、対話を重ね、「できていること」にフォーカスするフィードバックを継続的に送ることで、中山さんが少しずつ自分らしいやり方を自分で認められるように変化してきました、とあります。

これはあくまでカツオの私見ですが、部下は上司には指摘をしにくい関係だと考えています。諫言は誰にとっても耳が痛いもので、意見をする部下はうるさいと思われるのではないか、と考えるからです。では、上司へのポジティブな話も、周囲からゴマスリと取られるリスクもあります。

何を言ってもどう受け止められるか不安がある人間関係や、会話が少なく、周辺から上司の真意を推測できる情報が少ない風土の組織では、必然的にコミュニケーションが少なくなる傾向があると思います。

一方で上司は、フィードバックをしてもらいにくくなると、自分が正しい方向に進んでいるのか、分からなくなります。自分が好んだわけではないのに、コミュニケーションがひとりでに減っていく危機感を感じる事態になることも少なくありません。

私の場合は、考えがほぐれてきた中で、一番頼りにしている年上の部下に、弱みを見せないように頑張り過ぎていたことが分かりました。そこで、積極的に相談し、助けを求めて、法律やデータ、社内規定などの根拠を学びつつ、過去の上司や自部署の判断結果を調べて、徐々に自分の判断軸を持てるようになりました。
何らかの根拠を持って判断できるようになると、困りごとの相談に来る他部署の話をしっかり聞き、解決案が出せるようになってきました。

とはいえ、非常にパフォーマンスに問題のある別の年上部下がいたり、他にも解決しない問題が山のようにある部署だったため、相変わらず悩みは尽きませんでしたが、自分の成長という観点では、少しずつ前進している実感がありました。

そうして、だんだん慣れてきて面白くなりつつあり、業務改善に着手しようと半ばで、別の部署に異動になりました。

以上、振り返ってみると、ガイディングは新人管理職のフォローとして、効果的であるのではないかと考えます。

私には、他部署に前任者の先輩がいたこと、メンタルクリニックのドクターが自分に合っていたこと、頼りになる年上部下がいるなど、相談相手に恵まれたのは、幸運だったんだなと思います。

ただ、組織内で解決に限界があるマネジメントの問題については、外部の専門家に支援を求めるのは、「かけがえのない人材を大切にする」という観点で、有効な方法だと思います。
私がもし(万が一)、人事制度の改善に寄与する立場になったら、積極的に検討したいと思います。

以上、長くなりましたが、「心理的資本をマネジメントに活かす」を読んで感じた、カツオの振り返りでした。
つたない文章ではありますが、読書感想文として久しぶりのカツオnoteとなりました。過去の経験を文章にするキッカケをいただけたことは、大変幸運だったと思います。
末筆ながら、著者の橋本トヨキさんに感謝申し上げます。

今回もお読みいただき、ありがとうございました。
2024年も、どうぞよろしくお願いします。

#カツオnote vol.32

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