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「のび太」に学ぶ、人生七転び八起き

ドラえもんへの凄まじい情熱を注ぐ横山先生

「きみはこれから何度もつまづく。
でもそのたびに立ち直る強さももってるんだよ。」

「のび太」という生きかた(著:横山泰行 富山大学名誉教授)という本の本文の締めくくりの言葉です。これは、年を取って老年になった「のび太」が、小学生の「のび太」に伝えた一言です。

小学生の夏休みの読書感想文にぴったりということで、3年ほど前に話題になり、子どもと一緒に読みました。

ドラえもんのエピソードから人生訓を引き出して解説している、とても丁寧な仕事の本です。子どもにもわかりやすく書いてありますが、私は著者の横山先生がドラえもん世代の大人に向けてエールを送った一冊ではないかという印象を受けました。

この本の「はじめに」を読むと、横山先生という方がどれだけのエネルギーを「ドラえもん」研究に注いできたかがよくわかります。

横山先生は、「ドラえもん学」という、マンガ「ドラえもん」を徹底的に調べるという学問を提唱された方です。ドラえもんデータベースを作成して、ドラえもんに登場するひみつ道具や、登場キャラの行動やセリフを分析されています。15年以上、年平均2000時間もの労力を費やし、てんとう虫コミックスの全コマ数(64811コマ)、全セリフ(46959件)を調べ尽くし、全作品を100回以上読まれたということですから、気の遠くなるような仕事です。(そもそも、コマ数を数えるという作業だけで信じられない量です)

その横山先生の研究成果である「ドラえもん学コロキアム」は、以前は富山大学にWEBサイトが公開されていましたが、2021年現在は終了しているようです。10年ほど前に更新された、過去のコンテンツが下記リンクにアーカイブされています。

老年の「のび太」の深い言葉

この本で、もしかしたら横山先生が一番伝えたかったのではないかと思える、冒頭の言葉。ドラえもん全作品の中で唯一、年老いたのび太が登場する「45年後……」という作品で登場した深い言葉です。

この深みを味わっていただくために、横山先生のこの作品の要約を下記に引用します。

 のび太は学校の裏山で、45年後ののび太(以下、「老年ののび太」)と出会います。懐かしい小学生時代をまた体験したいと思った老年ののび太が、ドラえもんに頼んでやってきたのです。
 そして、彼の望みにより、「入れかえロープ」で現在ののび太と、体を入れ替えるのでした。
 現在ののび太の姿を借りた老年ののび太はまず、野球に飛び入り参加します。ですが、三振やエラーばかり。ジャイアンとスネ夫には、「ノロマ!」「グズ!」「おまえのせいで負けたんだぞ!」と言われてしまいます。しかし、老年ののび太はまったくひるみません。
「アハハ、昔のとおりだ」と笑い、「いつまでもその元気をうしなわず、がんばってくれたまえ」と、ジャイアンとスネ夫と握手して、笑顔で別れます。
 のび太の自宅では、「のび太!!宿題もしないで!!」と怒るママに対し「若いなあ……」と涙ぐみ、「もっとしかって!!」と喜びます。
 現在を十分に満喫した老年ののび太は、現在ののび太へのお礼に宿題の手伝いを申し出ますが、現在ののび太は「自分でやるから」と拒否。「さすがはぼくだ!」と老年ののび太は喜びます。そして、こんな言葉を残して去っていきました。
「一つだけ教えておこう。きみはこれから何度もつまずく。でもそのたびに立ち直る強さももってるんだよ」
 現在ののび太は、「少しのぞみがわいてきた」と、宿題に向かうのでした。

『どらえもんプラス(5)(てんとう虫コミックス)』小学館 より

横山先生も、つらいことがあったとき、この作品をよく手に取るそうです。
「ダメな自分でも、失敗ばかりでもいいんだよ」とエールをおくってくれる気がするそうです。

失敗すらも懐かしむ、老年ののび太。時間が経つと、その時つらかったことも、よき思い出として受け止められるようになっている懐の深さ。
ドラえもんが「SF」のジャンルであり、人間が時系列を変えることができたらどうなるのか、というロマンがあることを思い出させてくれる一コマです。

私も、ツイッターやnoteを始めた目的が、過去の悩んでいる自分に対して、今の自分がエールをおくることなので、「何度つまずいても立ち直る強さを君は持っている」という、この「老年ののび太」の言葉は胸に響きました。

勉強も運動も苦手で、ぐうたらしてばかり、というキャラの「のび太」。
でも、実は想像以上に人生を上手に歩んでいるのではないか、というのが、この「のび太」という生きかたという本には丁寧に解説されています。

「老年ののび太」の言葉に見られる”「失敗すること」までも、楽しむ”というのは、この本のトリを飾る37番目の「のび太メソッド」です。この前に、実に36もの、のび太の生き方に学ぶ「のび太メソッド」が、ドラえもん学の研究成果としてこの本では紹介されています。

「45年後……」と45歳のカツオ

ドラえもんは、45歳になった私カツオが生まれる前から連載が開始された名作で、今でもテレビアニメで続いている、まさに不朽の名作です。

そういえば、昨年も10月にドラえもんにまつわるnoteを書きました。

45歳になった今年、ドラえもんの「45年後……」という作品についてのnoteを書かせていただくことになったことに、何か運命的なものを感じます。

小学生の頃の私は、運動が本当に苦手で、のろまだったので、のび太には共感する部分が多々ありました。45歳の私は、小学生時代のカツオ少年に、「体育が苦手だからつらい?大丈夫。苦手でも乗り越えて生きていけるよ」と言ってあげたい。それだけ、苦手なものを補って余りある、人生の楽しさや得意分野など、様々な経験を積ませていただきました。

「きみはこれから何度もつまづく。でもそのたびに立ち直る強さももってるんだよ。」という言葉を私も励みにし、子どもたちや周りの若い人に「のび太の言葉」として伝えていきたいと思います。

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

“#のび太という生きかた”


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