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結婚式。【#63】

きのう物語は、昨日撮った写真一枚と、その日記です。

京都市内の朝、狭い住宅街を歩く。「はいおはようさん〜」旗当番のお父さんの背中は、ずいぶんでっかく見えた。子どもたちを守っているからだと感じた。小学校の校門を横切ると、挨拶運動をしている生徒が10人ほど並んで、「おはようございます!」元気な笑顔をプレゼントしている。わたしは上級生っぽい女の子と目が合って、「おはようございます」お互いに目配せするように、挨拶した。彼女からは、地域の人にも挨拶をするよ、というメッセージを送ってくれたように感じたし、わたしも同じ意味合いだった。一瞬通じ合えたような気がするような、しないような、わからなくっても、それでよかった。生徒の横に立っている若いイケメンの先生が、パーカー姿で少し眠そうなのを隠しながら、しっかり挨拶しているのも、抜群に良かった。すぐ隣では緑色のジョウロを持った女の子が、挨拶運動に見向きもせず、夢中で花壇に水やりをしていた。総じて賑やかな朝。わたしはこの地域が大好きになった。

その地域の方々にとって、憩いの場と親しまれているお寺で、結婚式があった。式前の境内では、じいちゃんばあちゃんたちが集まって、腰の入ったラジオ体操。指揮役のじいちゃんが一人いて、円になっているのも最高だ。わたしはほんとうに、この地域が好きだな。いい場所で、結婚式をされるな、と何度も思った。

今日の役割は、式の撮影。新婦のお父様から、撮影のご依頼をいただいた。面識はなく、ほぼ日さんでわたしのことを知ったと、教えてくださった。そしてご指名をしてくださったのだから、ほんとうに嬉しく、とてもありがたかった。実際にお会いすると、お父様は僧侶のご格好だった。地元でお寺と地域を守っていらっしゃる、きっとそうだ。背筋が伸びる思いがした。

そして新郎新婦のお二方もほんとうにやさしく、温かく、幸せをたくさんにおすそ分けしていただいた。いまは式を開くことも、延期することも、何もかもむずかしい時代だ。だから、大変な決断がたくさんあったと、勝手に推察している。その分ご一緒させていただいて、いままで以上に「おめでとう」の言葉が重く感じられた。この言葉は、あたりまえじゃないのだと。言葉を受け止めるお二人は、わたしが思うずっと何倍もそのことを理解されていて、「ありがとうございます」とお返しする言葉が、よりいっそうに美しかった。包み込むような春風を感じた。

いよいよはじまった式は、あっという間に終わった。覚えていないのだ。「ここの描写がメインでしょう?」と思うかもしれないが、撮ることに精一杯で、全然覚えていない。雅楽の演奏隊(お坊さんたち)が脇に座っていて、一見気だるそうにしていながら(ほんとうはしていない)、いざ合図があったタイミングで「ぷぉぉぉぉぉ〜〜〜」とめちゃくちゃに良い音を出していたことは、覚えている。素晴らしい場所で、素晴らしい人たちによる、厳粛で、見事な結婚式だった。

式が終わって、集合写真を撮りましょう。とみなさんで本堂を出たとき、雲ひとつない青空が広がっていた。昨日は土砂降り、今朝は肌寒い曇りだったが、やはりこの場所には、春がやって来た。令和3年3月3日の空を、忘れないだろう。

ご家族ご親族のみなさま、そしてご結婚されたお二方。すてきなご縁をほんとうに、ありがとうございました。心より、みなさまの末永い健康とご多幸をお祈り申し上げます。

帰り際、本堂の縁側に男子大学生が3人ほど腰掛けて、何食わぬ表情でお昼ご飯を食べていた。「アニメかよ」と思えるほどの日常。なんていいお昼なのだろう。次はここへ、参拝しに来ようと思う。

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ポカリスエットを買います。銭湯に入ります。元気になって、写真を撮ります。たくさん汗をかいて、ほっと笑顔になれる経験をみなさんと共有したいと思います。