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中野を歩こう。【#59】

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きのう物語は、昨日撮った写真一枚と、その日記です。

中野といえば「サブカルチャーの聖地」というイメージをみなさん持っているかもしれない。しかし、実はわたしも同じイメージで生きているので、逆接の文脈上、何か解説しそうな雰囲気を匂わせておきながら、まるで全然書けない。

そんな時こそ、あたらしい景色を探そう。友人が中野に住んでいて、少し日が延びた2月末の夕刻に、二人で散歩した。中野駅北口は有名な「中野サンモール商店街」がズラリと並び、そのまま突き抜けると「中野ブロードウェイ」が堂々と鎮座している。この黄金ゾーンこそ人々に愛され、守られつづてきた。中野以外の地域に住んでいる人たちは、おおよそこのエリアを訪れるだろうし、市町村一周の旅を振り返っても、この雰囲気を味わえる場所はなかなか思い当たらない。

だからこそ、今回はまず遠回りして、普通の散歩をする。住宅街や、路地裏、公園まで、中野の普通を歩くことで、あたらしく見えてくるものがあるかもしれないと。

細いT字路で、大きな普通車が左折しようとしているが、まもなく左手前の電柱にぶつかりそうだ。窓を開け、覗き込み、ゆっくり、ゆっくり曲がる。はたから見ても厳しい戦いだったので、わたしはガソリンスタンド店員のようにオーライと合図した。なんとかくぐり抜けた。運転手さんと「よっす!」と挨拶した。助手席の柴犬はニコニコと舌を出していた。電柱には、幾多の擦り痕が刻まれていた。わたしはここを「中野地獄のT字路」と名付けた。

広々とした公園では、子どもたちが細い道のような、段差のあるコンクリートの上で二手に分かれて向かい合い、じゃんけんで勝った方が進む、なつかしい遊びをしている。すぐそばのベンチはいくつもあったが、友人曰く、昼間であればおっちゃんたちがビール片手に占領するらしい。また路地裏の酒屋の前には、丸や三角マークが白い塗料で描かれてあり、「ここでいったい何千人もの子どもたちが、けんけんぱをしたのだろう」と、友人と片足を上げながら進んだ。

「この陸橋が好きなんよね〜」

ぼんやりと景色を眺める。下には中央線と総武線。西側は夕日、東側はスカイツリーが見える。やはり、あちこちと散歩をして、広がっているのは普通の中野だった。ほどよい暮らしの音が、他の街と同じように流れている。文化が発展する条件は、まずそこに、いい暮らしがあることだ。人と人が交わる居心地の良さがなければ、熱量あるモノは生まれない。中野には、それがある。ような気がした。街全体が、中野という名前を支えているように感じられた。根拠も論文もあるわけではないが、その何となく感じる「住み心地」こそが、街の雰囲気であり、歴史であり、文化なのだから。

何よりも、この陸橋からは、いい夕日が沈む。

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ポカリスエットを買います。銭湯に入ります。元気になって、写真を撮ります。たくさん汗をかいて、ほっと笑顔になれる経験をみなさんと共有したいと思います。