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奏でる音楽。【#81】

きのう物語は、昨日撮った写真一枚と、その日記です。

関西の大学で結成したガールズバンドを、社会人になってからも続けている、高校の同級生がいる。彼女は高校の時にコーラス部だったので、大学でバンドを組んだと知って驚いた。落ち着きがあって、おとなしいイメージだった。高2と高3は同じクラス、2人で仲が良かったというより、クラス全体で仲が良かったので、わたしはいつも変なことを言おうとして、ウケたりウケなかったり、まぁ、冷静な彼女には「ふふっ」と鼻で笑われていたような気がする。スベってるじゃないか。

「バンドメンバーの写真撮っておくれ!」と連絡を貰ったので、京都で他のメンバーの方たちとも合流して、写真を撮らせてもらった。いくつか場所を変えて、何パターンか撮らせてもらった。とても良い写真が撮れた。今日の一枚は、そのオフショットだ。

同じ日の夜に、彼女たちのライブが四条であったので、チケットを買って観に行った。写真を撮った時と、ステージに立つ彼女たちの雰囲気は全然違う。全員とても落ち着いていた。笑顔だった。わたしも曲に合わせて自然に揺れていた。全員上手い、しかもオリジナル曲なのか、すごいな。同級生はボーカルで、歌はほんとうに上手だし、何より、いい眼だなぁと感じていた。印象的な眼だったのだ。以前、国立能楽堂で野村四郎さんのお仕舞いを観て「眼がすごかった」と感じたのと似た感覚だった。近くも遠くも、どこも見ていないような眼つき。はじめてライブを観て、ファンになった。ライブハウスは密らしい満員御礼ではなかったけれど、大きな場所で演奏している姿が想像できた。紙一重のような気がした。

他のバンドさんも登場していて、全部良かった。パフォーマンスも歌もとにかく上手だし、かっこ良かった。音楽ができる喜びを、ステージ越しに強く感じた。だけど、いいなぁ、と思いながら、ライブが終わった後のグッズ販売コーナーでは、つい先のステージで輝いていた人が、グッズを前にポツンと座っていた。お客さんがズラリと並んでいるわけではない。ステージ上とはまるで違う雰囲気だった。音声が突然ブチっと切れた、映画のシーンのようであった。そのギャップは、わたしも苦しめた。あんなにいい音楽だったのに。全てが紙一重のような気がした。

「売れるってなんだろうな…」

たとえば同じ年代で、写真を撮る人たちの中には、SNSのフォロワーは多くないけれど、めちゃくちゃいい写真を撮るな、すごいな、という人たちがいる。何かの拍子で、とても有名になるんだろうな、と感じていたりする。反対に、わたしなんかより何倍もフォロワーがいて、より影響力のある人たちもたくさんいる。

売れる人は、えらいのかな。売れることが、すごいことなのかな。売れようとしなきゃ、いけないのかな。売れるって、なんだろうな。

「ほんとうは、もっとたくさんの人に聴いてもらえたらいいんだけどね〜」

という彼女の言葉がまだ耳に残っている。いいものを、いいものだと知ってもらうって、難しいよね。紙一重だよ、あまりに。わたしもその渦中だもの。でも、わたしは彼女たちのバンドみたいな、地に足のついた姿が好きだ。同じ眼で、写真を撮りたいと思った。ブレないことだけは、お互い続けられるもんね。古賀史建さんのnote「見つける人、見つけてもらう人」を帰りの電車でもう一度読んだ。

ポカリスエットを買います。銭湯に入ります。元気になって、写真を撮ります。たくさん汗をかいて、ほっと笑顔になれる経験をみなさんと共有したいと思います。