#900『木箱』

二つの大きな木箱がある

一つには
成功と書かれたラベルが
もう一つには
失敗と書かれたラベルが
張ってある

成功の方は
木箱の底が見えていた
失敗の方には
半分くらいモノが入っていた

そして
どちらの箱にも
分厚い埃が覆いかぶさっていた

この木箱をいっぱいにする
そう思って
買ったはずだった

そうなる
はずだった

初めのうちは
成功の木箱にも
モノを入れられたが
次第に
失敗の方しか
見なくなっていった

ついには
どちらの木箱も
使わなくなった

あれから数十年
このまま死ぬのは
嫌だと思い
向き合っている

それでも
二つの木箱を見るだけで
不安になってくる
自信が溶け出していく

だから
グチャグチャっと
ラベルを黒く塗りつぶして

成功の箱には
結果と
失敗の箱には
道のりと
そう書いた

二つの大きな木箱がある

一つには
結果と書かれたラベルが
もう一つには
道のりと描かれたラベルが
張ってある

どちらの木箱にも
溢れんばかりの
モノが入っている

長いようで
短かった
旅路の思い出が
たくさん詰まっている