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高単価なフリーランス案件を探すときの考え方、相場

フリーランスのWebエンジニアの仕事を探す上で、いつも考えていたことをつらつらと書いてみます。
特に「単価」についての考え方について書きます。

前回(鬼のようにバズった。読んでくれた方感謝です…!)


単価に「正解」はない

最初に触れておきたいのは、単価に正解はないということ。
時給1500円で凄腕エンジニアが雇われていようが、時給5万円で素人が雇われていようが、依頼主とエンジニアが満足しているのならそれで良い。

逆に「俺はXXができるから時給8000円であるべきだ!」とか「エンジニアに払う給料なんて年300万円でいいだろ」とか、そういう一方的な思い込みは「それってあなたの感想ですよね?」でしかなく、他人に強制するものではない。
「お互いが合意した単価が正解である」という考えをベースにお金の話を考えると上手くいくと思う。

関連して「こんな低単価で依頼してくるなんてふざけてる!!!」みたいな怒りをたまに見かけるが、これは単に相手と意見が合わなかっただし、お断りすれば良い。相手に悪気があるわけでもないし「他で良い人見つかるのを願ってます!」くらい言ってあげると良い。

単価に正解はないから、自分にとっての正解を探し当てる

あなたが凄腕のエンジニアだからって、年収2000万円になるわけではない。
それは悲しいことだが、逆にいうと自身が大したことのないエンジニアだと思っていても、どこかに自分を年収2000万円相当だと思ってくれる雇用主がいるかもしれないということでもある。
そしてもし本当にそうなら、そういう雇用主を探さないのは勿体無い。

特に真面目で優秀なエンジニアの人ほど、職探しに消極的で「自分はそんなに貰えるわけがない…」と考えがちだが、単価は自分ではなく相手が決めるものなので、最大限の報酬を払ってくれる顧客を探せると良い。
「年収が高い人」=「スキルがすごい人」と思いがちだが、年収の高さは儲かってる会社に所属しているかどうかに依存するのであって、その人のスキルは根本的には関係ないと考えたい。

フリーランスの案件探しにおいては「お金を持っていて、スキルがマッチして、人手が足りてなくて、自分を一番評価してくれるところ」だったら、恐らく一番高い報酬を払ってくれるだろう。
極端に言えば「お金はあるけど、最近エンジニアが大量離職してしまい困ってる、しかし一刻も早く開発したい企業」であれば、かなりの額を払っても採用したいと考えるはずだ(そんなところに行きたいかはともかく)。
スタートアップ的にいえば、バーニングニーズを持っている会社に自分を売り込むのが一番良い。

フリーランスは正社員に比べて短期で職場を変えやすいので「今この瞬間に、自分に一番高い報酬を出してくれる案件を探す」機会を比較的多く取れるのが良いところだ。案件探しはちゃんとやると良いと思う。
もちろん、これをハックしすぎて、大して成果も出してないのに短い期間で現場を転々とするようなフリーランスにならないようにしたい。顧客とWin-Winになるのが大前提だ。

※分かりやすさのため「高い報酬を貰うのが正義」という主張で書き進めていますが、当然これ以外の考えもありえます。お金以外も大事。でもお金も大事。

良い案件をどう探すか

「知人から探す」「エージェントを使う」という普通の方法以外を知らない。

強いて言うならば、自分はそんなに知り合いが多い方ではないが、なんだかんだで知り合いから仕事を引き受けることも多かった。
その知り合いは勉強会やイベントで知り合った人ではなく、前の職場の同僚だったのを踏まえれば、今の職場で結果を出して周りに良い印象を与えておくのが一番だと思う。仕事の縁は仕事が繋ぐ。

エージェントについても同様で、紹介してもらった仕事で高い評価をもらって、エージェントの顔を立てて仲良くなっておくと、良い案件を紹介してもらえそう。
エージェントを通すと15%〜30%とかの仲介フィーが企業側にかかるので、エージェントを通さずに案件を受けるのがベストだが、エージェントの強みは多くの企業の案件を紹介してくれることにある。その中から最適な案件を選べると考えれば、悪くはないと思う。

単価交渉をする

単価交渉、ほとんどの人が苦手な印象があるが、交渉の余地があるならちゃんとやった方が良い。
自分の場合は、先方に提示してもらった値段の1.5倍の値段を提案してOKをいただいたことがある(大感謝)。

こちらが単価を高くしたいのなんて当たり前のことなので、そこで交渉しただけで「ナメてんのか!!?」とか怒り出すような顧客だったら、こちらに対する気遣いのない顧客なので、近づかない方が良い。
そもそも、自分に対して本当に魅力を感じているのなら、高い報酬でも検討してくれるはずだ。
それで断られるようなら、魅力が足りないだけなので精進すればいい。

お金の話はセンシティブなので丁寧にやりとりしつつ、しかし誰にとっても重要な話なので、その重要な話をさせてもらえる顧客と契約すると良い。そして依頼に至ったら、その単価に見合う以上に価値を出して満足してもらうと良い。

ただし、これもやはり顧客に迷惑をかけないようにしたい。最終決定直前に、何の脈絡もなく「やっぱり単価2倍にしてもいいですか!?」とか言い出すのは、顧客側の意思決定コストを軽視しすぎている。

実際のところ、どう交渉すると良いかは悩ましいところではあるが、案件を探す際に「A社からはN円で提示されてるので、御社がそれ以上なら御社に決めるんですが…」と競争入札を図るのは、フリーランスの受注フローとしてはごく自然なことだし、理解してくれると思う。というか事前にその旨を伝えておけると良い。
また、最初から高額な金額を払うのには抵抗がある企業が多いので「初月だけ2/3の単価で受けるので、単価に見合わなかったら初月で契約切っていただいて結構です」と交渉したこともある。

単価の相場について

単価に正解はないけど、相場はある。
しかし、企業によって求めるスキルが違うし、スキルの見極め力も違うので、相場は不明瞭で複雑だ。

ここでは、自分の主観と偏見に基づいて、個人事業主・準委任契約・週3以上稼働・3ヶ月以上〜くらいでWebサービス開発の案件を受ける場合の時給の相場について書く。

※この手の話をすると「時給じゃなくて人月だろ」「単価安すぎる」とかの謎のコメントが必ず出ますが、それは多分SIerが会社で案件を受ける文脈なので、異なる文脈の話でコメントして知識が浅い人を混乱させないようお願いします

〜時給5000円

このクラスのエンジニアさんと働いた経験に乏しいので記載しない(ごめんなさい)

時給5000円〜

基本的なWebアプリケーションフレームワークやライブラリの使い方、テスト、チーム開発など、Webサービス開発に必要なあれこれを一通り知っているくらいのクラス。抽象的なビジネス要求を理解して、サービス設計ができる。このレベルの人をいれるとまずまずWebサービス開発が進んでいく。
Webエンジニアフリーランス市場でいうと平均よりやや上くらいの単価。ボリュームゾーンの上の方。

とはいえ、自分の目から見ると、細かい仕様理解・抽象的な要求を整理する力・エッジケースへの対処・複雑で難易度の高い実装・本質的な課題解決などはまだ苦手で、高い開発のクオリティを保つには積極的なレビューが必要なレベルの人。ソースコードも手続き的で副作用が多くやや見づらい。

コーディングテストでいえば「配列Aと配列Bが与えられた時に、Aに含まれないBの要素のみを出力せよ」くらいの問題を、20分以内で回答できる人。
もう少しだけ難しいアルゴリズムやデータ構造の問題、例えばスタックやキューを使った問題だと回答できないレベル。
知識問題でいえば、よくある「インターネットの仕組みについて」というお題なら、Webサーバー、IP、DNS、HTTPといった単語をざっくり説明できるレベル。TCPとかはよく知らないレベル。

※これはあくまで例なので、上記コーディングテストを楽勝で解けても他のWeb開発の力がなかったらこの時給にはならないだろうし、上記テストができなくとも、他の力が優れていたらもっと高い単価になることはある。

時給7500円〜

優秀なエンジニア。市場の上位10%くらい(個人の体感)。
DeNA、クックパッドなど有名なWeb系企業の出身者がこのクラス。こういう人がいると、良い開発文化が醸成されていく。
コーディングテストでいえば、配列の問題を10分以内に回答できる人。もう少し難しいアルゴリズム問題とかも少し時間をかけて解ける人。

時給1万円〜

非常に優秀なエンジニア。だいたいの案件をお任せできる。市場の上位1%くらい(繰り返しになりますが、個人の体感です)。
フルスタックにバックエンドもフロントエンドも卒なく書いてくれる人。もしくは特定言語のスペシャリストと呼ばれるような人。
要件が曖昧なまま案件を渡してもある程度自分で整理してくれるし、フロントエンドエンジニアだったら簡単なデザインは自分でやってくれるなど、周辺領域でも柔軟な対応ができるレベル。
有名なWeb系企業で活躍していた人、シリーズAくらいのスタートアップCTO経験者など。前述のコーディングテスト程度の問題だったら、全て卒なく綺麗なコードで回答してくれる人。

余談だが、自分から見てこのクラスのエンジニアが、自身の単価をよく分からず5000-7000円くらいで仕事を受けてる例をたまに見る。逆に、正直そんなレベルでもないのにこの時給で受けているフリーランスもいる。
こういった状況が、フリーランスの相場感を更にややこしくしている原因にも思う。
※相場感がややこしいという主張をしたいのであって、後者のフリーランスを批判したいわけではない。

時給1万5000円〜

市場におけるトップのエンジニア。
この辺になってくると、対象者がほぼおらず、相場も何もない。
時給1万円で書いたペルソナ像に加えて、有名企業のCTO・マネージャー経験者、GoogleなどBig Techの選考を普通にパスするくらいの基礎力(ないし経験者)、有名な情報系大学院卒業、競技プログラミングでいえばAtCoder水色以上、これら複数に該当する経験とビジネス知見を持ち、人格的に優れてる人のイメージ。

このクラスの人を採用すると、あらゆるタスクを高速で完璧にこなしてくれて、開発スピードがグンと上がる。難しいはずのタスクがいつの間にか終わっている。一人で十人分くらいの力がある。また、速度だけではなく本質的な課題解決を行ってくれる。
フルスタックに何の言語でも高いレベルで書ける人。スペシャリスト型であれば、その人に聞いて分からなければ解決を諦めるレベルの専門家。
コーディングテストにかかる時間はタイピングにかかる時間だけみたいなレベル。

単価は高いが、5000円のエンジニアの3人分以上の力は確実にある、というか10人分ありそうなので、もし見かけたら積極的に採用するべき。
…と、言いたいところだが、なかなか世の中そうもなっておらず、そんな判断をしてお金を払える企業はほぼない。時給1.5万円の人材を月160時間で採用すると月240万円、年2880万円となり、この額をポンと払える企業は世の中にほぼない。
プレイヤー業務での限界値がこの辺と言える。

余談だが、医者や弁護士でもプレイヤーとして働くとこの辺りが限界値になる気がしており、これ以上を目指すならどの業種だろうが人を動かす側に回らないとダメなんだなと思う。

時給2万円〜5万円

この辺はプレイヤー業務だと、よほど特殊な状況か、請負型でうまくやるしか絶対に無理な単価感。主に技術顧問業で得られる報酬帯になる。

自分は技術顧問業をやっていないのでエアプになるが、例えば「月10万円でSlackに常駐、質問対応、月1で3時間のミーティング(合計の稼働時間が5時間)」みたいな契約。
この辺は、レアな経験・知見が生きる部分なので、例えば「メガベンチャーでVPoEを長年やってました!」みたいな人が、組織作りのアドバイスを各社でやってこの額を稼げたりしてるイメージ。また著名なCTOが知名度を生かして名前を売ったり採用を手伝ったりしているイメージ。

(この辺の価格帯の仕事の例、ぜひ聞いてみたいので、該当するお方はお話しさせてください)

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