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ヘンリー・ソロー ウォールデン 森の生活

マサチューセッツ州ボストン郊外の僕の住む町のすぐ隣には、コンコルドというとても素敵な町がある。アメリカ独立戦争の重要な戦いの場所になったことでも有名で、観光地にもなっているかわいらしい町だ。オルコットの『若草物語』(Little Women)も、コンコルドを舞台に書かれている。

2年以上住んでいたのに、ずっと行きたいと思っていたのに、これまで行けていなかった場所があった。自宅から車で10分足らずで行けるのに。。。
コンコルドで育った思想家、ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(Henry David Thoreau、1817年7月12日~1862年5月6日)が、森の中に丸太小屋を建て、自給自足の生活を2年間送ったウォールデン池だ。ボストンを離れることになり、その前に行かなければとようやく重い腰を上げた。

アメリカでは教科書にも出てくるような有名な思想家らしい。池のほとりにはヴィジターセンターもある。

Walden Pond Visitor Center

ウォールデン池の周りはトレイルになっており、1時間弱で池を一周できる。ボストンの3月はまだ肌寒いが、かなりの人がトレイルを歩いていた。

トレイルの途中には、ソローが暮らしていた跡地があり、ソローの書いた『ウォールデン 森の生活』の一節が記されている。

I went to the woods because I wished to live deliberately, to front only the essential facts of life, and see if I could not learn what it had to teach, and not, when I came to die, discover that I had not lived.

Henry David Thoreau, "Walden; or, Life in the Woods" First published in 1854

私が森に行ったのは、慎重に生きたい、そして人生の本質的な事実にだけ臨んで、人生が教えようと持っているものを学び取れないものかどうかを知り、死ぬ時になって自分が生きなかったことを発見するようなことがないようにしたい、と思ったからであった。

ヘンリー・D・ソロー. 森の生活(ウォールデン)訳:神原栄一

少々分かりにくい文章だが、現代の僕たちに痛烈に突き刺さるメッセージだ。

小屋の跡地が石碑で示されている。

小屋の跡地
小屋の跡地にある石碑


ヴィジターセンターのそばにはソローが住んだ小屋が復元されている。

復元された小屋

室内も復元されている。ベッド、机、いす、暖炉があるだけのとても簡素な室内。こんな簡素な部屋で、ソローは孤独に自分自身と向き合い、自分にとって大切なもの、自分の人生を見つけていったのだろう。

とても簡素な小屋の中

偉そうに、知ったかぶりして紹介しているが、ヘンリー・ソローのことを知ったのは、去年偶然にアバタローさんのYouTube動画で見たからだ。アバタローさんのYouTube動画は、とても渋い声で古典名著をとても分かりやすく解説している。知った後、さっそく実際の本書も読んでみたが、古典だけに文章はなかなか難解だった。この難解な古典著書をアバタローさんは超わかりやすく解説してくれている。

大部分の時間を独りで過ごすのは健全なことだと思う。最も善良な人とでも、一緒にいればやがて飽きがきて散漫になるものだ。私は独りでいるのが好きだ。孤独ほど親しみやすい友を持ったことはない。自分の部屋に引きこもっている時よりも、外に出て人中にいる時の方が、たいていの場合孤独なものである。考えたり働いたりしている人は、どこにいてもつねに孤独である。

私は、自分の実験で少なくとも次のようなことを学んだ。
人は自分が抱いている夢に向かって自信をもって進み、自分の思う生活をしようと努力すれば、ふだんは予想もしていないような成功に出会うものである。何かを後に残しつつ、目に見えない境界を越えて進んでゆけるだろう。新しく、普遍的でいっそう自由な法則が、その周囲や内部に確立しはじめるだろう。あるいは、今までの古い法則を拡大してさらに自由な意味で自分のためになるようにそれを解釈し、存在のより高度な秩序に認可されながら生きてゆくだろう。生活を単純化するに比例して宇宙の法則が複雑でないものに見えるようになり、孤独は孤独ではなく、貧困は貧困でなく、弱さも弱さではなくなるだろう。

ヘンリー・D・ソロー. 森の生活(ウォールデン)訳:神原栄一


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