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意志の力の高め方:小さなことをコツコツと
はじめに
私は意志主義(Willism)という考え方を提唱しています。自分の自由意志で物事を決めることを尊重する社会にしましょう、というシンプルな考え方です(参照記事1, 2)。
社会に害を与えたり法を犯したりしない限り、自由意志を発揮して個人が物事を決めることをできるだけ尊重します。すると、結果的に個人の幸せと社会の物的&心的な豊かさが両立すると考えています。
Willismの中核的な原理は、自動行動と自由意志の調和にあります。
人間も組織も、過去の経験で培った知識やノウハウを使って、自動的に判断し行動を決定することができます。例えば日常的に歯を磨くとか髪を洗うことなど特に意識せず行っているでしょう。マニュアルに書かれているような定型業務は最初の頃はマニュアルを見ながら意識的に実施しますが、慣れてくると殆ど意識することなく手早く処理することができます。
そして、過去の経験では結果が読めないような場合や、そもそも未経験のシチュエーションになった時に、自動行動をやめて意識的な思考をして判断を下し意思決定を行います。その判断と意思決定及びその結果は記憶に残り、次回の自動判断と自動行動の際に参照されることになります。マニュアルに記載されていなかったような例外的な伝票が来た時の事をイメージするとわかりやすいでしょう。
この自動行動は経験を重ねるほど間違いが少なく、かつ素早く効率的であるため、合理性と効率性を両立できます。しかし、これに頼りすぎると、本来は新しい事象のため真剣に思考しなければならないようなときでも、無理やり自動判断と自動行動をしてしまう事すらあります。また、過去の自分の発言や行動と、現在および未来の発現や行動を一貫させることが重要だと考える傾向も強く、それが自動行動に拍車を掛けます。
このような自動行動への偏重が、社会に様々な歪みと不満を生み出し、断絶や不幸を生み出していると私は考えています。
そこで、自動行動への偏重を改めて認識して、自由意志を促すことが重要だと考えています。もちろん自由意志に偏重することも良くありません。社会や自身の状況に合わせた自動行動と自由意志のバランスを意識する必要があります。このバランスを上手く取ることが、個人の幸福と社会の発展の両立に寄与するはずです。
自由意志の阻害要因
自動行動の偏重によって、自由意志の阻害が生じていると私は考えています。以下、自由意志の阻害要因となっている心理現象、考え方の癖、重要な点の見落としについて、以下に列挙します。
a) 異常に対する抵抗感
b) 過去を否定することへの抵抗感・未来を変えることへの恐怖
c) 人と異なることをすることへの抵抗感
d) 複雑性や不確実性の理解不足
e) 他人が変わることだけを望み期待する傾向
f) 問題解決能力の重要性の見落とし
g) 自分の器を理解することの重要性の見落とし
以下、それぞれの阻害要因について、説明します。
a) 異常に対する抵抗感
・人間には、自分が「異常だ」と判定されることを嫌がるという傾向があります。「正常」「ノーマル」の中にいたい、という欲求があるのです。
・これまでその欲求に従ってきたので、異常と判定されないようにするための判断や行動は、自動判断・自動行動化していることもあります。
b) 過去を否定することへの抵抗感・未来を変えることへの恐怖
・過去を否定したくないという気持ち、急に自分で現在や未来を変えてしまう事の恐怖があります。
・これが自動判断や自動行動を私が問題だと考える端的な例です。自動判断や自動行動に慣れていると、変化が重要だと理解したとしても、変えることができないのです。
c) 人と異なることをすることへの抵抗感
・人と異なることをすることに抵抗を感じる人が多いようです。悪いことをしているのでなければ問題ないはずですが、人と異なることをするという事自体に抵抗を感じるようです。
・人の行動を見て学習し、自動判断・自動行動をすることに慣れていると、異なることをやった方が良いと考えても、実行に移すことが難しくなります。
d) 複雑性や不確実性の理解不足
・複雑な問題や不確実な危機に対して、その複雑さや不確実性をそのままにして考えるという事が苦手な人が多いようです。
・これも自動判断・自動行動の点から解釈できます。もともと、自動判断や自動行動や、過去の経験や学習の積み重ねで、未来の確実性が高い状態を好みます。自動判断や自動行動に慣れすぎると、予測不能で確実性が低い状況自体と向き合うことができなくなります。
e) 他人が変わることだけを望み期待する傾向
・問題を他人の責任と考えて、不満を抱きながら他人が変わるのを待つというスタンスの人も多いように思います。本当に問題だと認識しているなら、自分自身の行動パターンや考え方を変えたり、仲間を集めて取り組むことにチャレンジする手があるはずです。
・これを自動判断・自動行動で解釈すると、ロボットのような姿が思い当たります。現在のロボットは、与えられた環境でしか動作できません。その環境に問題が生じたら、自分では解消できないので、ただ誰かが気が付いて問題を除去してくれるのを待つばかりです。
f) 問題解決能力の重要性の見落とし
・自由意志を発揮するというのは、見つかった問題を解決するための思考や判断、意思決定を行うということです。つまり問題解決能力を高めることが自由意志の発揮において重要になります。
・問題解決能力は、先ほどの「他人が変わることだけを望み期待する」のところで挙げたように、ロボットのように自動判断と自動行動をしていると身につけることは難しいでしょう。
g) 自分の器を理解することの重要性の見落とし
・自由意志を発揮するときに、自分の器を超えた目標を目指しても自分を傷つけるだけです。また、自分の器よりも小さな目標を目指しても、自分を過小評価し、自分自身を満足させ得ることを困難にします。器の大きさに常に目を向ける必要がありますし、また、器を少し広げることを考える事も必要です。
・自動判断や自動行動は、こうした器の大きさのことを考えずとも、ある程度誰にでもできてしまいますので、器の大きさを気にかけたり、それを大きくしてみようという事につながりません。
自由意志の阻害要因と向きあう
上記の様々な自由意志の阻害要因は、個人のこれまでの人生の中で、自動判断や自動行動の積み重ねで分厚く強化されています。例えこの要因とメカニズムを的確に理解できたとしても、積み重なった考え方の癖を急に変えることは困難です。
困難ではありますが、この分析のおかげで、戦略を考える土台ができました。自動判断や自動行動の積み重ねを、じっくり取り除いていくことが必要という事が分かりました。時間のかかる作業ですので、それなりの根気が必要です。また、長続きする方法でなければなりません。
この認識に基づいて、いくつかのアイデアを提示します。
自分の性格を少し変える経験を積む
ちょっとしたことでよいのです。自分の性格を自分で変えることができるという事を経験してみるというアイデアです。リスクを負ったり努力をする必要はないのです。ちょっとしたゲームのようなものです。これを日常生活の中でこつこつ重ねていきます。
この経験を通して、阻害要因 a) b) c)への対応をしていきます。人に迷惑を掛けない範囲で、自分の性格や行動パターンを少し変えて、ちょっとノーマルから外れたり人と違ったことをしてみるのです。
1) あえて好みを変えてみる
意図的に自分の好みを変えるという実践です。コーヒーではなく紅茶を好きになってみる、あえて今までとは違う音楽のジャンルを好きになってみる、そういうことを意図的に行います。
単に試してみて好みに合わなかったらやめる、という事ではないのです、自分は紅茶が好きで、その音楽が好きだ、と思い込んでみるのです。
2) 場所の選択
喫茶店、ロッカー、駐車場。日常生活で私たちは場所の選択をすることが多々あります。そんな時に、今までちょっと避けていた場所を選ぶようにしてみます。例えば人に遠慮して端の方を選んでいた人は、真ん中をわざと選ぶのです。
3) お店での振る舞い
例えば、店員さんとやり取りをする時に、少し明るく笑顔で接するように心がけてみます。既にそうしていた人は、お礼を丁寧に言ってみるとか、店員さんの迷惑にならない程度にあえておススメを聞いてみる。そういう形で人とのコミュニケーションの仕方を意図的に変えるという経験を重ねます。
4) なりたい自分になる練習
ちょっと上級者向けですが、例えば英語の勉強が好きな人のブログなどを読んで、自分も英語の勉強が好きな性格だと意図的に思い込むのです。そして、英語の勉強が好きだから、この隙間時間で単語帳を見てみようとか、オンライン英会話をやりたいとか、そういうロールプレイをしてみるのです。できるだけ本気で思い込む力が必要です。
世の中の複雑な問題について、自分なりの解決方法を考えて、実践方法にまで落とし込む
世の中にはたくさんの複雑な問題があります。これらの問題に対して、客観的に誰かがこうすればよいはず、という視点ではなく、自分に何ができるかという視点で考えます。この時に、自分にできることや影響を与えることができる範囲を意識しながらリアルに考える事が重要です。そして、なるべく多くのアプローチや対処方法を考えて、それぞれに対して自分自身がどう関与できるかを考えます。できれば、それを誰かと話してみると、より現実的な方法が分かるでしょう。
この訓練を通して、阻害要因d) e)へ対応していきます。自分事として社会問題を考えること、そして、複雑な問題を捉える能力を養うのです。日々、ネットニュースで様々な問題を目にすると思いますので、コツコツと経験を積み重ねることができるはずです。
また、阻害要因 f) g)への対応にもなります。自分事として考える事で問題解決能力の訓練になりますし、自分にできる実践方法にまでリアルに考えを巡らせることで、自分の器や向き不向きを知るきっかけにもなるでしょう。
上記は、その気になれば、今日からでもすぐ始められますし、これまでの日常生活や、学業や仕事に何も影響を与えることなく、そしてほとんど誰にも知られることなくコツコツと実践できます。結局、自分自身が本気になるかどうかが最も重要なポイントです。
さいごに
この記事では個人で実行できる阻害要因との向き合い方について、私の経験からアイデアを書きました。もっと様々な実践的な方法や取り組み方は考えられるかと思います。また、社会全体を意志主義の目指す姿に近づけるためには、個人での実践だけでなく、社会の中の阻害要因を分析してアプローチしていくことが重要です。もちろん、教育についても考えていく必要があります。
参照記事一覧
参照記事1
参照記事2
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